20世紀の産物GDPに高まる批判-代替指標の模索続く
- 批判は容易だが、それに代わる指標を見いだすことは難しいとS&P
- 公式GDPに対するヘッジとして独自指標使うインド証券会社も
国内総生産(GDP)は非常に20世紀的だ。
大恐慌時代に控えめに登場したGDPは、世界の各国政府や中央銀行にとって不可欠な指標となった。長期投資家が資産配分の目安として用いるほか、トレーダーはGDP統計のニュースに反応して株式や債券、通貨、商品を売買する。
だが問題がある。生産や所得、あるいは支出のアプローチで集計されるとしても、GDPは経済の変化のペースに対応し続けることがますます難しくなっている。
米共和党大統領候補ドナルド・トランプ氏のような非主流派政治家の台頭や、英国の欧州連合(EU)離脱につながった反動の背景には格差拡大が指摘されているが、所得分配効果を無視するGDPはそれを覆い隠している。
S&Pグローバルのチーフエコノミスト、ポール・シェアード氏(ニューヨーク在勤)は「GDP批判は容易だが、それに代わる指標を見いだすことは難しい」との見方を示す。
ムンバイの証券会社アンビット・キャピタルはインドの公式GDP統計に対するヘッジ手段として、自動車販売と電力消費に基づく独自の消費指数を開発した。GDPは大きな改定がしばしば行われ、伝統的な産業分野であっても既存の統計手法では安定的に計測することができないという認識を同社の取り組みは反映している。
統計専門家らが測定の対象を誤っているという懸念もある。国際所得国富学会(IARIW)がドイツのドレスデンで今週開く会合では、所得の均衡とテクノロジーの変化、生活水準の問題に関する研究論文の発表予定が目白押しだ。国際通貨基金(IMF)のチーフエコノミストを務めたピーターソン国際経済研究所のオリビエ・ブランシャール上級研究員も「多くの政策議論においてGDPやGDP伸び率だけに注目することは、判断を誤らせる」と分析している。
原題:With GDP Fading as Economy Gauge, Hunt for a New Yardstick Is On(抜粋)