ハカセ、今日はどうしたんですか?
私も暇じゃないんですけどね…。
「遂に完成したのだ!」
何がです?
急に呼び出して。
「究極イメトレ訓練マシン!その名も仮想訓練シミュレーターグレートエクスプレス!略してカクシGE2号だ!」
2号?まぁいいや。なんですかコレ?
どこからの予算なんですか?
勝手にこんなん作って。
怒られますよ!
「固いこと言うなよ!企画課の予算につけてくれればいいから!」
嫌ですよ!
作ってから稟議通すの止めてくれます?
幹部会議で議題にでてるんですよ!
「まぁまぁ。使ってみればすぐに気に入るさ!とにかくここに寝ころべ!」
ええ…。
何このカプセルみたいなの。
頭にコレをつけるんですか?
私はハカセの言うがままに装置に入る。
「よし!このマシンは脳内で仮想の正義のヒーローと戦えるイメトレマシンだ!今から誰もが憧れるヒーローと戦ってもらう!一流はイメトレを欠かさない!これは三流のために強制的にイメトレさせるマシンだ!」
正義のヒーロー…。
強制的…。
やめろ!止めろ!
「スイッチオン!」
・・・
目の前が突然、真っ暗になったと思ったら広い草原が広がっています…。
何コレ…。
所々にヘンな木が生えてますがどこかで見たような…。
これはアレだ。
ナ○ック星みたいだ…。
そしてアレは…。
ツンツンの髪、オレンジ色の道着…。
「ハッ!」
ダンッ!
彼との距離はかなりあったはずなのに一瞬で私の目の前まで迫ってきた。
私は彼の拳を慌てて避ける。
な、なんだ?い、いい、いきなり!
「ダァッ!」
彼は避けた私を追うように間合いを詰め、蹴りを放つ。
ブオォンッ!
ヒィッ!
私は情けない声を出しながら彼の蹴り上げた足を両腕で上から止める。
ガシッ!
あれ?
あんまり痛くない。
心なしか身体も軽い。
そうか。これは脳内の仮想トレーニングなのか。
夢のヒーローと戦える。
ステキマシンじゃないか!
「グハハハ!驚いたか!ヒーローは強さはコントロールしてあるが繰り出す技は同じだぞ!訓練にはもってこいだろう!」
そうと分かればこっちからも反撃だ!
えい!
私は彼にローキックを放ちます。
バシィッ!
彼はそれを足でカットし、手刀を数発繰り出します。
パパパパッ
お互いに拳を放つ、撃ち落とす
しばらく攻防が続いたが均衡を破ったのは彼だった。
彼は一瞬、フェイントを混ぜ、思わず私は反応してしまった。
ドガッ!
隙のできた私は彼に蹴り上げられ、上空へ飛ばされる。
ゴンッ!
私が吹っ飛ぶより早く、跳び上がり、待ちかまえていた彼の蹴りで私は地面目がけて落ちていく。
さらに落ちる私を彼が追いかけてくる。
バキィッ!
私は地面にぶつかる勢いで逆立ちするように両脚で彼を迎え撃つ。
彼はガードもできず、吹っ飛ぶ。
私は吹っ飛ぶ彼を追いかけます。
再び、接近戦。
彼の膝が私のお腹に突き刺さる
同時に彼の頬を私の右ストレートが貫きます。
私たちは同時にたたらを踏み、慌てて距離を取ります。
フフフッ。
私の身体能力もこのシミュレーターのおかげで上がっているようです。
まさに夢の対戦。
自然と笑顔がこぼれます。
彼もこの戦いを楽しんでるようです。
ニヤリと笑ったかと思えば、
あの構えを取ります。
フフフッ。ならば応じるしかないでしょう。
あの技に。
私も彼と同じ構えを取り、両掌に力を込めます。
…
…め~
…は~
…め~
……
波ぁぁぁああ!
彼がこちらに向けて突き出した両手から青白い光が放たれ、すごいスピードで向かってきます。
私が突き出した両手からも青白い光が……。
出ない…。
あれ?
目の前は青白い光で埋め尽くされた私はそこで気付いたのです。
あ、そういう仕様じゃないんだ…。
青白くなった目の前が突然、ブラックアウトし、ハカセの声が響きます。
「ゲームオーバーだ!ガハハハ!コイツか○めはめ波撃とうとしやがった!ガハハハ!」
は、恥ずかしい…。
目が覚めると
ハカセが私の恥ずかしいシーンをリプレイでモニターに流し、爆笑していました。
「グフフッ。ど、どうだ。ヒヒッ。素晴らしいマシンだろ!ヘヘヘッ。まぁ○めはめ波(笑)はできんがな!グフフッ。」
却下。
マシンは今から廃棄してください。
そう答えながら私はマシンをハンマーで壊します。
「ああっ!やめて!1号に続いて2号までもが!」
・・・
そのかめはめ波は違法です!──ワクワクドキドキ大冒険しながら法律武装
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ちなみに1号は再雇用パートのトミ子さん(68)がイメトレ中に身体が思わず動いて壊してしまったそうです。