2015年の夏、男の子を出産しました。子育ては大変ですが、毎日楽しくてたまりません。
息子が成長するにつれ、私も母として一歩ずつ成長していることを実感しています。
「毎日を楽しくする力」 母の背中を見て学んだこと
私の母はとてもエネルギッシュな人で、掃除、洗濯、料理など日常のなんてことない家事でも、いつもとても楽しそうにやっていました。その姿を見ていると、子どもの私は、つい「私にやらせて!」と言ってしまうんですよ。すると母は「これは、愛ちゃんが思っているほど面白くないわよ。最後までやってくれる?」と。「やる!」と言って始めるのですが、本当にあまり面白くない(笑)。
私の一番好きな言葉は「遊戯三昧(ゆげざんまい)」です。これは禅の言葉で、楽しいことをするのではなく、すること自体を楽しむという意味なのですが、どんなことでも楽しいことに変えてしまう母の姿を見てきたからこそ、この言葉が私の中にストンと入ってきたんだなあ、と思います。
もちろん毎日の生活には、嫌なこと、気乗りしないこともあります。でもそういうときこそ「もしかしたら素敵な出会いがあるかもしれない」と考えて、自分でワクワク感を煽っていく。そうすると、本当に実際に楽しいことがあったりするんですよ。
自分で自分を楽しくすることを、私は母の背中を見て学びました。
「育てる力・育てられる力」 自分が受けた愛情を子どもに渡すということ
2015年の7月に男の子を出産しました。子どもが欲しくてたまらなかったので、妊婦生活も出産も、とっても幸せ。それに、子どもは予想以上に可愛い(笑)。完全に親バカです。SNSで子どもの写真をアップする人の気持ちが、わかるようになりました。
でも子育ては、想像以上に大変です。特に2ヶ月くらいまでは私の体力も回復しないし、2~3時間置きの授乳でヘトヘト。睡眠不足で辛い上に、どんな理由で泣いているかわからなくてパニック!私の方が泣きたくなりました。いつまでこの生活が続くのだろうと思っていたある日、突然夜まとめて寝てくれるようになったんです。また泣き声の聞き分けもできるようになって、自分の生活リズムも徐々に立て直すことができ、無事に仕事復帰を果たしました。これからも、色々なことに悩んだり、打ちのめされたりを繰り返しながら、息子も私も成長していくんでしょうね。
私は子どものころ、ママが大好きな「ママっ子」でした。いつだって憧れの自慢のママで、いつだって「ママからたくさんの愛情をもらっている」と感じることができた。大人になってから振り返って親の愛をあらためて感じるという方は多いかと思いますが、小さな子どもがそのときに感じるのだから、愛情の量は相当なものだったんだと思います(笑)。以前、尾木ママから、「どんなことがあっても、愛情を注げば自立心が養われる」というお話を聞きました。私の息子は、私だけじゃなくて、父親、祖父母、たくさんの人の愛情を受けて育っている。本当に良い環境に育っているなあ、と感謝しています。
「支える力」 相対評価ではなく絶対評価で子どもを見るということ
子どもたちには、家族のサポートが何より必要です。サポートの方法は色々ありますが、まずは温かく見守って応援して欲しい。スポーツだけでなく、成長の過程で様々な試練や困難、ハードルに出会います。でもそれは、子ども自身が乗り越えなくちゃいけない。そんなときに家族からの「しっかり見てるよ」という視線を感じるだけで、子どもはすごく大きな勇気をもらえるのです。
日本の社会は、周りと同じにすることを重視する「相対評価」の場面が多いように感じます。でも私の母は、私をいつも「絶対評価」で見てくれた。それが、とても心地よかった。親は過度な期待をせずに、子どものありのままを受け止めて、同じ歩幅で、子どもの「やりたい!」と思う気持ちや頑張っている姿を応援してあげてください。
「一歩を踏み出す力」 何かをはじめるのに遅すぎることはない、ということ
私は4歳でテニスと出会いました。幼いころに大好きなものに出会えた私は、本当に幸運だったと思います。「好きなもの、熱中できるものが見つからない」「私は何もできない」とおっしゃる方もいますが……何かをはじめるのに、遅すぎることはありません!70歳からマラソンを始めた方、100歳を超えても陸上で記録を打ち立てる方もいます。出会いは、いつ、どこにあるかわからないんです。
何か一つ、全力で打ち込めるモノに出会う。それは、とても素敵なことです。まずは「やりたい」と思う気持ちを大切にする。そして「どんな楽しそうなことがあるのかな?」とアンテナを張って、色々なことに興味を持つ。そうしてまずは一歩、踏み出してください。そうすることで、世界は広がっていきます。「楽しそう」と感じたことを見逃さずに、チャレンジしていけば、自分の世界が変わっていくと思いますよ!
スポーツは、私たちに色々なことを教えてくれます。プロを目指すだけじゃなくて、日常の楽しみの一つとしてでもスポーツに向きあえば、また新たな発見があります。
どうぞみなさまも、自分らしくスポーツを楽しんでくださいね!
※このコラムは、保険市場コラム「一聴一積」内に、2016年1月27日に掲載されたものです。
⇒杉山 愛さんコラム「スポーツが育む 子どもの夢と力」第2回を読みたい方はコチラ
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PROFILE
杉山 愛 (すぎやま あい)
元プロテニスプレーヤー、スポーツキャスター
1975年神奈川県生まれ。4歳でラケットを握り、15歳で日本人初の世界ジュニアランキング1位に輝く。17歳でプロに転向し、17年間プロツアーを転戦。グランドスラムでは女子ダブルスで3度の優勝(2000年全米オープン、2003年全仏オープン、2003年ウィンブルドン)と、混合ダブルスでも優勝(1999年全米オープン)し、グランドスラムのシングルス連続出場62回の世界記録を樹立。オリンピックには4回連続(アトランタ、シドニー、アテネ、北京)出場。WTAツアー最高世界ランクで、シングルス8位、ダブルス1位。2009年10月、東レパンパシフィックオープンを最後に現役を引退。2011年11月に入籍。現在は、後生育成活動やコメンテーターとして活躍中。
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