「在籍屋」逮捕 賃貸借契約で貸主を信用させる
保証人を従業員と装う 特殊詐欺グループがアジトに使用
警視庁捜査2課は3日、虚偽の使用者名義で雑居ビルの部屋の賃貸借契約をしたとして、東京都中央区の会社員、佐伯竜一容疑者(48)ら8人を詐欺容疑で逮捕したと発表した。捜査2課によると、部屋は実際には特殊詐欺グループがアジトとして使っていた。同課は、佐伯容疑者が賃貸借契約上の保証人を自分の会社の従業員であるように装って貸主を信用させる「在籍屋」だったとみている。
警察当局によると、在籍屋は暴力団員らが身分を隠して賃貸借契約を結ぶ時にも利用されているという。捜査幹部は「反社会的勢力が絡む犯罪を助長している」と警戒している。
他に逮捕されたのは新宿区の不動産業者、西村宏之容疑者(37)ら。逮捕容疑は昨年3月、実際の使用者とは別の会社名義で新宿区内の雑居ビル一室の賃貸借契約を結んだとしている。佐伯容疑者は「契約者以外が使うとは知らなかった」と容疑を否認し、西村容疑者は認否を留保しているという。
部屋は馬券を的中させるなどとうそを言って金をだまし取る詐欺グループのアジトに使われ、警視庁が昨年11月に摘発。全国の約90人が計2000万円超の被害に遭った。
捜査2課によると、西村容疑者は部屋の契約会社と連帯保証人を手配。保証人について貸主からの問い合わせがあると、佐伯容疑者が「自分の会社の従業員だ」と保証人が会社に在籍しているように装って回答し、源泉徴収票なども作成していた。佐伯容疑者は物件ごとに報酬1万数千円を詐欺グループから受けたとみられ、余罪を追及する。
捜査関係者によると、佐伯容疑者の在籍屋としての営業歴は10年近く。在籍屋は大都市の繁華街に多く、主に暴力団など反社会的勢力や正規の契約を結びにくい風俗店の従業員らを顧客にしていた。新宿区内だけで約30業者がいるとされる。
在籍屋について、賃貸住宅の業界団体スタッフは「電話で『会社に在籍しています』と言われればそれ以上は確認できない。業界でも対策が必要になる」と話した。【宮崎隆、黒川晋史】