社内の不正指摘放置「全社的問題」…特別調査委
三菱自動車の燃費不正問題で、外部有識者で構成される特別調査委員会(委員長・渡辺恵一前東京高検検事長)が2日、不正の原因を分析した調査報告書を公表した。過去に社内で問題を指摘する声があったのに対応を行わなかったことで不正が見逃されたと指摘。「担当部門だけでなく経営陣をはじめとする会社全体の問題」と結論づけた。
同社は不正発覚後の4月25日に特別委を設置して調査を依頼。特別委は関係者154人に聞き取りをした。
報告書によると、コンプライアンス(法令順守)強化のために2011年に国内の全従業員を対象に実施したアンケートで、データの虚偽報告や改ざんなどの問題を指摘する回答があった。社内で事実確認をしたが、担当部署から「問題なし」との回答があったため、踏み込んだ検証をしなかったという。また、05年には新入社員から燃費性能の基礎データ「走行抵抗値」の測定方法が法令に違反しているとの指摘もあったが放置されたという。
同社では、13年6月に発売された14年型「eKワゴン」など軽自動車4車種で、燃費性能をよく見せるため有利なデータを使うなどの不正が行われた。報告書によると、14年6月に発売された15年型以降では、走行試験さえ行わず、14年型の数値を意図的に引き下げた架空のデータを使っていたという。報告書は「(担当者が)燃費目標を幹部から強引に押し付けられ、無理な開発に追い込まれた」結果、「不正をエスカレートさせた」と言及した。
報告書は、経営陣が不正に「直接関与した事実はない」とした。しかし、不正が生まれた背景として「経営陣が競合車に勝つための燃費達成を求めるだけだった」点を挙げ、「同社の開発の実力や実情を把握せず、現場に任せきりだった」と指弾。経営陣を含めた会社全体に問題があったと結論づけた。
同社の益子修会長兼社長は2日、記者会見を開き「改革の取り組みが十分でなかった。指摘を真摯(しんし)に受け止める」と述べた。【松倉佑輔】