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劇場アニメ「キンプリ」奇跡のヒット”お客さまへの誠実さ”が逆境のなか企画を進める原動力に 西 浩子さん
ファンの大きな熱量が仕事への活力をくれた イメージ画像

気合を入れて臨んだ予算取りの会議で使用した資料データ。動員数や収入の数字は練りに練って書き込んだ

2016年1月の公開から半年で興行収入7億円以上を記録した劇場アニメ作品『KING OF PRISM by PrettyRhythm』(通称キンプリ)。大々的な広告なしに、小規模館数での上映から全国公開に拡大し、6月に発売されたDVDとブルーレイはオリコンのアニメ部門で1位も獲得した。

イケメンたちの「プリズムスタァ」への成長を描いた物語。「作品には自信がありましたが、まさかこんなにヒットするとは」とプロデューサーの西さん。「実は、キンプリ制作の道は険しく、一歩進むごとに後ろの地面が崩れていく感じで、手探りで前に進み、常に崖っぷちに立っているような毎日だったんです」

西さんは12年に異業種から転職。幼少期に少女戦士アニメにあこがれ、数年前の転職活動中には大人向けアニメにはまった。アニメ関連の仕事への思いはそのころ芽生えたという。

「この仕事は転職サイトで見つけ、細かい内容は分からなかったのですが、大きな会社だったので受けてみました。面接では大人向けアニメへの愛を語ったのに、入社後はなぜか女児向けテレビアニメ『プリティーリズム・ディアマイフューチャー』のアシスタントプロデューサーに。でもすぐ、その面白さにはまりました」

そして、女性キャラクターが主役の同シリーズでサブキャラだった男子グループに人気が出たこともあり、彼らが主演の作品を作りたいと考えた。それが具体化したのは、15年に『プリパラ』の劇場アニメを作った時。物語の一部を4バージョン用意して日替わりで公開した際、男子をメインにした回が大受けしたのだ。

「劇場裏から見たら観客が本当に楽しそうに笑っていて、本編を作ったらもっと楽しんでもらえる!」と制作を決意した。しかし、一般的なアニメファンには作品の知名度がなく、スポンサーもタイアップもなしのまさに三重苦。それでも西さんを駆り立てたのは、サブキャラながらその誕生日やイベントに花束が届くなど、ファンの熱量の大きさを感じていたからだ。

「私が実現しないと、ファンは彼らの物語の続きを見ることができない。苦戦になるだろうと不安を抱えつつも使命感に駆られました」

企画書は不慣れで、提出してもなかなか通らない。当初狙ったテレビアニメでの制作は却下。でも、作品力とファンの熱量を理解していた上層部から「リスクの少ない劇場作品から始めてみよう」と提案され、第一関門は突破する。

作品とファン、制作陣への愛が仕事の糧 イメージ画像

1人10回来てもらえるよう、5枚つづりの前売り券を数種類制作。ファンが盛り上がる大胆なヌード画も入れた

キンプリ制作の実現に向けて西さんが算出した動員数は、何とコアファン約1,700人が1人10回は観賞するというものだった。

「最初の企画書では20回と書いたので、これでも控えめです。キンプリの制作を決意させるきっかけとなったアニメ『プリパラ』の劇場版は、33回見たという人もいたほど。同作を手掛ける菱田正和監督の作品は、密度が濃くて何度も見返し、検証したくなるという魅力があるんですね。予算取りの会議では、私も必死になって柄にもなく熱弁を振るいました」

予算はなかなか下りなかったが、15年10月、情報を解禁するリミットぎりぎりに半ば強引に許可を取り、16年1月に小規模の上映にこぎ着けた。しかし動員数は目標に遠く及ばず、関係者はまるでお通夜状態となる。

「口コミで伸びる作品だと思っていたので、1週目は『大丈夫』と落ち着いて舞台あいさつに駆け回っていましたが、2週目の動員がすごく良くなくて、上映館数が続々と減っていきました」。もはやこれまでかと諦めかけるも、3週目にコアなファンが責任感からか友人を誘ったり、SNSで宣伝してくれたりした効果が出始め、打ち切りは何とか回避される。

「特に『応援上映会』が盛り上がりました。この上映スタイルを初体験した人たちが驚いて、SNSなどで評判に。ライブシーンでライトを振ったり、登場人物のセリフに一斉に突っ込んだり。菱田監督は劇中で観客が反応できるちょっとした間を仕掛けていて、それが、ライブ感覚でみんなで盛り上がりたいという観客の心理にはまって、リピーターが増えたようです」

また、宣伝に掛ける予算はほとんどなく、西さんと監督は異例の全国30カ所近くの舞台あいさつ回りをこなすなどして、動員に拍車を掛けた。公開劇場はじわじわと拡大。当初、大赤字と思われた興行収入は黒字となり、この6月末に7億円に達して、まさに奇跡を生んだ。

「この成功はファンが作品を育ててくれたお陰。本当に感謝しています」と語る西さん。「私には、アニメ制作にかかわってから心に刻んできたことがあります。それは作品を愛することと、クリエーターを尊敬すること、お客さまに誠実であること、そしてスタッフに感謝すること。この四つは常に心に置き、仕事で気持ちが乱れた時など思い返すようにしているんです」

私の情熱を支えてくれるモノ

サイン入りの台本

私が担当したテレビアニメ『プリティーリズム・レインボーライブ』の最終話の台本に、菱田正和監督とキャラクターデザインの松浦麻衣さんがサインをしてくれたものです。同作の制作時、私はアシスタントでしたが、初めて担当した思い入れの深い作品で、いろいろな方との思い出がたくさんあり、それだけでなく、最終話では放送終了時に喪失感でワンワンと泣いてしまったほど。煮詰まった時は、「これから頑張ろう」と決意したこの台本を見て、その時の意気込みを思い出し気持ちを引き締めています。

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