【コラム】驚がくの英EU離脱選択、得られる7つの教訓-エラリアン
欧州連合(EU)離脱という英国民の驚がくの選択を受けて、世界の金融市場は震撼(しんかん)した。高まる不透明感は今後数週間に、政治的混乱と金融不安定、経済への打撃という前例のない組み合わせをもたらすだろう。以下に挙げるこのイベントからの教訓は英国に限ったものではない。
社会・政治的な分断が広がっている
EU離脱の選択は政界と財界のエリートや「専門家の意見」に対する明確な拒否と見なされるべきだ。そして、低成長が長期にわたるとともに、一部の集団が他グループに比べて、その成長からより多くの恩恵を享受している場合に生ずる分断を浮き彫りにしている。
国を二分する激しい対立は今や政治のニューノーマル
EU残留・離脱をめぐる激しいキャンペーンは、さまざまな問題をめぐる英国民の意見の相違を煽るとともに、それによって一層先鋭化してきた。それが結局は、EU離脱の是非を問う国民投票の決定を、経済的な利点か移民問題をめぐる主権の回復かという二者択一に単純化してしまった。
既成政党に対して、歴史的な常識はもはや通用しない
米共和党が自由貿易に距離を置いたように、英保守党内部では、世界最大の自由貿易圏から受ける恩恵について、英国の政党の中で最も意見が分かれていた。
反エスタブリッシュメントの弱小政党は政権を取るチャンスがゼロでも政治を動かせる
キャメロン英首相は、前回の総選挙で保守党の支持層が英国独立党に流れることを恐れて国民投票の実施を約束してしまった。この危険な賭けが保守党を分裂させた。
少数派の政治勢力は国境を超えて互いを強化し得る
英国のEU離脱派が米国でのドナルド・トランプ氏の台頭から力を得たのと同様に、英国の離脱選択は欧州の多くの国で既に支持を集めつつある反エスタブリッシュメント運動を勢い付かせる公算が大きい。英国ではスコットランドと北アイルランドの不満につながるだろう。
金融市場とそれを動かすと見なされている「数の叡智」は、普通の人より正しく政治イベントの結果を予想できるわけではない。
23日の投票にかけてトレーダーらは残留派が勝利すると考えて安心していた。その結果としてポンドと株式が何日にもわたって上昇していたが、上げはすごい勢いで失われた。
あり得ないと思われていたのに現実になった事象に「Brexit(英国のEU離脱)」が加わった
先進経済が長期にわたる低成長と格差の拡大というニューノーマルに長く直面していると、マイナスの名目金利やトランプ氏が米大統領候補になるなど奇妙な現象が起こる。英国のEU離脱選択が他の国の政治家の目を覚まさせなければ、こうした奇妙な現象のリストは今後数カ月内にもどんどん長くなっていくことだろう。
(モハメド・エラリアン氏はブルームバーグ・ビューのコラムニストです。このコラムの内容は必ずしもブルームバーグ・エル・ピー編集部の意見を反映するものではありません)
原題:Seven Lessons From the U.K.’s Departure: Mohamed A. El-Erian(抜粋)