株式会社ウフル(以下、ウフル)とシンガポールのNear Pte. Ltd.(以下、ニアー)が、ジョイントベンチャーNear Uhuru株式会社(Near Uhuru K.K. 以下、ニアーウフル)を4月26日に設立したことをを受けて、ニアー創業者兼CEOアニール・マシューズ氏(Anil Mathews)とCRO(Chief Revenue Officer)ショビット・シュクラ氏(Shobhit Shukla)が来日し、5月25日に事業戦略を発表した。
まず、ウフルの園田崇社長は昨年ニアーのマシューズ氏と会い、IoTとマーケティングについて語り合い、データが重要となるビジョンと世の中に役に立つという社会的使命で意見が一致したこと。また、ウフルにとってはアライアンスが重要であり、さらにアライアンス先のリーダーが重要であると語った。
一方マシューズ氏からは、ニアーにはスマートフォン等のユーザーからの大量のデータ収集能力があり、これらのユーザーがどの場所・店等にいるかがわかる。このデータは広告主、リサーチ会社にとって最も有効であり、ユーザ=消費者行動を理解したマーケティングが可能になる。しかしながら、素晴らしいテクノロジーであっても、国・地域の実情に合っていなければならず、今回ウフルと協業することで、日本でIoTマーケティングイノベーションを起こすことができる、とのことであった。
ニアーCEO アニール・マシューズ氏
続いてニアーウフル代表の猪谷久氏からニアーの事業説明があった。ニアーのテクノロジーであるAllsparkによるユーザーのモバイルアプリからの位置情報により、登録されている駅・学校等に併せてユーザーの特性を表すことができる標準POI(Point Of Interface)、およびカスタムPOIを作成することで、ユーザーの場所・状況・リアル行動を意識したセグメントの構築が可能であるとした。
一例として、Allsparkを使ったフィリピンでのアディダス社のランニングシューズUltra Boostのキャンペーン結果を示した。このキャンペーンでは通常の3倍のCTR(Click Through Rate)を得たとのことである。また、Allspark日本版を使い日本の標準POIであるJRの駅と、カスタム化した東急東横線のPOIを表示するというデモを行なった。
POIである東京のJR駅の一部を表示
シュクラ氏からは日本市場への本格参入理由の説明と、2014年下期に日本法人を設立してからのニアーの実績の紹介があった。まず、日本市場は成熟したモバイル市場であることと、位置情報を利用しようとする企業が数多くあること。さらに「究極のリトマス試験紙」という表現で、日本市場では高品質な機器やデータが要求されるため、日本で成功すれば世界中のどの国・地域でも成功できると語った。
ニアーは「国・地域のチーム」、「国・地域に合った戦略」、「商品・サービスの国・地域適合化」の戦略をとっている。2014年に日本法人を設立したが、日本では位置情報の需要が急激に伸びていること、企業のデータ駆動型マーケティング要求が高まってきていること、日本市場においてニアーの知名度が高まっていること等を挙げ、今回の協業の意味を述べた。日本での実績は設立以来12か月で売り上げは5倍、ユーザー数は800万人から4,000万人に増加したとのことである。
日本市場について ニアーCROショビット・シュクラ氏
また、質問に答える形で、コネクテッドカーとの連携については、現在米国で車にプラグインするデバイスメーカーと協業して実証実験を行なっているとのこと。また日本の自動車メーカーとは数社と話をしているが、自動車メーカーの興味は車のユーザの移動、例えばどの銀行に行ったか、他社のショールームに行ったか等のデータ、つまり車の利用データを望んでいるとのことであった。
一方、ウフルの事業ロードマップについて、園田氏からは、これまでのインターネット広告は人に結びついていなかったと感じている。広告が有益であるためには人に結びついていること、だからIoTで重要なのはユーザーデータをどう結び付けられるかが有益であり、結びついてこそIoTであると述べた。これまでのウフルに足りなかったものはデータであったため、今回の協業により、ウフルにとってのマーケティング推進環境が整ったとのことであった。
シュクラ氏はニアーにとって日本でのキーパートナーはビッグデータを活用し、マーケティング機能を持ち、クラウドサービスとIoTで魅力のある商品をもつ企業であり、それがウフルであるとのことであった。今後ニアーウフルはユーザー位置情報データをもとにIoTで更なる成長を目指すと語った。