アーサー王物語に登場するアーサー王はイギリスの歴史上の英雄で、世界中で長く伝説として親しまれています。しかし、アーサー王伝説は本当にあったのだろうか?作り話ではないだろうか?こんな疑問が浮かび上がってきました。
・アーサー王は実在の人物なのでしょうか?
・アーサー王が実在の人物なら、どんな時代の中で活躍したのでしょうか?
・アーサー王はの先祖は誰でしょうか?
そこで様々なアーサー王についての情報を簡単に纏めてみました。
アーサー王は実在したのか?歴史書にみるアーサー王
アーサー王は実在する人物なのですか?
いろんな説があるんだけれど、ずばり言ってしまうとアーサー王物語やアーサー王伝説に出てくるアーサー王は作り話の可能性が高いんだ。しかし、何らかのアーサー王らしき人物は実在したと考えられているんだよ。
ブリトン人の没落、ブリトン人の歴史
アーサーが登場する初めての記述は、6世紀にイギリスにいたキリスト教司祭ギルダスが書いたとされる『ブリトン人の没落』と言われており、しかしアーサー王という名前は出てこず、アングロサクソン人と戦ったケルト人指揮官と記述されているんだ。
次にアーサー王が登場するのは9世紀にネンニウスによって書かれた『ブリトン人の歴史』です。ここではアーサーは単なる戦闘隊長として登場し、一人で960人のサクソン敵兵を倒したと記述があるんだ。
カンブリア年代記
1世紀に書かれた『カンブリア年代記』にもアーサー記述があるんだ。そこではベイドン山の戦いは516~518年とされています。アーサーは三日三晩の間十字架を両肩で担ぎ、ブリトン人が516~518年の戦いに勝利(おそらくアングロサクソン族との戦い)したとされてるんだよ。。
歴史書からみると、アーサー王は王じゃないかもしれないけれど実在した可能性は高いんですね。アーサー王伝説は作り話と言われるとちょっとがっかりしましたが、勇敢で強い騎士であったようなのでほっとしました~
ブリタニア列王史
そして12世紀、1138年にジェフリー・オブ・モンマスによって書かれた『ブリタニア列王史』の一部分にアーサー王(アルトゥールス)が登場し、アーサー王物語の原形が完成したんだ。
ブリタニア列王史は事実も含まれているとは考えられるけど、歴史書ではなく作り話も多いのではないかと言われているんだ。しかし今となってはどの部分が事実でどの部分が作り話か証明する手立てはなく、そこをとやかく言うよりは、色んなアーサー王を想像することによって、アーサー王物語やアーサー王伝説を楽しむ方がいいと思うな。
アーサー王の時代背景と祖先
アーサー王が実在したとして話を進めるよ!じゃあ、歴史上のアーサー王がいた歴史的な背景をはなそう!
はい、そのほうが夢があってワクワクします!
アーサー王の時代背景
アーサー王は恐らく5世紀後半~6世紀半ば頃までに存在した人物と推定されます。5~6世紀のブリタニアはローマ帝国の直接支配が終わり、ブリタニア王もローマからの派遣ではなくブリタニア独自で王を選ぶようになったんだ。
アーサー王物語ではアーサー王や父ウーゼル王がブリタニア王のことですか?
そう、そのとおりだ!その頃の時代背景はゲルマン民族が西側へ大移動(侵略)する時代で、ゲルマン民族系のアングロサクソン族がブリタニアに領土を奪おうと侵略してくるんだ。歴史上のアーサー王はブリタニアを守るために、アングロサクソン族と勇敢に戦った騎士と考えられるんだよ。
アーサー王は救世主的な存在なんですね!
ブリタニア列王史の作者ジェフリーは、その戦士アーサーに更に色々な話を付け加えて伝説上のアーサー王を作り上げたと考えられるんだ。
つまり、実在のアーサー王+何人かのモデル人物=伝説上のアーサー王なんだよ、さらに中世の文学において伝説部分を進化させていくんだ。
アーサー王物語の元となった伝説「ブリタニア列王史」、伝説を物語化した「ブリュ物語」、物語が進化した「アーサー王の死」中世以降でのアーサー王文学の進化については、「アーサー王伝説」(アンヌ・ベルトゥロ著、日本語訳)に詳しく書かれてありますので参考にしていただければと思います。
- 作者: トマス・マロリー,William Caxton,ウィリアム・キャクストン,厨川圭子,厨川文夫
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 1986/09
- メディア: 文庫
- 購入: 2人 クリック: 12回
- この商品を含むブログ (28件) を見る
- 作者: アンヌベルトゥロ,松村剛,Anne Berthelot,村上伸子
- 出版社/メーカー: 創元社
- 発売日: 1997/10
- メディア: 単行本
- 購入: 1人 クリック: 19回
- この商品を含むブログ (2件) を見る
アーサー王の先祖について
アーサー王物語には父親くらいしか出てこないアーサー王の先祖について、ブリタニア列王史などの情報を纏めてみたんだ。アーサー王の先祖をたどってみると様々なアーサー王の秘密が分かり、知らなかったアーサー王の像が浮かび上がってきてとても興味深いぞ!
とても面白そうです!アーサー王の先祖ですか・・・ロマンがとても広がりますね。教えてください!
アーサー王の父親と叔父達
※アーサー王の父、ウーゼル・ペンドラゴン
アーサー王の父は、ブリタニア王のウーゼル・ペンドラゴン王だ。ウーゼル王には二人兄がいて、長兄はコンスタンスⅡ世、二番目がアンブロシウス・アウレリウスとされているんだ。何れの兄たちもウーゼル王が王になる前にブリタニア王になっており、長兄コンスタンスⅡ世はウェールズ首長のヴォルティゲルンに殺され、ブリタニア王の座を奪われてしまったんだ。
身の危険を感じた母は幼いアンブロシウスとウーゼルを連れてブリテン国を脱出し、ブリタニー国(現在のブルターニュー地方)へ逃れたんだよ。そして成長しブリテン国に戻ったアンブロシウスは宿敵ヴォルティゲルンを破り、ブリタニア国を取り戻しました。その後二人はアングロサクソン族のヒンギストとホルサや彼らの息子達と幾度となく戦い、アングロサクソン族の侵入を防いだんだ。
※ヴォルティゲルンについての記事
アーサー王の祖父
コンスタンティン三世のコイン
アーサー王の祖父は西ローマ皇帝コンスタンティンⅢ世とされているんだ。コンスタンティンⅢ世の兄アルドリエンもブリタニア王でしたが、ブリタニア北部での激しい戦いと寒さに嫌気がさし、ブリタニア王の座を弟のコンスタンティンに譲ってしまいました。ブリタニア王になったコンスタンティンは勢力を広げるために海を渡り、フランス・ゴール地方に拠点を置きました。勢力範囲をライン川まで伸ばし、西ローマ皇帝まで上りつめました。
アーサー王の更なる先祖
アーサー王の祖父コンスタンティンⅢ世の曾祖父は、コナン・メリアドクと言い初代のブリタニー王になった人物です(ブリタニー:現在のフランスブルゴーニュー地方)。
コナンはブリタニア出身で(現在の北ウェールズ付近)、アーサー王よりおよそ100年の4世紀後半にブリタニー王とコーンウォール王(アーサー王の誕生の地)を兼ねていました。
コナンがウェールズに住んでいた当時、ブリタニア王はローマ軍人のマグヌス・マキスムスでした。マグヌスはウェールズ北部に拠点を置いてブリタニアを統治していましたが、西ローマ帝国に攻め入り皇帝を倒しその座を奪いました。
マグヌスと行動を共に戦い勝利を得たコナンは、報酬としてブリタニー地方を貰い受け初代のブリタニー王となり子孫達は王を歴任します。このコナンによるブリトン人の移住により、現在もケルト系民族の末裔がブルターニュー地方に住んでいると考えられます。
すごいですね!アーサー王の背景にこんな興味深い歴史があったんですね~
今回のアーサー王纏め
アーサー王は実在したかどうかという議論はあるかもしれませんが、その人物の歴史背景を知ると新たな面が見えてきてとても興味深いと思います。その意味ではアーサー王はさまざまな伝説があり、さまざまなアーサー王像が生まれとても夢があり面白いです。次回からは、下記の6人のアーサー王(のモデル)についてお話していきたいと思います。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
<キャスト>
ワタル課長
部下アサオ
ジェイムス先輩