糸井重里が作詞した歌を
いちばん多く歌っているのが矢野顕子さんで、
矢野さんのオリジナルソングのなかで
いちばん多くの歌詞を書いているのが
(ご本人の作詞を除けば)糸井重里です。
その数、30曲以上。
この際、まとめて聴きたくありませんか?
矢野顕子さんのソロデビュー
40周年をお祝いして
「イトイヤノ作品」をテーマにしたコンサートが
開かれることになりました。
もちろん糸井も出演します。
『春咲小紅』あたりからはじまる
このコンビの世界は
どうやって作られたのか?
そもそも音楽って、どんなしかけで
できあがっているんだろう?

矢野顕子さんと糸井重里のコンサート
「糸井が書いて矢野が歌う1101曲(の予定)」
のお知らせはこのページの下のほうにあります。
矢野顕子さんオフィシャルホームページ
矢野
『クリームシチュー』ってさ。
糸井
あ、『クリームシチュー』はよかったな。
矢野
冬になるとよく歌います。
あれは‥‥男の歌?
糸井
うん、男の歌です。
矢野
だから自分は
歌っててちょっと距離があるんです。
その距離感が楽しいんですよ。
「ぼくの傷を見るなよ」という詞があって。
糸井
「ぼくの傷を見るなよ、ぼくにあやまるなよ」
だよね。
あの歌は「あやまるなよ」という概念を
書きたかったの。
矢野
なるほどね。
糸井
サビの前があんなに暗い内容なのに、
CMソングにもなったよね。
もうひとつ、同じ時期に
「人生をとりかえた」みたいな詞を書いたけど‥‥。
矢野
『HAPPINESS』だね。
糸井
俺、あれがわりと好きなんだ。
矢野
私も好きだよ。けっこうライブでやってます。
「人生をとりかえたけど、そうでもなかった」
という歌ね。
糸井
そうそう。
そうでもなかったんだよね。
矢野
「ああ、やっぱり、いまの幸せがよかったわ」
とか、そういうんじゃないの。
そうでもなかった、ってのがいい。
糸井
年代順に書いた歌を追っていくと
自分がだんだん
大人になってるのがわかりますよ。
若いときには若い歌を作ってる。
「前から言いたかったけど、ずっとできなかったんだ」
という歌詞を、あとになって作るようになってます。
だけど、ぼくね、
『ただいま』は名曲だと思ってるんですよ。
矢野
『ただいま』ね。
1981年。
糸井
『ただいま』は
『春咲小紅』だったかもしれない歌でね。
矢野
そうだ、思い出した。
糸井
実は『春咲小紅』という歌は
CM用に2曲作ってあって、
採用されなかったほうも、すごくいい歌だから、
「詞を変えて、もういっかい歌にしようよ」
といって作ったのが『ただいま』です。
当時、コマーシャルソングは激戦区だったね。
矢野
なかでもだんぜん、
化粧品の露出が多かったです。
春と秋にある。
そして、すごくたくさんレコードが売れてた。
糸井
じゃんじゃん売れてたね。
『春咲小紅』のヒットで
アッコちゃんはくたびれ果ててた。
それを励ますマネージャーの台詞を
俺、憶えてるもん。
「家が建ちますよ、矢野さん、
 家が建ちますから」
矢野
(笑)
糸井
あのとき、いちばん忙しく走り回ってた
時期じゃない?
矢野
そうね。
さらに自分は
そういうことに興味がなかったから
苦手だったんだろうね。
糸井
慣れてなかったんだ。
矢野
自分のやることが
お金になるということをまず
計算できてなかった。
糸井
一所懸命お化粧とかしながら
打ち合わせなんかもしちゃって、
テレビも出てた。
矢野
歌番組出るの、いやだったんだ。
糸井
だけど、あんときにまいたビラが、
いまの、ちいさいお客さんを
育ててるかもしれないんだもんね。
矢野
そうなんですよ。
糸井
自分がやっているのは
ポピュラーソングだ、という意識は、
どういうものなの?
矢野
自分が
芸術をやってるのか、
芸能をやってるのか、という
問題があるでしょう?
糸井
うん、うん。
矢野
芸能と芸術のあいだには
なにかしら隙間のようなものがあって
いつも居心地悪い思いを抱いていました。
私は、芸能の世界にいながら、
やってることは芸術?
芸術の世界で、芸能をやっている?
だけど、周りのスタッフたちは、
私の描いている「絵」がよくわかってた。
だから私に、
「『春咲小紅』みたいな曲をもう1曲書いて、
 もう1軒、家を建てましょう」
というようなことは、結局、
誰も言えなかったんですよ。
糸井
うん、言えないですね。
矢野
その原因は「興味がない」というのが
いちばん大きい問題のような気がする。
糸井
さきほどから話しているテーマから言うと、
「自分の主観を充分に
 失礼のないように表現する人」
が、客である受けとめ手の
主観をかきたてることがあるとすれば、
そういうことできるものは、
みんな芸術だとぼくは思っています。
芸能の中の芸術要素も、もちろんそう。
石川さゆりさんが『飢餓海峡』歌うときに、
人々は、内なる魂が、
グタグタ言い出すわけでしょう?
どういうチャネルから行こうが、
それはすべてアートだと思うんです。
矢野
うん、そうね。
糸井
そのことがもっとあきらかになったら、
みんな、だいぶ楽になる気がします。
アッコちゃんがやってることが
どういう道筋を通って、
どういうふうに伝わろうが、
アッコちゃんの感じている主観のところで
嘘をつかなければいいんです。
矢野
そうだね。
糸井
ですから、
「矢野さん、もっとないですかね?」
「春咲小紅みたいなのを」
を、5回くり返すような仕事は
それはもう、主観じゃないと思う。
だけどアッコちゃんは、自分の中に、
矢野顕子というプロデューサーがいるんだよなぁ。
そのプロデューサーがいろんなことを思いつく。
きっと、そうしないと飽きるからでしょう?
矢野
すぐ忘れちゃうし、飽きちゃうし。
糸井
今回の「ふたりでジャンボリー」も、
5人といっしょにステージやるだけだって、
あんなにめんどくさいことないよ。
リハだけで大変だわ。
矢野
連日違う人とね。
だってさ、
1人7曲でも、35曲ですよ。
糸井
うん。
矢野
中には大貫妙子さんのように、
とても厳しい要求の方もいらっしゃるんです。
私は、もらった譜面を、自分でわかるように、
すべて書き直し、挑むわけです。
ちょっと間違ったくらいでも、
切れ長の目が、キリッとこちらに向けられます。
「あ、ごめん、ごめん」
と言いながら、心の中で
「こんな‥‥難しい曲、どうして‥‥」
と思い、弾きます。
そんなときも、
これができたら楽しいということが
予想としてあるのです。
そしてそれはたいてい当たります。
糸井
「ひさびさに、大貫妙子ににらまれてみたいな」
みたいな気分も、あるわけでしょ?
矢野
それはないです。恐いです。
(つづきます。次回は最終回)

矢野顕子ソロデビュー40周年記念企画

矢野顕子 ふたりでジャンボリー
糸井が書いて矢野が歌う
1101曲(の予定)

スペシャルゲスト 糸井重里
2016年9月2日(金)
18時開場 18時30分開演
新宿文化センター大ホール
全席指定 一般¥6,500

ほぼ日特典つきのチケット先行販売受付中です。
チケットぴあの専用受付ページから
お手続きください。
下のボタンよりお申し込みいただいたみなさまには
ほぼ日特典「YOROSHIKUバンダナ」のついた
特別シートをご用意いたします。
充分なお席を用意しますが、
先行販売につき、
お申し込みが多数となった場合は抽選となります。
申し込みの〆切は5月22日(日)24時です。

▲矢野さん+糸井のコンビ作品の歌の
登場人物(?)が散りばめられた
バンダナです。

YOROSHIKUバンダナは、
ホール開場時に
(開場から開演まで
 または公演終了後なるべくはやめに)
会場内ホワイエの「ほぼ日特設ブース」で
お受取りください。
その際、チケットを拝見いたしますので
お持ちください。お待ちしています!

矢野顕子さん(作曲)と糸井重里(作詞)が
いっしょにつくった歌は、これまで30曲以上あります。
そのなかから、矢野さん(または糸井)が歌っている曲で、
現在音源が手に入るものをリストアップしました。
すこしずつですが、試聴もできます。
このなかで、好きな歌を選んで
Twitter(ハッシュタグ「#イトイヤノ」)または
メール(宛先:postman@1101.com)で投稿ください。
理由などコメントもつけていただけるとうれしいです。
5月19日(木)まで、お待ちしています!

イラストレーション・ゆーないと

© HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN