川村剛志
2016年5月17日01時13分
悪性度の高いがんを見分けやすい新たな造影剤を、川崎市産業振興財団と東京大、東京工業大などの共同研究チームが開発した。16日付の英科学誌ネイチャーナノテクノロジー(電子版)に発表する。転移防止に役立つ可能性があり、チームは数年以内の実用化を目指す。
がん組織内部の低酸素領域は抗がん剤が届きにくい上、放射線治療の効果も低く、悪性度の高いがんに変化して転移を引き起こしやすい。
研究チームは低酸素領域では酸性度が高いことに着目、酸性度が高くなるほど溶け出てマンガンイオンを放出するナノ粒子を用いた造影剤を開発した。MRIで撮影すると、マンガンイオンがくっついて低酸素領域の分布を映し出せた。実際にマウス実験で大腸から肝臓に転移した直径1・5ミリのがん組織を既存の造影剤に比べはっきりと確認できたという。
研究チームの西山伸宏・東工大教授は「通常は取り出さないとわからなかったがん組織の低酸素領域を、広く普及しているMRIで調べられる。がんの早期発見や微小な転移の発見に加え、治療の有効性なども迅速に判定できる」と話している。(川村剛志)
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