税率が著しく低いタックスヘイブン。存在は知られていたが、内情は長らくブラックボックスのままだった。そこから飛び出た、膨大な内部機密文書。ついにパンドラの箱が開く—。
資産家しかできない超節税術
兵庫県芦屋市六麓荘町。関西を代表する超高級住宅地だ。そんな中でも高台に位置する一等地に、要塞のような豪邸がそびえている。
鉄筋コンクリート3階建てで、延べ床面積750m2。裏には1000m2を超す庭が広がっている。そんな大豪邸に住む人物に「疑惑の目」が向けられている。UCCホールディングス社長でUCC上島珈琲グループCEO(最高経営責任者)の上島豪太氏(47歳)だ。
パナマにある法律事務所「モサック・フォンセカ」の機密文書が大量に流出。タックスヘイブン(租税回避地)を「活用」した課税逃れの実態を、国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)が調査してきた。そして5月10日、パナマ文書がついに公開される。その中には上島氏の名前もあり、タックスヘイブンにあるペーパーカンパニーを用いて、「行き過ぎた節税」を行ったのではないか、という疑惑が持たれているのだ。
パナマ文書によると、タックスヘイブンである英領バージン諸島に'00年に設立された2法人の唯一の株主で役員として、上島氏の名前が登場するという。ただし、この2法人の事業目的や活動はわかっていない。
上島氏はUCC上島珈琲創業者の孫で、3代目社長。売上高1385億円('15年3月期・単体)の大手コーヒー飲料メーカーの舵取りを託された若きリーダーだ。
「上島氏は甲南大学卒で、学生時代は少林寺拳法部の主将を務めるなど、体育会系の経営者です。若い頃から帝王学を授けられ、'09年に40歳の若さでUCC上島珈琲社長に就任しました。現在はUCCグループCEOで、社長職は弟の昌佐郎氏に譲っています。会長である父・達司氏とともに3人でがっちり経営をグリップしています。
持ち株会社であるUCCホールディングスは非上場ですから、実態は不透明ですが、上島一族がほとんどすべての株を握っているはずです。会社の利益は株式への配当という形で創業一族に入りますから、溜まりに溜まった個人資産を資産管理会社によって管理し、少しでも節税しようと考えるのは当然のことでしょう」(上島家を知る経済ジャーナリスト)