【動画】井の頭自然文化園の国内最高齢のゾウ「はな子」=高橋友佳理撮影
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 井の頭自然文化園(東京都武蔵野市)にいる69歳のアジアゾウ「はな子」が室外に出なくなってから14日で2カ月がたった。飼育員たちは毎日1時間ずつ一般公開を中断してはな子とふれ合うようにし、体調は安定している。

 「おーい、はなちゃーん」。12日午後1時、飼育員の班長、宮路良一さん(59)が声をかけると、はな子はゆっくり柵の方に寄ってきた。飼育を担当して4年目の久保田夕紀子さん(27)が熊手で背中や腹をかくと、気持ち良さそうに鼻を振り、バケツに入れた黒糖湯を飲んだ。

 バナナは1本ずつ皮をむいてあげる。久保田さんが鼻先にのせると、しばらく鼻の上で転がし、ぽとりと落とした。手を伸ばして口の中に入れると、もぐもぐ口を動かす。宮路さんは「鼻で食べられないのでなく、甘えている。昨日食べても今日は食べない、とむらがある」と言う。

 はな子が外に出なくなったのは3月14日。それまで日中は、はな子が運動場にいれば飼育員だけが入れる通路から餌をあげていたが、鼻が飼育員にぶつかったりする恐れがあるため安全柵が設置された。だが環境の変化に敏感なため、寝部屋にこもるように。20日に柵が撤去されたが、その後も運動場へ出たそうな動きは見せるものの、一歩を踏み出せずにいる。

 園はこれまで午前9時半から午後3、4時まではな子を公開していた。だが室内に終始いるため客の目の前で餌を食べることになる。はな子は歯が抜け落ちているため、食べるのは柔らかいバナナや桃の缶詰などの特別食。宮路さんは「落ち着かず、食事に集中できない。きちんと食べさせるために1時間ほしい」と園に要望。3月25日から昼食時の1時間は非公開にした。複数の飼育員がふれ合いながら餌をあげるようになり、一時細っていた食は徐々に回復した。

 宮路さんは「体調は落ち着いているけれど、年が年なので忍耐強く飼育するほかない。暖かくなったので、外に出てくれれば」と話している。(高橋友佳理)