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/5止(その1) 発生1カ月 県「安全」と企業誘致 警告伝わらず

熊本県がインターネット上に掲載していた図。東日本太平洋側を「危険地帯」、同県などを「安全地帯」と描いていた=ITmediaより
熊本地震の「前震」発生時刻に黙とうする大山祐介さん家族ら。現在も約280人が避難する産業展示場「グランメッセ熊本」にテントを立て、夜は車中泊する。長女の愛歩さんは「夜になると地震を思い出して怖くなる。朝が来て早く明るくなればと思う」=熊本県益城町で2016年5月14日午後9時26分、久保玲撮影

 「過去120年間M7以上の地震は発生していない」「地震保険の保険料は全国で最低ランク」。こんなうたい文句を躍らせ、熊本県が企業誘致を目的に開設していたインターネット上のサイト「企業立地ガイドKUMAMOTO」が、熊本地震で2度目の最大震度7を観測した4月16日の「本震」の数日後、ひっそりと削除された。

     サイトは、熊本を含む九州北半分から中国地方を「安全地帯」、東日本太平洋側を「危険地帯」と対比していた。これがインターネット上で話題になったため、県企業立地課の担当者がサイトのことを思い出し、「慌てて削除した」という。

     同課は、地震の少なさを企業誘致の「売り」にしていた。活断層の存在はもちろん知っていたが、「地図を見ると日本中どこにでも活断層はあり、特別な危機感は持たなかった。気象庁のデータでも過去にマグニチュード(M)7以上はなかったし、地震が少ないと考えてもいいのかなと思っていた」と釈明する。

     だが熊本県では1889年と1975年にM6クラスの地震が発生。江戸時代にも複数回、M6クラスの地震が起きていたことが分かっており、必ずしも安全地帯とはいえない。

     熊本地震は国が発生を想定していた地震だ。布田川(ふたがわ)・日奈久(ひなぐ)断層帯の発生確率を予測して公表し、ほぼその想定通りに起きた。「発生した場合は、市南東部で震度6強を示します」。2011年に熊本市が作成した地震ハザードマップも、同断層帯が動くとの想定で建物の被害予測を描いていた。

     一方で、市は地震の発生確率を「極めて低い」とマップに記載していた。市職員による出前講座でも、確率について詳しく説明されることはなかった。地震で自宅が壊れ、市総合体育館で避難生活を送る同市中央区の女性(78)は「まさか熊本で、こんな地震が来るなんて思いもしなかった。市や国がもっとわかりやすく説明してくれていたら、みんなもっと、地震への備えをしていたはず」と不信感を募らせる。

     予測に基づく警告が住民に伝わらなかった熊本地震は、国が95年の阪神大震災を機に進めてきた地震防災対策の手法に疑問符を突きつけている。

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