古墳時代の遺構発見 火山灰で保存良好
群馬県埋蔵文化財調査事業団は11日、同県渋川市の「金井下新田(しもしんでん)遺跡」で、6世紀初頭(古墳時代後期)の火山灰の地層から、植物の茎を編んだ高さ約3メートルの「網代垣(あじろがき)」に囲まれた遺構に加え、土器や勾玉(まがたま)など計数千点が見つかったと発表した。政治・祭祀(さいし)の拠点だったとみられる。近くの榛名山の噴火による火山灰に覆われており、良好な保存状態で見つかるのは全国初という。
網代垣は厚さ約30センチの3層構造で、約55メートル四方のスペースを囲み角材の柱が1.8メートル程度の等間隔に立っていた。垣の材料はアシなどのイネ科とみられる。近くから祭祀に使ったとされる土器が1000点以上、ビーズ状の臼玉(うすだま)や勾玉計数千点が出土。遺構の中央からは大型竪穴住居も見つかったため、事業団は当時の首長の祭祀をつかさどっていた政治的な拠点だったと判断した。
6世紀初頭の榛名山二ツ岳の噴火で発生した高温・高速の火砕流で垣がなぎ倒され、降り注いだ火山灰とともに埋没したとみられる。垣は炭化した状態で見つかった。事業団によると、火山灰の下にそのまま残されているため、祭祀の具体的な様子や経過が今後判明する可能性があるという。
周辺には、同じ6世紀初頭の噴火でよろいを身に着けたまま埋没した成人男性の人骨が見つかった「金井東裏遺跡」のほか、6世紀中ごろの噴火で集落が埋もれ「日本のポンペイ」と呼ばれる黒井峯遺跡や中筋遺跡がある。
国学院大の笹生(さそう)衛教授(祭祀考古学)は「西日本の遺跡をみても垣で囲われた空間は祭祀の場として重要と考えられている。当時の祭祀の手順や道具の使い方を追いかけられる点で画期的だ」と話す。
遺跡の一般公開は14日午前10時〜午後3時。【尾崎修二】