過酷な改善要求「当然」 3元社長の反論判明
東芝の不正会計問題で、「チャレンジ」と称される過酷な収益改善の指示が不正を招いたとして同社から損害賠償を請求されている歴代3社長が「改善要求は経営者として当然」などと全面的に反論していることが分かった。不正会計問題を巡って旧経営陣の詳細な主張が明らかになるのは初めて。証券取引等監視委員会が3人の刑事告発を視野に調査しているパソコン事業の利益水増しも否定し、対決姿勢を鮮明にしている。
3人は、2005〜09年に社長を務めた西田厚聡氏、後任で13年まで社長だった佐々木則夫氏、その後を継いだ田中久雄氏。いずれも不正会計問題を受け、昨年7月に相談役、副会長、社長を辞任した。
東芝の第三者委員会調査によると、3人は社長在任時、四半期末に業績の悪い部門にチャレンジを要求。現場を不正会計に追い込んだ。パソコン事業では、自社で調達した部品を外部企業に売り、完成した製品を買い戻す「バイセル取引」を悪用。部品の原価を知られないよう調達金額に上乗せする額を大きくしたり、必要以上の部品を売り渡す「押し込み」を行ったりして一時的に利益をかさ上げしたと指摘された。
3人の反論は、東芝から32億円の賠償支払いを求められている訴訟の中で示された。西田氏は「チャレンジは財務部署の分析を経た上で行う合理的なものだった」、佐々木氏は「意味合いは努力目標。何ら問題はない」、田中氏は「改善要求は経営者として当然。他社でも広く行われている」と主張している。
また、不正を知りながらチャレンジを求めたと指摘されたパソコン事業の利益水増しについても明確に違法性を否定。調達部門出身の田中氏は「上乗せ額は一定だった。調達価格が下がったため結果として割合が大きくなっただけ」と断言した。
西田氏は「部品の大量購入には反対したはずだ。会議の議事録を提出してほしい」と東芝側に要求。佐々木氏は「詳細な説明は受けたことがないし、バイセル取引はチャレンジがなかった月も行われていた」とトップ主導との見方を打ち消している。
不正会計問題を巡っては、金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)容疑で3人の刑事告発を視野に調査を継続している監視委が、田中氏から事情を聴いたことが明らかになっている。【大場弘行、山本将克】
【ことば】東芝の不正会計問題
2015年にインフラ関連工事、半導体、テレビ、パソコンなど東芝の主要事業で利益の水増しなど不正な会計処理が発覚した問題。東芝は09年3月期以降の約7年間の損益(税引き前)を計2248億円下方修正し、15年11月、歴代3社長を含む旧経営陣5人を東京地裁に提訴した。金融庁は過去最高の73億7350万円の課徴金納付を東芝に命じた。