アフリカで次の狙い目は、金融ビジネス?
堀江貴文(以下、堀江) 金城さんはアフリカで、IT系のビジネスもDMMと組んでやるって言ってたけど、僕は金融業が有望だと思うんですよね。銀行のインフラが整ってないから。銀行は電子化もしてないよね?
金城拓真(以下、金城) ネットバンクで送金ができるところは、ほぼないですね。
堀江 じゃあ、送金はどうしてるんですか?
金城 普通に銀行の窓口に並んで。これ、実はすごく重要なポイントで、窓口に並ぶと丸1日潰れるんです。なので、ちゃんと送金できる従業員を雇えるかどうかで会社の業務のスピードがぜんぜん違ってくるんですよ。
金城 安心してお金を預けられる従業員。持ち逃げするかもしれないから、そこをきちんとマネジメントできるかどうかが、会社の成長を左右しますね。
堀江 そういう世界だ。金城さんて、何カ国くらいに会社を持ってて、どこの国の売り上げが一番多いんですか?
金城 アフリカの9カ国と、あと中国と日本です。儲けが大きいのは、やっぱり金鉱山のあるニジェールですかね。その次がナイジェリアとか、貿易会社がある西アフリカ諸国です。
堀江 そこに銀行作ればいいじゃないですか。
金城 銀行の走りというか、マイクロファイナンスみたいなことはやってます。でも、そこから先の知識がないので、どう動けばいいのかわからなくて。
堀江 僕が教えてあげますよ。
金城 やった!
—— ライブドアファイナンス?
堀江 いや、ライブドアファイナンスは関係なくて、僕はライブドア時代に、モンゴルとカンボジアの銀行を買収しようとしたんですよ。でも、うちの取締役会は先を見通す力がなくて「社長の金でやってくれ」みたいなことを言うの。僕としては、真面目に会社のためを思って提案したんですけどね。結局、銀行を押さえるのが一番利益になるじゃないですか。
金城 そうなんです。韓国の財閥系が弱いのは、銀行を持ってないっていうのが結構大きな理由だったりするんですよね。だから僕も、会社が大きくなるにつれて、銀行を持たないといけないなというのは漠然と思ってるんですけど。
みんなで金鉱山を爆破しに行こう
堀江 ただ、銀行っていう古い概念がいま変わりつつあるんで、実はそこまで必要とされてないのかもしれない。いずれにせよ、どうやってお金を集めるかっていう話なので、たとえば世界中から出資者を募って「みんなで金鉱山買おうぜ!」とか。
—— 金鉱山クラウドファウンディング?
堀江 そういうのが可能なんじゃないかな。それで金城さんが持ってる金鉱山を倍くらいの値段で売ればいい。
金城 いいですね(笑)。
堀江 バイアウトして、それでまた違う金鉱山買えばいいじゃないですか。
金城 金鉱山は観光としても、意外と面白いですよ。ダイナマイト持ってって、山に仕込んで「どっかーん!」ってやって、出てきた土砂をUFOキャッチャーみたいなやつでトラックに乗せて、精錬所にあるでかいビーカーまで運んでいく。
堀江 それ超楽しそう(笑)。っていうか、そのダイナマイトで爆破してトラックで運ぶって、ロボットでもできそうだよね?
—— ロボットより人件費のほうが安いんじゃないですか?
金城 「ロボット化」っていうと、先進国だと人件費削減の話になりがちですけど、アフリカは違くて、ヒューマンエラーの防止なんですよ。つまり、ロボットは物を盗まないし、注文も間違えない。
—— そんなに人の労働の精度が違うんですか?
金城 ぜんぜん違います。幹部クラス以外の人にはお金に触らせないようにしようとか、そんなレベルですね。
堀江 それでもアフリカはぐんぐん伸びてるからね。いま危ない国って、内戦中のスーダンとかソマリアくらい?
金城 まだそういう情報が入ってくる国はマシなんですよ。本当にヤバいのは、情報が入ってこない国。たとえば中央アフリカとか、ほとんど内情がわからないでしょ?
堀江 そういう国はどうなってるんですか?
金城 ……まあ、群雄割拠ですね。
—— 戦国時代……。
金城 中央行政が統括できないので、地方の豪族みたいな人たちが覇を争ってる感じ。でも、僕はそんなに怖いと思わない。むしろ南アジアや東南アジアのほうが怖いと思いますね。『スラムドッグ$ミリオネア』っていう、インドのスラムを舞台にした映画があったじゃないですか。あれをタンザニアのスラムの子たちと一緒に観たんですよ。
そしたら、みんなビビってました。「アジア、マジ怖え……」「物乞いさせるために目を焼くの!? 頭おかしい!」って。
タンザニアでロケットを打ち上げよう
金城 というか、僕の家はスラムのど真ん中にあるんです。
—— スラムに住んで危なくないんですか?
金城 もう7~8年住んでるんで。最初はただお金がなくて住み始めたんですけど、居心地がよかったのでつい。だから僕は、いまスラムでイキってる奴らを、オネショしてるころから知ってるんですよ。
堀江 スラムに住み着いちゃうのもそうだけど、これって一歩踏み出す人と、踏み出さない人の差ですよね。アフリカで中古車を売ってみようとか思ってもなかなかできないし、ましてや片道切符で行ったりしないもん。
金城 向こうで一旗あげて、ビジネスクラスで帰ってくるつもりだったんですけどね。
堀江 すごく、物事を都合よく考える脳の構造をしてますねよ、たぶん。
金城 だから、タンザニアで車がまったく売れなかった1カ月間は「俺、路上で物乞いしてる人たちよりも稼げてない!」って、落ち込みましたね。
堀江 そうそう、物乞いって経済発展の指標のひとつだよね。10年くらい前だとタイのバンコクとかでも見かけたけど、いまはすっかり物乞いの姿を見なくなった。バングラデシュあたりまで行かないと物乞いがいない。
金城 そういった国々よりも、アフリカって物価が高いんですよ。タンザニアの物価は韓国と同じくらいだし、ケニアだと日本とほぼ一緒かな。
堀江 なんでそんなに高いんですか?
金城 製造業が発達してないから、ほとんどが輸入品なんですよ。だから関税も海運費もかかる。
堀江 じゃあ国内で産業作ったら、がっぽがっぽじゃないですか。
金城 そこが難しい問題で、たとえばナイジェリアのような大きな国が、国内でプラスチック産業を興したとするじゃないですか。そしたら、その産業を保護するために国がプラスチック製品の輸入規制をかけたり、関税を高くしたりするんですけど、それに対して大手の輸入企業や他の国から外圧がかかって有名無実化するっていうのはよくあることで。だから国内産業が育ちにくい環境にあるんですね。
堀江 いっそロケットの打ち上げ基地でも作りますか?
金城 じゃあ、土地は僕が押さえますよ(笑)。
堀江 タンザニアって、ロケット打ち上げるのにちょうどいいんですよ。赤道に近いし、東は海しかないし。ロケットって、地球の自転に乗せて東に向けて打つから。
金城 なるほど、沿岸部の土地ですね。
堀江 あんまり人がいないところね。沖合で漁業とかやってるの?
金城 近海ではやってますね。遠洋漁業はどうかわかりませんけど。
堀江 でも、漁業権も押さえられるでしょ?
—— 完全に悪巧みしてるノリになってますね(笑)。
一晩で10万円使うベナンのパーティー・ピープル
堀江 この『君はどこにでも行ける』は、実はアフリカのことはあんまり書いてないんですよ。僕はアフリカは、10年くらい前にケニアとセーシェルにしか行ったことがないので。だから今度、7月にタンザニアに行くついでに、何カ国か回ってみたいんですよね。
—— アフリカって、エンタメ産業はどうなってるんですか?
金城 みなさんが想像してるよりずっと大きなマーケットだと思います。僕の友達がベナンのコトヌーっていう都市で経営してるクラブでは、一晩でお客さん一人あたりが落とす金額を10万円と見積もってるんですよ。
—— えっ、一晩で一人10万円? 踊るほうのクラブですか?
金城 踊るほうです。大都市ではそういう店がザラにあるんですよ。アフリカにあるフランス語圏の国で、フランス語を話せる層って全体の20%程度なんですけど、その20%に富が集中する仕組みになっちゃってて。彼らはお金を湯水ののように使う。
堀江 ベナンの人口ってどのくらいですか?
金城 1000万人くらいですね。
—— そんな小さな国なのに、経済レベルは高いんですね。
金城 隣にナイジェリアがあるのが大きいんですよ。いまナイジェリアはすごい経済発展してるんで、港も混むんです。それよりベナンの港に荷揚げして、陸路でナイジェリアに入れたほうが早い場合もあって、そういうルートを押さえてる人たちが儲けてる。僕の顧客にも、ベナンとナイジェリアで貨物を回してる人が何人もいます。
堀江 ゾマホンもベナンの人だよね。彼もその20%?
金城 いや、彼はど田舎の村から努力と才能でのし上がってきた人なんで、違うんですよ。僕が付き合ってる人たちは、家柄のいい、生まれた瞬間から勝ち組の人たち。
堀江 じゃあ、ゾマホンと付き合っても、ビジネスにはならない?
金城 いやいや、彼はいまや政府系の肩書きも持ってる偉い人ですから。あと、観光ならジンバブエもオススメですよ。一般的なイメージとはぜんぜん違うんで。
堀江 へえ。スーパーインフレの国というイメージしかないですけどね。もともとタンザニアとザンビアは行こうと思ってたんですよ。ネットで調べてみたら、ザンビアの首都ルサカの街とかすごい近代的で。もちろんいま聞いたベナンのクラブも見てみたいし、あとはニジェールの鉱山でダイナマイトを爆発させて。
金城 ぜひぜひ。ドカンと一発。
堀江 じゃあ、第2弾はアフリカ編で。『君はアフリカにでも行ける』。
金城 だいたい誰でも行けますよ(笑)。
金城 拓真(きんじょう・たくま)
1981年沖縄県北谷町生まれ。海外(アフリカ)起業家。2003年よりアフリカビジネスを開始。現在ではアフリカ9か国(タンザニア・ザンビア・マダガスカル・ベナン・ニジェール・ブルキナファソ・コートジボワール・トーゴ・カメルーン)で50以上の企業経営(各種貿易取引、農場経営、不動産、タクシー、運送業、金鉱山、ホテル、中国製品の卸売、土地開発、広告代理など)に携わる。2012年には内閣国家戦略担当大臣から表彰されるなど、アフリカンビジネス第一人者の一人。
司会:加藤貞顕 構成:須藤輝 撮影:武田敏将 会場:ゲンロンカフェ
激変する世界、激安になる日本。世界中を巡ってホリエモンが考えた仕事論、人生論、国家論。
はじめに 世界は変わる、日本も変わる、君はどうする
1章 日本はいまどれくらい「安く」なってしまったのか
2章 堀江貴文が気づいた世界地図の変化〈アジア 編〉
3章 堀江貴文が気づいた世界地図の変化〈欧米その他 編〉
4章 それでも東京は世界最高レベルの都市である
5章 国境は君の中にある
特別章 ヤマザキマリ×堀江貴文
[対談]ブラック労働で辛い日本人も、無職でお気楽なイタリア人も、みんなどこにでも行ける件
おわりに