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社説

金融政策維持 仏の顔は三度まで…

 物価上昇目標の達成を先送りしながら日銀が金融政策の現状維持を決めたのは、異次元緩和の限界を示した格好だ。金融政策頼みに無理があり、アベノミクスは軌道修正を急ぐべきだ。

 実に四度目の「後ズレ」表明である。原油安の影響や新興国経済の減速といった外的要因はある。二月に始めたマイナス金利政策の効果が出るまでには半年程度かかるとの理屈もあろう。それでも「仏の顔も三度まで」と言うように四度目ともなると、さすがに金融政策への信頼性や日銀の本気度が疑われよう。

 二〇一三年四月に始まった異次元緩和は「二年で2%」の物価上昇達成を華々しく掲げた。しかし、ズルズルと達成先送りを続け、四度目の今回は「一七年度前半ごろ」から「一七年度中」とした。つまり遅ければ一八年三月末まで丸五年かかることになる。

 この間にも市中の大半の国債などを買い入れる量的緩和を拡大し、奇策といわれたマイナス金利も導入した。しかし、きのう朝発表の三月の消費者物価指数は五カ月ぶりに下落に転じた。年明け以降の円高も定着し、熊本地震の影響も深刻だ。それでも今回、日銀が動かなかったのは政策の手詰まり感が顕著で、緩和すれば「弾切れ」の恐れがあるからだろう。

 「中央銀行の歴史上、最強の緩和策」「緩和の手段はいくらでもある」。異次元緩和の限界論に対し、黒田東彦総裁は強弁してきた。なるほど手段はたくさんあるのかもしれないが、肝心なのは「効果がある手段」かどうかだ。いくら薬の種類や量を増やしても、効かなければ、かえって副作用のリスクが増すだけだ。

 物価が上昇しないのは緩和が足りないからではない。むしろ金融緩和の一本足打法であるアベノミクスの限界を示すばかりだ。

 一時的に円安・株高が実現し、大企業や富裕層は潤った。しかし、それだけだ。富は中間層以下や地方に行き渡らず、消費の担い手である中間層は細り、国内総生産(GDP)の七割を占める「消費」「投資」は増えないのである。物価も上昇しない。

 アベノミクスはこの三年間、円安・株高を享受した。だが効果的な成長戦略を実現できないまま、年初から日本経済に逆風となる円高に見舞われている。構造改革を進めるべき猶予期間が切れた今、物価上昇−デフレ脱却のためには所得再分配に力点を置き、格差是正、中間層育成を急ぐことだ。

 

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