二度あることには、やはり、三度目があった。
三菱自動車の燃費データを巡る不正問題のことだ。同社は、過去二度にわたって組織的なリコール隠しの問題を起こしたが、今回、また不都合な事実を隠そうとする意図的不正が露見した。
三菱グループには、基本的な価値を表現した「三綱領」と呼ばれるものがある。「所期奉公、処事公明、立業貿易」がそれだが、三菱自動車は、物事を公明正大に処理すべきだとする「処事公明」に三度背いたことになる。
三菱グループの建前上の価値観にあっては、三菱自動車が「許される」余地は全く無い。
他方、結束が固いと言われる三菱グループには、「三菱と名の付く会社を潰してはならない」という不文律がある。
現実に目を転じると、三菱自動車の燃費に関する不正は、現時点で、それが、どのくらいの範囲(対象と時期)に及び、どの程度の経済的損失を同社にもたらすものなのかが、見通せない。
本稿執筆時点で、燃費の計測方法に不正があったのは1991年からだという報道もあるし、2001年には自社流の計測方法と正しい計測方法の比較試験を行っていたとの報道もある。
問題の根が深いことは間違いないとしても、どの車種に関して何台どのような責任があるのかも不明であり、社内の、さらに経営上の責任も明確でない。経済的、法的、道義的な責任の規模と所在がまだ明確でないのだ。
今回の不正発覚は、OEMの発注元である日産自動車の問題指摘によると報道されているが、例えば、これから日産自動車が三菱自動車工業との提携を打ち切るとすると、三菱自動車は経営的な苦境に立たされるだろう。
日産が、直接的な費用の肩代わりだけで、三菱自動車を許すとは考えにくい。損害賠償の請求・訴訟や提携の解消は十分あり得るリスクだと考えるべきだ。
また、三菱自動車工業の車は海外にも売られている。今後、問題が海外のビジネスに波及する可能性もある。
三菱自動車工業は、単独でこの苦境に耐えるだけの体力と実力を持っていない公算が大きい。すると、三菱重工、三菱商事、三菱東京UFJ銀行をはじめとする三菱グループが、同社を支援するか否かが問題になる。
三菱の綱領に背く違反
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