拳銃は、撃たれても当たらないから大丈夫
—— 金城さんは冤罪で捕まった以外にも、危ない目に遭っていて、銃で撃たれたことがあると聞いたんですが?
金城拓真(以下、金城) ありますあります。まあ、拳銃で撃たれても当たらないなっていうのが僕の実感なんですけど。
たとえばオリンピックの射撃競技でピストル種目なんかを見ると、選手たちは標的に対して体を横向きにして銃を構えてるんですよ。そうやって正しい姿勢で撃たないと当たらないから。でも、素人は体の正面で構えちゃうから全然当たんなくて、脅しの道具にしかならないんですよ。
—— どのくらい離れてたら当たらないんですか?
金城 5~6メートル離れてればもう当たらないと思います。
一同 へえ〜。
堀江貴文(以下、堀江) 拳銃じゃなくて、ライフルとかマシンガンも当たらないの?
金城 マシンガンは、銃口をやや下向きに構えるんですね。そこで引き金引いて、連射して弾道を見て調整するから、やっぱり標的にまっすぐ銃口を向けてもあさっての方向に弾が飛んでっちゃう。ルーキーのチンピラがやりがちなミスですね。
—— ルーキーって(笑)。
堀江 っていうかその口ぶりだと、銃で脅されたのは1回や2回じゃないですよね?
金城 両手の指で足りるくらいです。
—— それって何を要求されているんですか? やっぱりお金?
金城 うちがやってる貿易会社って、西アフリカに中国の商品を卸している会社としては最大手か、少なくともトップ3には必ず入るんです。でも、中国の商品を日本人の僕が扱っているというのは、中国人からするとものすごくイメージが悪いんですよ。だから、もし僕がいなくなったら、僕が握ってるシェアをほかの中国人たちで奪い取れるっていう考えがあるらしく。
金城 中国人が現地のギャングを雇って僕を襲わせてるんですよ。それならばと、僕は警備会社を作って、そのギャングたちをみんな雇用してあげたんです。そしたらまあ、裏の情報が出てくる出てくる(笑)。そのギャングたちが「キンジョー、最近はあのへんが物騒だから、行かないようにしてね」みたいな。
堀江 すごいね。でも、もともと警備会社ってそういう成り立ちですよね。まあ、どこの会社かは言わないけど、ありますよね、有名なのが。
金城 ああ、あの会社ですね。
—— そのへんにしておきましょうか(笑)。
盗難に遭ったら、役人に国境封鎖してもらう
堀江 金城さんはそうやってアフリカに会社をバンバン作ってるわけだけど、土地もたくさん持ってるの?
金城 一応建設業というか、デベロッパー的な仕事もしているんですけど、それはタンザニアやケニアみたいな大きな国じゃなくて、もっと小さな国でやってるので、儲け度外視なんですよ。そういう小さな国だと、だいたいどのあたりの土地やビルが金城の持ち物かっていうのを、上の役人たちはみんな知ってるんですね。すると、その中から「割引で売ってくれない?」って言ってくる小狡い人が出てくる。最初は僕も嫌々だったんですけど、最近はわりとノリノリで、彼らの指し値で売ってます。
堀江 どうして?
金城 彼らは市場価値を調べて、だいたい相場の6~7割くらいを指してくる。つまり僕としては実質3~4割引で土地を売って、買った人はそれを転売して儲けを出すっていう構図なんですけど、おかげで宣伝広告費を一切かけなくてもじゃんじゃん売れてくれるので、まあいいかなと。
堀江 営業代理店みたいなもんだ。
金城 そう。もっといいのが、顧客である彼らは役人なので、いろんなコネを持ってるんです。さっき僕は中国の商品をアフリカで卸してるって言いましたけど、たまに商品をコンテナごと盗まれるんですよ。小さい国だと3時間ぐらい車で走ったら隣の国なので、盗まれたってわかった瞬間に国境封鎖とかしなきゃいけない。そのときに、地元の役人のコネが生きるんです。
堀江 盗まれること前提で考えるんだ(笑)。
金城 はい。だから土地を買ってくれた人たちのリストがあるんですけど、そこに一斉メールで「コンテナ盗まれたから国境封鎖お願いします」って送ると、すぐ封鎖してくれる。
堀江 すげー。IT系とかはやらないんですか?
金城 IT系はまだちょっと弱いんですけど、このあいだDMM.comの亀山(敬司)さんから一緒にやろうとお誘いを受けてまして、これからですね。
堀江 ひょっとして、その絡みで僕もタンザニアに来てくれって誘われたの?
金城 そうです。7月にうちのグループ会社の広告会社がビジネスアイデア大賞みたいなのをやるんですけど、その審査員として堀江さんをお招きしたんです。本当にありがとうございます。
「この鉱山、マジ買ってよかったわ!」
—— どんなビジネスが出てくるんですか?
堀江 いまはなんでもできると思いますよ。ケニアのマサイ族の村とか、ガチで伝統衣装を着てる人たちがいて、牛糞と泥でできた家が立ち並んでるけど、その家の中を見たら液晶テレビもあるし、みんな携帯電話も持ってる。
金城 その電気代や携帯代を稼ぐために街に出て、警備員の仕事とかをしてるマサイの人も結構いるんですよね。でも、そういう出稼ぎのマサイと、ガチで遊牧生活をしてるマサイは、やっぱりぜんぜん違う。僕は鉱山とか持ってたりするんでよく田舎のほうにも行くんですけど、そういう場所で偶然出会うマサイの人って、めっちゃ怖いんですよ。もう、都市部のスラムで銃を持ってるギャングなんかよりよっぽど怖い。
堀江 弓とかで射ってくる感じ?
金城 最初は静かに話しかけてくるんですけど、完全に「殺るぞ」っていう目をしてるんです。手には短刀を持っていて、それが届く間合いにスッて入ってきて。
—— なんで殺られそうになったんですか?
金城 彼らは牛を放牧してるんで、きっと牛泥棒か何かだと思ったんでしょうね。
堀江 ときには、殺るんでしょうね。
金城 でしょうね。あんな山奥で人が死んでも、誰もケアしないし。
堀江 っていうかいま、さらっと「鉱山持ってる」って言いました?
金城 はい。ニジェールに金鉱山を持ってます。
堀江 すごいな。それは、精錬までやってるんですか?
金城 最後まではやってないです。純度を70~75%くらいにした状態でインドに輸出してるんで。その程度まで純度を上げるのは簡単なんですけど、そこから純度99.9%まで持っていくのは技術的に厳しくて。
堀江 でも、一応精錬はしてるんですね。
金城 そうですね。山を削ると土砂が出ますよね。その土砂を人間が40人くらい入りそうなでっかいビーカーの中に入れて、薬剤を注入して、4日間くらい置くと金が出てくるんです。だいたい、1トンの土砂から3グラムくらい金が出ると、みんな狂喜乱舞。「この鉱山、マジ買ってよかったわ!」っていう世界なんですけど。
—— 「鉱山買ってよかった」って、聞いたことないセリフですね(笑)。そもそも鉱山ってどうやって買うんですか?
金城 「鉱山買わない?」って言われたので。僕が以前ビルを売った人から「最近ギャンブルにハマって身を崩したやつが鉱山を売りに出した」って聞いたんですよ。で、彼が「ニジェール政府は俺が抑えるから、資本を出さないか?」って。それで6人くらいで出資したので、厳密には僕だけの鉱山じゃないんですけど。
堀江 金城さんはいくら出したんですか?
金城 40億円くらい。
堀江 すげえ……。
金城 当時は儲かってたんですよ。
—— キャッシュで40億円持ってたんですか? 銀行で借り入れとかせずに?
金城 はい。基本的に僕は銀行とかよくわかってなかったんで、キャッシュで。でも、3回くらいに分割して、最初は権利を押さえるために、次は機材を新しくするためにっていう感じで、約1年かけて払ったので、そんなに負担じゃなかったです。
次回『一歩踏み出す人と、踏み出さない人の差』は5月5日(木)更新予定
金城 拓真(きんじょう・たくま)
1981年沖縄県北谷町生まれ。海外(アフリカ)起業家。2003年よりアフリカビジネスを開始。現在ではアフリカ9か国(タンザニア・ザンビア・マダガスカル・ベナン・ニジェール・ブルキナファソ・コートジボワール・トーゴ・カメルーン)で50以上の企業経営(各種貿易取引、農場経営、不動産、タクシー、運送業、金鉱山、ホテル、中国製品の卸売、土地開発、広告代理など)に携わる。2012年には内閣国家戦略担当大臣から表彰されるなど、アフリカンビジネス第一人者の一人。
司会:加藤貞顕 構成:須藤輝 撮影:武田敏将 会場:ゲンロンカフェ
激変する世界、激安になる日本。世界中を巡ってホリエモンが考えた仕事論、人生論、国家論。
はじめに 世界は変わる、日本も変わる、君はどうする
1章 日本はいまどれくらい「安く」なってしまったのか
2章 堀江貴文が気づいた世界地図の変化〈アジア 編〉
3章 堀江貴文が気づいた世界地図の変化〈欧米その他 編〉
4章 それでも東京は世界最高レベルの都市である
5章 国境は君の中にある
特別章 ヤマザキマリ×堀江貴文
[対談]ブラック労働で辛い日本人も、無職でお気楽なイタリア人も、みんなどこにでも行ける件
おわりに