プロの研究者になるために必要な素養とは?進路に迷っている人が「自分が研究に向いているか向いていないか」を判断するためのチェックリスト10項目

大学院博士課程進学などの進路を決めるにあたって、自分は研究者になれるだろうか?研究者に向いているだろうか?と悩む人は多い思います。プロの研究者になるために絶対に必要な素養とは、何でしょうか?進路を迷っている人の参考になりそうなアドバイスをまとめました。

0.大学までの勉強と、大学院における研究との違いを理解できているか?

教科書から学ぶ立場だったのが、教科書に新たな1行を書き足す立場にまわるのだという自覚が、まず必要です。

学生実験は「上手くいくのが普通」、研究は「上手くいかないのが普通」。つまり、毎日毎日、朝から晩まで、失敗を重ね続けることになる。当然、失敗を糧に して改良・改善をするけどね、そう簡単にはいかない。マジで精神的に参ってしまうのでは、と思ってしまう。このプロセスに馴染めない学生は、研究をやるのに向いていない。(成績は優秀だが「研究に向いていない」学生のタイプ JCAST 会社ウォッチ 2015/1/16

博士に必要なことは未解決の課題に挑戦して、失敗を重ねるうちにこうすれば良いという解決方法を見つけることです。それを論文にして発表させる、というの が私の教育法でした。博士は失敗の連続に耐えられる強さを持っていないといけません。研究は失敗するのが当たり前だからです。 (JST Science Portalインタビュー 「大学はもっと元気を 政府に言うべきことはきちんと」第2回「博士の育成・就職は教授の責任」元総合科学技術会議議員、元東北大学総長 阿部博之 氏)

1.良いメンターを見つけられるか?

本人の能力がどれほどあったとしても、それを発揮し、伸ばす環境に恵まれないと研究者としての成功はおぼつきません。

優れた(自然科学系の)研究者になるにはどうしたらよいか? … 結局は,かの久保田競先生が10年以上前に書いた次の一文に全てが集約されている(久保田競編 『脳の謎を解く』(朝日文庫,1995)より抜粋)。 よい指導者の大学院へ進んで院生になり,研究の訓練,指導を受けて,よい学位論文を書いて発表することです。これがよい脳研究者になる一番の近道です。しかも,唯一の道といってもよいほどで,他の道は限られています。よい指導者ではない脳研究者の大学院生となって指導を受けて,よい研究者になれる確率はほ とんどありません。 … この文章は「優れた脳研究者になるには?」というタイトルの文章中の一節だが,脳研究者に限らず,自然科学系研究者に広く通じるものである。 よい指導者の大学院へ行って,よい指導を受けること。 要するにこれダケである。(脳科学者はかく稽ふ 【07/11/25】優れた研究者になるには)

2.人一倍強い好奇心があるか?

やはり第一条件は好奇心旺盛だということでしょう。あとは根詰めて考える力や簡単にはあきらめない粘り強さが必要。それは、普段まじめに勉強することである程度身に付くと思います。あとは、コミュニケーションの 能力もかなり必要ですね。問題はそこからうまく閃いてくれるかどうかという所なのだけれども、そこはコミュニケーションをたくさん積み重ねることで出てく るものだと思います。資質というよりは訓練して身につけるという感じがありますね。 (学生必見!! 東大教授の素顔に迫る!~野本 憲一教授 天文学専攻 専門:宇宙化学進化論)

私が研究者に必要だと考える資質はたったひとつです。それは、「まだこの世界のだれも知らないことを、自分の手で明らかにしたい」という欲求です。これを備えた学生であれば、研究室に入りたての時に多少論文読むのが下手くそでも、当初与えられたテーマをぜんぜん自分のものにできていなくても、指導者の力次第で、「研究によって新たな発見をし、それを発表する」ことを自力でできるレベルまで持っていけると考えています。 (自分は研究者に向いていない? 〜研究者に必要な資質とは〜 つなぽんのブログ 生物学者♀のたまごつなぽんのポスドク日記。2016-03-05)

3.自分の頭を使ってものを考えているか?

自分自身でモノを考える力 これさえあれば後に述べる資質は全て時間の経過と共に身につきます。修士と博士を分ける境界はここにしかないと考えています。この力がないと、どこかで研究者として行き詰まります。 (大学の研究者になりたい人たちへ 暮標 2015年2月21日)

4.コミュニケーションの大切さを理解しているか?

一人前の研究者になるために必須、と考えるのはディスカッションの力だ。人とディスカッショ ンをすることで、 自分の論理は正しいのか、どんな修正が必要なのかを明らかにできる。(国立遺伝学研究所 教員インタビュー 荒木 弘之 教授)

研究は独力で進展するものではありません。実験研究や製品の開発研究では共同研究者たちと一緒に研究したり、チームを作ってシステマティックに進めたりし ます。ひとり黙々と頭の中で考える理論研究でさえ、他の研究者と多面的な議論をすることは研究を深化させるのに役立ちます。理論家と実験家のコラボがとて も重要で、その成果の論文が高く評価されます。どんな種類の研究でも、指導者、助言者、先輩、同僚、共同研究者、後輩、部下、学生、ときには競争相手などとの付き合いは不可欠です。その良否が研究の成否を決めると言っても過言ではありません。(ブルーバックス 研究者としてうまくやっていくには 長谷川修司)

5.競争に勝つマインドを持っているか?

サイエンスというのは、最初に発見した者だけが勝利者なんです。発見というのは、一回だけしか起こらない。同じものをもう一度見つけても、発見とはいわな いんです。一ヶ月のちがいでも、一週間のちがいでも、早い方だけが発見なんです。サイエンスでは二度目の発見なんて、意味がない。ゼロです。だから競争は熾烈です。(精神と物質 立花隆 x 利根川進)

6.頑張ってしまわないか?

強い意思を持って困難に当たるというような力の入ったことでは、遅かれ早かれいずれ力尽きる。むしろ、なによりも研究が好きで、客観的には大変な困難な道を歩いているように見えても、本人はそれを困難だと感じないというぐらいでなければ続かない。(研究者になるには Taka Matsubara, Nagoya Univ.)

7.研究に没入し、解決すべき問題に集中し続けることができるか?

If I have ever made any valuable discoveries, it has been owing more to patient attention, than to any other talent. (Isaac Newton)

「朝起きた時に,きょうも一日数学をやるぞと思ってるようでは,とてもものにならない。数学を考えながら,いつのまにか眠り,朝,目が覚めたときは既に数学の世界に入っていなければならない。」(佐藤幹夫)数学は体力だ!木村 達雄

起きている時間は、ほとんど全部、科学のことを考えています。九時から五時までの職業とは違いますから。科学者として成功するためには、本当に、時間のある限り考えぬいて、眠っているときにさえ、無意識のうちに問題に挑み続けていることを願わなくてはなりません。答えが出るまで、まるで獲物に食いついて放さないテリアのようなものです。これは、人を完全に没頭させる、一日二四時間の職業です。 マイケル・バーリッジ (細胞生物学者) の言葉『科学者の熱い心―その知られざる素顔』[pp.276-277] より (「気ままに有機化学」「気ままに創薬化学」

本当に職業として研究者を続けいけるかどうかは、能力ではなく、性質によると思う。それは、世間で何が起こっていようと、寝ても覚めても1つのこと(自分の研究)を脇目もふらず考え続けることが出来るような性質である。…論文を書いている時、実験をしている時、テーマを練っている時。あなたはそのことだけに思いっきりワクワクして、本気でのめり込んでいるだろうか?それとも他のことに思いを巡らしてしまっていないか? …必須の原動力は研究そのものである。 研究者に向いている人・向いていない人 On Verge of Own Goal 2013年1月19日

8.職業選択に迷いはないか?

悩む人はもうそれだけで「向いていません」。米国の指揮者・作曲家の故レナード・バーンスタインがおっしゃっていました。わたしはよく 「私は音楽家になれるでしょうか?」と聞かれます。私の答えはいつも誰に対しても即座に「駄目です」です。…音楽家は好きや嫌い、なれるかなれないかに悩むものではありません。他になるものがあるなどということを考えつかない者がなるものです。芸術家はみんなそういうものですが、研究者も芸術家と同じです。 (研究者に向いている?向いていない? 教えて!goo)

9.正念場で頑張れるだけの体力はあるか?

ひとつの問題を検証するのに昔はわずかなことを確認すれば良かったのが、今は膨大な情報の中からあらゆる可能性をさぐり、テストしなければ論文にならなくなった。1報の論文を書くのに以前と比べて10倍くらいの時間を使わないといけないんです。しかも、電子化によってサプリメンタルデータを付けなければならなくなり、論文全体としてより高い 完璧性が要求されます。技術が進歩して昔できなかったこともできるので、やれることはすべてやりなさいというわけですね。論文を書き上げた後も、レビュ ワーから1論文に対して5-6ページくらいの追加実験リストが送られてくることが珍しくない。難しいジャーナルほどそのリクエストが多く、全部こなすには まさに飲まず食わずで実験しないといけません。ですから、論文1つ出版するのにもの凄いエネルギーがいるんです。頑張れる人だけが達成できる。頭脳だけで はどうしようもなく肉体労働ですね。 (トムソン・ロイター 研究者インタビュー 細胞のメカニズム解明から医療へ。発生・再生科学の今  理化学研究所 発生・再生科学総合研究センター センター長 竹市雅俊氏)