データ・ドリブンと人間中心設計ドリブンを対比させた表をアナリストやHCDをやっている仲間と議論しながらつくってみました。
結論からすると、両方必要だよね。というのは、みなさんの考えの及ぶところだと思います。では、なんで、こんな事を整理するが必要があったのかというと、実は、私自身がある件で相談したアナリストの同僚から「こういうデータが出ました。というのだと全然足りなくて、何をすればいいのかアクションが取れるところまで落とし込まないとアナリストとしての成果にならないよね」という話になりました。意思決定に役立つ分析をするのがアナリストの仕事ですが、実際成果として認められるのは、施策を考え実行されるところまで持っていくことなのです。これは私もすごく同意するところでした。
ただ、自分自身で振り返って考えてみたときに、どうもモヤッとしたポイントがありました。それは、自分の仕事の仕方として具体案まで落し込みまでを行うときと、敢えて具体案まで落とし込まない場合とが、実際は混在しているという事でした。そのため、実は本当の問題は、そのバランスや、進め方が現状にあっているかどうかの見極めに対しての明確なロジックがなかったことだと気が付きました。そして、自分が感じるズレは常に意識しながら調整をしているつもりでしたが、根本的な課題は見えているようで見えていないように感じたのです。
そこで、実はこう思ってるのは自分だけではないのでは?という想いもあったので、同じような職種のメンバーとちょっと議論してみました。そしたら、思った以上に異論や共感を得ることができました。上の表は、その時の内容をベースに最終的に私自身で調整してみたものです。違和感のあるところもあるかもしれませんが、議論して深められるきっかけになれば良いなと思っています。
人間中心設計ドリブンは数値に現れない部分を含めたビジョンに貢献するという割り切りが必要
議論を通じて私なりに理解できたことの一つは、最終的にデータ・ドリブンは数値成果につながるのに対して、人間中心設計ドリブンは数値に現れない部分を含めたビジョンに貢献するという割り切りも必要だということです。もちろん、人間中心設計で事業の数値成果を追わないということはないのですが、一つ一つの内容は、数値に簡単に反映されないものも多くあるのも現実です。ビジョンに貢献するような事をやっていった結果、漢方薬のように効いてきて、最終的に事業成果に反映されるというものだ、という割切った認識が時には必要です。トヨタのクルマづくりへの姿勢として、数値以上のものを追い求めているという話を読むと共感できるものがあります。
…こんなものだろう』と思われてはいけない。そのためには我々が魂を込めて、コンピュータでははじき出せないレベルの気持ちのいいクルマを作ることが必要なんです。
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トップダウンとボトムアップの効用、施策評価の難しさを理解しておく
データ・ドリブンの良い所は、具体的にこれをやれば数値が上がるということが見えやすいということにあります。上流工程がうまく機能していてPDCAを回すことができれば、開発チームはその施策を専念するだけで、最終的に数値がよくなり、分析者も開発チームも評価が得られやすいということです。ただこの流れを運用のなかで効率化をすすめて、数値ばかりを追い求めていくと、数値に反映されないが大切な事の優先度があがりづらくなってしまいます。また、流れ的にトップダウンになりやすく、施策がズレたり本質的ではない対応が増えると、それが開発チームの雰囲気に影響を及ぼしてしまうということもあります。
一方、人間中心設計の良い所は、人にとって価値があり解決すべき課題を定義するところなので、課題を解決するために必要なものの優先度をあげやすいということです。また、デザイン思考やデザインスプリントなどの手法を実施するので、上流から開発チーム全員が参加していくスタイルになります。その結果、ボトムアップでより新しい解決法が出てきたり、チームの雰囲気も自走感がでてきたりします。そのかわり、ユーザー体験ということ自体の評価が難しいため、施策評価やチームの評価が難しい場合もあります。例えば、たとえ使い勝手が向上していたとしても、それがそのままストアレビューに反映されるかというと、そんな単純な場合ではないことも多いのです。そういったレビューを上げるためには、使い勝手をあげるという1施策以外にも対応をしないと上がらないことも多く、この施策で成果でました!なんていうカタチが作りづらいのです。逆にそういう形の成果であれば、データドリブンのアプローチの中で一部、不明点をユーザーテストや観察を組み合わせて使うというアプローチが望ましいわけです。
データドリブンと人間中心設計の流れが交錯しているからこそ整理して見極める
こうやって整理して、よくわかってくるのは、データドリブンと人間中心設計の流れがすでに交錯しているということです。例えば、アナリストの最近のながれはカスタマージャーニーマップを使ってGAの分析を行うことであったり、コンセプトダイアグラムをワークショップにて、まとめるなどと言った活動が目立つようになってきています。データドリブンを標榜してきた人達に、人間中心設計の手法がマージし始めています。一方、人間中心設計の方は、過去数年ずっと事業の中でより成果として通じるように、サービスデザインの考えと取り込む流れがあったり、体験を数値化する手法が強くなっていたり、いかに人間中心を戦略にもってくるのかといったことに焦点が向いてきています。
今回この対比表を議論しながらつくったことで、より自分達が何をやろうとしているのかどういう立ち位置であればよいのか、一つ整理することに役立った気がしています。私達がつくったものが正解ではないかもしれませんが、こうやって現場で対比させて議論すること理解が深まり、次へ発展に結びついていくのではないかと期待をしています。
今回は偉い真面目な話になってしまいました(笑)
ではでは。