動物から人間 指針、一部緩和
厚生労働省の研究班 糖尿病患者にブタの膵島、現実味
動物の臓器や細胞を人間に移植する「異種移植」について、厚生労働省の研究班が、移植後の感染症を防ぐための指針をブタの細胞などに限って一部緩和する。国内では糖尿病患者にブタの膵島(すいとう)を移植する計画があるが、現指針では移植を受けた患者が未知の感染症にかかるリスクが否定できないとして、事実上、実施できなかった。指針改定で異種移植が現実味を帯びる。新指針案は近く厚労省の審議会部会に報告される。
これまで国内で人への異種移植が行われた例はない。ドナー不足で人から人への臓器移植が進まない中、研究者の間では異種移植が解決策の一つになり得るとの期待が大きい。
一方、ブタの進化の過程で遺伝子に組み込まれた「レトロウイルス」が移植後に患者に感染し、悪影響を及ぼしかねないとの指摘もある。2001年度に厚労省研究班がまとめた「異種移植に伴う感染症問題に関する指針」では、「未知の感染症の発生が起こらないことを保証できる段階になく、予測困難な問題が残されている」として、移植した際には生涯にわたる経過観察を課すなど厳重な管理を求め、これがハードルとなって事実上、実施できなかった。
しかし、この間に海外でブタの膵島を人間へ移植する臨床研究が始まり、国際学会でもレトロウイルスの人への感染例がないことが確認されている。こうした現状を受け、研究班は「研究の進展に指針が追いついていない」として、指針からブタのレトロウイルスに関する感染リスクの記述を削除する方針だ。【五十嵐和大】