以前の記事「宝さんの公開サイト診断を始めました。」の通り、アルケーでは現在、宝さんのサイト改善のサポートをしています。今回は第1回目として、最初に打ち合わせを行った2016年2月から約1ヶ月後の3月上旬までに実施した作業のレポートをしたいと思います。

【対象サイト】
便秘解消プロジェクト
元薬剤師のタカラさんが、便秘で悩んでいる人に自身の知識、経験を踏まえて便秘解消法をわかりやすく紹介するサイト
※3月以降もサイト構造の変更やコンテンツの開発などを行っていますので、本サイトは随時更新される可能性があることをご了承ください。
行動力のあるアフィリエイターの特徴
宝さんのような経験豊富なアフィリエイターは、サイトの企画段階から運用、マネタイズまでを一気通貫してイメージし、そして実践に移すことができるスキルと行動力が最大の強みだと思います。
一方で、それを複数のメンバーや組織で行なっていこうとすると、自分の頭の中にあるイメージを他の人と共有しなければならず、コミュニケーションロスを起こしたり、作業スピードが著しく低下することがあります。
そのため、私は言語化できるものは言語化し、見える化できるものは見える化し、お互いの共通言語でやり取りしたほうがよいのではないかということで、これまでいろいろと思考錯誤してきました。
今回の宝さんのサイトは初めに見せてもらった段階で、ある程度の完成形となっていました。しかし、これからさらに拡張しながら運用していくためには、この「共通言語」が必要だと思いました。そこで、作業工程が前後してしまいますが、リサーチフェーズに戻り、宝さんがイメージしていることを明確にし、過不足があれば補強する作業を行ってもらうことにしました。
この作業は一見、面倒に思われるし、やらなくても大丈夫じゃないか?と思われることがあります。しかし、実際にやってみるとサイト構築段階だけでなく、サイトを運用してからも指針となるため、フィードバックをしやすいというメリットがあります。これまで同じように実践してきた方も「視野が拡がり、事前にリサーチを徹底してやって良かった」とおっしゃいます。
また、この事例を通じて、一つのひな型ができますので、今後新たにサイトを構築しようと思ったときに、スムーズに開発を行うことができるという副次的な効果も期待できます。
最初の1ヶ月で行ったことを順に説明
サイトを公開した後に、リサーチに戻ることになりましたので、地味な作業が延々と続きました。ここでは宝さんが実際に行った、それぞれの項目を下記の流れでご紹介します。
「現状把握」→「宝さんのやりがい・行動特性」→「課題抽出」→「対策事項」→「今後の展開(予定)」
所々、宝さんから提供してもらったレポート・感想を交えながら、順を追って説明していきましょう。
現状把握
まず2月上旬時点のサイト状況をおさらいしておきましょう。
「便秘で困っている人を一人でも救う」というサイトコンセプトのもと、元薬剤師の宝さんが専門的な知識をベースにわかりやすく便秘の解消法を届けるサイト。
- 記事数は55ページ、記事ページが並列のサイト構造
- SEOで100位圏外であった「便秘解消」「便秘」といったワード群が、アルケーのインタビュー記事で公開後、ソーシャルメディア上での露出が増え、「便秘解消」21位、「便秘」78位まで上昇
当初、収益化(マネタイズ)を意識せず、純粋に宝さんの想いが詰まったサイトを運営しくということでスタートしました。打ち合わせで検討していく過程で、このサイトからしっかりとした収益を上げることができれば、サイトの運営により専念できるということで、「サイトコンセプトの根幹を崩すことなく、骨太のサイトを構築していきたい」という方針になりました。
宝さんのやりがいと行動特性
- 自分の興味・関心に強いやりがいを見出し、情熱を注ぐことができる
- 行動力と熱量がありフットワークが軽い
- やりたいことが次々と出てきて迷ってしまうことがある
課題抽出
サイトを確認しながら打ち合わせを進め、現時点の課題として、大きく5つピックアップしました。
宝さんのサイトの課題 (2016年2月時点) |
(1) 元薬剤師という切り口や、宝さんオリジナルのレシピなど独自性はあるのに、情報の網羅性が乏しい |
(2) サイトが並列構造となっていて、記事を追加するに連れて、サイドメニューがどんどん膨れ上がっていく |
(3) ある程度の完成形になっているため、今後コンテンツを追加しく場合、どのように拡張していくかという方針が明確になっていない |
(4) 当初マネタイズを意識していなかったため、目標金額の設定やその金額をどうしたら稼げるのか?といった具体的なイメージができていない |
(5) 一方、マネタイズを意識しはじめると、成果を上げたいという思惑が反映され、サイトコンセプトを崩しかねない |
対策事項
上記の課題をクリアしつつ、今後2年、3年と宝さんの名刺代わりとなるサイトを構築するために、サイト構築の戦略領域から見直しを行うことにしました。
具体的には、「どんな情報コンテンツが不足しているの?」「サイドメニューが膨れ上がらないために、どういうサイト構造にすればいいの?」「収益化はどうやってするの?」といった部分。
サイト設計の企画やリサーチ段階で、私も行っている「ビジネスモデルキャンバス」「キーワードリサーチ」「カスタマージャーニー」といったツールを活用しながら分析してもらいました。その他、宝さんの強みや弱みの分析、競合サイトの分析なども並行して実施しましたが、ここでは割愛します。
ビジネスモデルキャンバス
「ビジネスモデルキャンバス」とは、ビジネスモデルを9つの構築ブロックに分けて、俯瞰的にビジネスを捉えるためのツールです。サイトを運営し、アフィリエイトで収益を上げるのも一つのビジネスモデルですので、この図で表すことができます。
ビジネスモデルキャンバス
宝さんはこれまでアフィリエイトの経験があり、アフィリエイトのビジネスモデルについては熟知されています。今回は新しいテーマでのサイト構築ということで、9つの構築ブロックの中の「VP(価値提案)」「CS(顧客セグメント)」「RS(収益の流れ)」について、重点的に分析してもらいました。その3つの観点について、ざっくりとまとめてご紹介します。
VP(価値提案) |
元薬剤師の宝さんが便秘に関する情報をわかりやすく提供する |
根本的な便秘解消法を提供する |
自身の便秘体験談や奥様の妊娠体験談といった事例を交える |
CS(顧客セグメント) |
便秘に悩んでいる人 |
性別、年齢 |
症状別 |
RS(収益の流れ) |
ASP商品のアフィリエイト広告 |
純広告 |
企業とのタイアップ広告 |
「RS(収益の流れ)」のASP商品のアフィリエイト広告については、サイトからの収益化を考える上で、とても重要な領域です。
「1件成約当たりの報酬単価」「アフィリエイトタグクリックからの成約率(CVR)」「サイト訪問者のアフィリエイトタグ必要クリック数」をわかる範囲で調査します。それから、設定した目標金額から逆算で、どういったユーザーにどのくらい訪問してもらいたいのかといった項目を数値化しながら、イメージしていきます。
★宝さんの感想
このサイトでは一旦マネタイズに関しては見ないようにしていたのですが、最初にマネタイズを考えるところに新鮮さを感じました。
この新鮮さとは「やりたい仕事をしながらマネタイズもできるなら素敵ですよね!」という感覚です。
打ち合わせのとき、狙うキーワードを考えるところや、どうやったら目標金額まで達成できるかを逆算して考えるという思考が、今まで自分がやってきたのと明らかに違いました。
これまでは特定のキーワードが検索エンジンで上位表示されてから、収益化を考えるという発想をしていたのですが、最初からアクセスが誘導できる前提で、その後のことまで考えて設計するというやり方が斬新でした。(宝)
キーワードマップ
Googleキーワードプランナー、Googleのサジェストワードを抽出するツールなどのオンラインツールや、宝さんがこれまで培った知識やオフラインでの情報をベースに、市場をキーワードで表現します。ここでは「XMind」というフリーのマインドマップソフトを使って、「便秘解消」に関連するキーワードを放射線状に整理しています。
宝さんが作成したキーワードマップ「便秘解消」
このようにまとめることで、「便秘解消」を上位概念とした場合、周辺にどのような情報のかたまりやユーザーのニーズがあるのかを視覚的に把握することができます。
★宝さんの感想
これまでサイトをたくさん作ってきましたが、ここまで丁寧にキーワードマッピングをしたのは初めてでした。
今までは「○○」というキーワードでSEOで上位表示するために、そのキーワードの周辺情報や時間軸をずらした情報をコンテンツとして作っていくというやり方でした。
市場のキーワードマップはまさに自分のサイトの市場全体なので、これまでの視点より二層、三層くらい上から俯瞰する視点が必要だと思いました。
見よう見まねでマインドマップを作っていきましたが、情報の上位、下位の概念で階層化し整理することができ、頭の中がどんどんスッキリしていく感覚を得られました。(宝)
カスタマージャーニー
「カスタマージャーニー」とは、顧客セグメント(対象ユーザー)が、サイトに訪問し、どのような情報に関心を持ち、どういった行動をするのかといった一連のプロセスのことです。この考え方を用いて、時系列でユーザーのモチベーション変化を可視化して分析します。
ここでは、宝さんのサイトで、便秘解消の情報を提供していく上で、どうった便秘の悩みを抱えている人がいるのか、どういった情報や商品を必要としているのかをまとめてもらいました。
「妊婦の便秘」カスタマージャーニー(一部)
上図は、便秘で悩んでいる妊婦さんのカスターマージャーニーの一例です。その他にもユーザー像を設定し、「認知」「情報収集」「比較検討」「購入・行動」といった時系列で、それぞれの状況やユーザーマインドを想定しながら分析しました。
その結果、「便秘の悩み」と一言では言い表せないような、対象者や症状、悩みが見えてきました。
★宝さんの感想
カスタマージャーニーを使った分析では、対象となるユーザーの一人ひとりの認知から購入までの感情や不安、ニーズを想定しながらプロットしてみました。
実際にやってみると、同じユーザーへのアプローチでも、かなり奥行きがあるということがわかってきました。
今までは、商品を購入する直前のユーザーが検索するであろうキーワードをメインワードとして、いかにSEOで上位に表示させるかということに力を注いでいました。しかし、サイトコンセプトを大切に運用するために、その前の認知状態のユーザーに対しても適切に情報を提供していこうと思いました。
また、同じ検索キーワードでも、置かれている状況や知りたいことが異なる場合もあり、これまでの一辺倒の訴求は、かなり的外れであったのではないかと気付きました。この点につきましては、まだ気付いたという段階であり、これからもその視点を磨いていきたいと思います。(宝)
今後の展開
以上のように、最初の1ヶ月間は地味な作業ではありましたが、今後サイトを継続的に運用できる土台作りということで、「便秘解消」を上位概念においた企画、リサーチ分析を実施しました。
この作業は実質、宝さんがすべてを担当し実践していただきましたが、進行状況を傍で見ていたら、宝さんのサイトで、どのような人たちに、どのような情報を、どういったタイミングで提供するのか、そしてそのために何をすればよいのかといった方針がどんどん明確になっていく様を見ることができました。
次の工程(3月中旬以降)は、この放射線状にピックアップされたキーワード群を対象ユーザーにわかりやすく伝えるために、サイト構造に落とし込んでいく作業に取り掛かります。具体的な項目としては下記の通りです。
次工程の課題と作業項目 |
サイト構造を現在の並列構造からカテゴリ構造へ骨格矯正を行う |
不足コンテンツの洗い出し、新たな企画コンテンツを立案する |
宝さんのサイトにおけるマネタイズポイントへ自然な形で誘導できるようにファネル構造を設計する |
おわりに
サイト設計や運用方法には、これといった正解はありませんので、実際にうまくいくかどうかわかりません。
しかし、このように一歩一歩、着実に、宝さんとプロジェクト関係者が情報交換をしながら、その内容を履歴として残しています。仮にうまくいかないことがあったとしても、どこがうまくいかなかったのかを分析できたり、軌道修正するためにどうすればいいのか、といったことを検討できるのではないかと考えています。
サイトそれぞれに特徴があり、やり方も千差万別ですので、参考になる部分があったかどうかわかりませんが、このレポートを通じて、少しでもお役に立つことがあればうれしく思います。
また次回、2ヶ月目以降の作業内容を公開サイト診断の進捗レポートとしてお伝えいたします。
最後に、公開サイト診断から1ヶ月が経過したときに宝さんから届いた感想をご紹介します。
★宝さんの感想
公開サイト診断を受けてから1ヶ月間の心境の変化は、率直にサイトの広がりについて光が見えた感じがしました。
サイトは並列構造でどんどんコンテンツを作っていってたので、自分でも今後記事を追加していくとサイドメニューが大きくなっていくという問題があるのを感じていました。
情報を整理して、階層化しながらサイトを作り込むことで、今の入口よりもっと大きな入口になる感覚が得られました。
今まではサイトを作るときに、SEOでキーワードが上がってから考えるというアプローチだったため、上がらなかったらどうしようって不安でした。
でも打ち合わせのときに、アドバイスしてくれる全員がアクセスが来ないなんて微塵も考えてなくて、その姿に僕も乗っかって、「できないかも?」とネガティブ考えはふっとんでいきました。
実際に今、作業を継続して行なっていますが、これまでのサイト制作では考えられないくらい記事数を書いています。しかも、嫌々ではなく、便秘で悩んでいる方ってこういう情報を求めているよなって感じで、その人をイメージして語り掛けるように記事が書けています。
こうして作業をこなせている理由の一つには、キーワードマップが見えていて、小さな完成のゴールが目の前にあることと、みなさんに見守られている適度なプレッシャー(汗)がいいいのかもしれません(笑)。(宝)