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ママさん保安官が目指すワークライフバランス

海保の「女性活躍・ワークライフバランス推進本部」の事務局長に就任した蓮見由絵・人事課人事企画調整官(右)と広報室に配属された灘波陽子課長補佐=東京都千代田区の海上保安庁で2016年4月5日午後、米田堅持撮影

 海上保安庁は、女性の登用を推進するため、4月から「女性活躍・ワークライフバランス推進本部」(本部長・花角英世次長)の事務局長に蓮見由絵・人事課人事企画調整官(43)を配属した。同時に広報室に配属された灘波陽子課長補佐(44)とともに、子育て中の海上保安官が働きやすい環境になるよう日夜奮闘している。【米田堅持】

全国転勤というハードル

 2人は海上保安大学校を卒業した幹部候補だ。女性であっても、全国転勤は避けて通れず、さまざまな事情から結婚後に辞めるケースが相次いだ。慢性的に人員不足と言われる海保にとって、せっかく育てた人材が辞めることは男女問わず大きな損失だ。このため、辞めた海上保安官を再採用したり、定年延長したりするなど施策と並行して、出産や育児をしながらでも辞めずにキャリアを重ねられるような方策を模索している。

 蓮見さんも当初は「結婚はしたけれど、海保にいる限りは子供は無理だと思っていた」という。しかし、神戸海上保安部で巡視艇うらなみの船長を務めていた時に、子育てと両立させている海上保安学校出身のママさん保安官たちを見て「(自分も)できるかもしれない」と思った。さらに、育児休暇取得が1年から3年に延長されたことも背中を押した。蓮見さんは現在、9歳と7歳の娘を同庁海洋情報部に勤務する夫とともに育てている。

個別で異なるニーズ

 蓮見さんは、長女の育休中に2人目の子供の妊娠がわかり、あわせて約3年8カ月の育休を取得した。制度上は5年以上の育休を取得できるが、職場を長く離れると復帰が難しくなると考え、代わりに夫が1年の育休を取得することで期間を短縮した。また、4人の妹をはじめとする家族のサポートや、職場の支援にも助けられたことも辞めずに続けられた大きな要因となった。

 一方、灘波さんはヘリコプターの機長という特殊技能を持っているので、早期の復職を望む声が強かったことや本人の希望もあり、育児休暇は4カ月と短めだった。海保には約800人の女性海上保安官が在籍しているが、家庭や職場ごとに個別の事情があり、きめ細かな対応が仕事を続ける上では不可欠だという。

 「女性職員の数だけ対応策が作れたら理想だが、できることには限界があるし、子供の成長度合いによってニーズも変わる。まずは、今の制度がきちんと機能するように『魂』を入れるのが私の仕事」と蓮見さんは話す。

ママの単身赴任

 単身赴任といえば男性という「既成概念」がある中、灘波さんは夫に子供を託して単身赴任中だ。しかし、8歳の息子のことを忘れたことはない。函館航空基地で飛行長を務めていた当時、通勤用の車に、いつ子供が来ても一緒に外で遊べるようにと、ボールや虫かご、網などを積んでいた。息子は「お母さんが単身赴任しているのはうちだけなんだよ! かっこいいやろ!」と級友に自慢していたことを聞き、家族あっての自分であることを実感したという。

 人事面も含めた職場の助けもあって、女性海上保安官の労働環境の改善は進んでいるが、職場の外には「育児は女性」という既成概念の壁があるという。蓮見さんは「既成概念がかなりの難敵。夫や親戚たちも含めた家族に、子育ては男女問わずに関わるという意識がないと、仕事を続けながらの育児は難しい」とも語る。

 女性海上保安官は、歴史が浅いことや過半数が20代ということもあって、現在のポストは署長止まりだ。本部長など枢要なポストに女性が継続的に登用されるようになるかは、ワークライフバランス対策を担う2人のママさん保安官の手腕にかかっている。

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