遥か昔、熊本へ出張に言って来た時、さすが天下のクマモンのいる熊本。駅でナンパしてる人がたくさんいた。僕はもうすでにおじさん。ナンパする体力も勇気もすでに無い。
僕はいろいろな人がいるなーとナンパしている人とナンパされている人を観察していた。ナンパのうまい人はちょろっと現れて女の子を連れだしていくし、ナンパの下手な人は何度も何度も断られていた。いわゆるナンパ待ちって人は見たら大体わかる。それを見抜けるか見抜けないかがやはりナンパ慣れしているかしていないかの差なのかなぁなんて思ってぼんやりと体育座りをしながら眺めていた。
夜もだいぶ更けた頃、僕はナンパして断られた人に声を掛けてみた。
僕「ねぇねぇ、君たち僕と飲みに行かない?」
ナンパ集団「は?何言ってんのおじさん」
僕「うん。たぶんさっき君たちがナンパしてた人も同じ事を思ったと思うよ」
ナンパ集団「はぁ???喧嘩売ってんのかよお前」
僕「いやいや誤解しないで。喧嘩売ってるわけじゃないよ。ただ、自分がされて嫌なことを相手にしてるのは滑稽だなぁと思ってね」
ナンパ集団「ふざけんなよ、この野郎」
僕「気分を害したのなら謝るよ。申し訳ない」
ナンパ集団「おい、こんな頭のおかしい奴ほっとこうぜ」
そう言い残し、おそらく20代であろうナンパ集団は去って行った。ふむ、頭がおかしいとは心外だな。僕はただ少しは相手の気持ちもわかって欲しいと思っての親切心からの行動だったんだが、伝わらなかったらしい。
ナンパいいのはナンパされる覚悟のある奴だけだ
BY味のり・ジ・ブリタニア
そんなくだらない事を考えているとふと話しかけられる。
見知らぬ男「ねぇ、お兄さん。ナンパしてるって事は暇なの?」
僕「うーん。どちらかと言えば確かに暇ですね」
見知らぬ男・・・書くのがめんどくさいので以後クマモンと呼ぶ。クマモンが何やらこちらをじっと見ている。
クマモン「俺、もう少しでバイト終わるんでもしよったらドライブ行きません?」
何とこのクマモン。さえないおっさんの僕にナンパしてきやがった。これが逆ナンパというやつか。仕方ない。受けて立とうじゃないか。
僕「いいですよ。じゃあそれまでここら辺をぶらぶらしてるので終わったら声を掛けて下さい」
そう言って、僕はしばらくの間スマホをいじりながら時間が経つのを待ち、彼のバイトが終わった後、彼の車でドライブに行った。
彼が連れて行ってくれたのは夜の熊本城。
さすがクマモン。熊本城をチョイスするあたり熊本愛を持っているね。彼は僕に年齢や名前、なぜアルバイトをしているのかや、将来の夢を熱く語ってくれた。正直なぜ初対面の僕にそんな話をするのかはわからなかったが、もしかしたら大学卒業後、夢を追いかけながらアルバイト生活をしているのせいで孤独なのかもしれない。話し相手を探していたのかもしれないと僕は彼の話しをただただ聞いていた。名前を聞かれたので「江戸 紫です。あだ名は味のりです」と答えたら、爆笑していた。
夜のドライブデートが終わり、夜の熊本駅に再び戻って来た
終電の後の駅は何だかとても寂しげだ。僕たちは記念に写真を撮ろうと通りすがりのお姉さんにお願いして写真を撮ってもらった。僕はお姉さんに「今日が付き合って1年の記念日なんですよ~」と言ったらドン引きされた。あまりにも引かれていたので、冗談ですと中々言い出せず誤解を解かないままにする事にした。
僕たちはその後、何かあったらまた会いましょうと約束し別れた。一応メールアドレスも交換しておいた。
次の日僕は電車の中でくまんどんのおてもやん弁当というよく分からない名前のお弁当を食べながら昨夜のことを思い出していた。
熊本ラーメン美味しかったな・・・と