「うそで情報開示拒否」遺族が道警提訴へ
1979年に北海道遠軽町で失踪後、89年に遺体となって発見され、身元不明のまま無縁墓地に埋葬された男性の妹が、道警から虚偽の理由で捜査資料の開示を拒まれたとして、道に慰謝料110万円の支払いを求める訴訟を31日、札幌地裁に起こすことが分かった。
訴えるのは名古屋市の会社役員、鈴木泉さん(48)。代理人によると、鈴木さんは、2000年以降、兄が北朝鮮に拉致された可能性があるとして道警に捜査を要請。埋葬されていた身元不明の遺体が2005年、鈴木さんの兄と判明した。
鈴木さんは07年、「遺骨もないので、せめて兄の最期の状況を知りたい」と道警本部長に捜査状況を開示するよう情報公開請求したが、非開示となり、札幌地裁に開示を求め提訴。訴訟で道警は「捜査手法が公開される」「自殺か他殺か判然とせず、捜査が継続中」などと主張し、結局、鈴木さんの訴えは12年に最高裁で退けられた。
ところが昨年7月、鈴木さんが直接道警本部と遠軽署を訪ねたところ、道警からは「遺体が特定された05年以降、捜査はしていない。事件は終結している」と口頭で告げられたという。
代理人は「情報公開の可否の根拠について道警が虚偽の説明をしたとすれば問題だ」と指摘。鈴木さんは「遺族への情報提供について問い直す機会にもしたい」と話している。
毎日新聞の取材に対し、道警監察官室は訴状を受け取っていないとしてコメントしなかった。【日下部元美】