愛知県と名古屋市、足並みそろわず
2020年のフットサルワールドカップ(W杯)の開催候補地となった愛知県で、名古屋市が大会誘致に消極的な姿勢を示している。県は日本ガイシホール(同市南区)を会場の一つに想定しているが、ホールは市の所有で、市は運営費の負担などを懸念する。また会場候補地として県が改修を計画する県体育館(同市中区)についても、市は城外への移転を求めており、県と市の足並みがそろわない。【山口朋辰、三上剛輝】
日本初のプロチーム「名古屋オーシャンズ」が名古屋市を本拠地とするなど県内はフットサルが盛んで、大村秀章知事が14年、名乗りを上げた。日本サッカー協会(JFA)は県を国内候補地と決め今月22日、国際サッカー連盟(FIFA)に立候補届にあたる意思表明書を提出した。他国の動向は不明で、今年12月のFIFA理事会で開催国が決まるという。
12年のタイW杯では、24チームが18日間で52試合を行った。県は10万〜20万人の観客を見込み、会場は県内3〜6カ所を想定する。県内最大規模の約7000席がある日本ガイシホールは有力候補の一つだ。
「愛知、名古屋から世界に発信できるスポーツ」と熱を帯びる県に対し、市は「誘致に積極的に手を挙げるつもりはない」と、淡泊だ。実際、県は14年11月、市に協力の可否を打診したが、市は昨年1月に一度、断った経緯がある。億単位ともされる大会運営費や、照明の増設など設備投資の負担が消極姿勢の背景にある。また、同ホールはコンサートが頻繁に行われ、市に年約6億円の収入がある。市はW杯会場となった場合の減収を予想し、「県が料金を払って利用するなら構わない」と、つれない。県は運営費の負担割合を調整するなどし市に改めて協力を呼びかけるが、「日本初開催となるビッグイベント。一体となったアピールが必要なのに」と困惑する。
また県は、名古屋城二之丸御殿の跡地にある県体育館(約4300席)も会場に想定し、新年度は約3000万円をかけ基本設計を行う。一方、市は06年の名古屋城跡地の整備計画で、将来的な城外移転の協議を行うとしていた。河村たかし市長は「改修計画は全く知らなかった。困ったもんだ。県には移転を求めていく」と主張。大村知事は「移転候補地などを示さないと議論にすらならない。(W杯誘致への)影響はない」とし、意見が対立している。