『あの人形の左うでを取りに行かないとあなたのうでが無くなるよ』
私は急いで人形の腕を取ろうとする。必死に取ろうとしている。届かない。どうしたって人形の左うでに届かない。やがて、また私は白い霧の中に包まれていく。霧の中で私の左うでに巻かれたオレンジ色の布は蛇に変わった。怖くてたまらない。うでを振りおろし蛇を離そうとする。蛇はなんとか離れ、霧も晴れていく。すると、そのへんにあるカラフルな色の布や紐、細いものがすべて蛇に変わっていた。それらは人形の左うでに向かっていく。
『いや〜!』
私は叫ぶ。
また、声が聞こえる。
『もう大丈夫。あなたの声は届いたよ』
見ると蛇はいなくなっていた。蛇の居ない群青色の中でホッとした私は、でも、まだ動けずにいた。私の左うでに巻かれたオレンジ色の布も無い。下にあったはずの人形の左うでも無くなっていた。
『早く此処から出なければ』
私は遠くに扉をみつけた。どうやってそこまで行ったのかわからないまま、私は扉の前にいた。
『此処から出られる?』
私が扉を開けると同時に声が聞こえた。
『そこは開けちゃダメ。わたしにもたすけられない!』
私の左うでが扉の中にいる何かに掴まれた。つかんだのは誰?わからない。扉の中に引き込まれていく。扉の奥は渦になって黒い霧で覆われている。彼処に呑み込まれたらもうダメだと思った。私は必死にもがく。掴まれた左うでにある指らしきものをひとつひとつはずそうとする。これは夢?夢だよね、夢だよね?
そこで目が覚めた。
「夢で良かった。」心から思った。
左うではもちろん付いていた。
読んでくれた方ありがとう。
かわいいウサギさんで癒されてね。