マイナス金利下の国債市場に不吉な兆候、機能不全の危機に接近
- 「大量に持っているが、売っていない」と富国生命
- 30年債と40年債の利回り水準、薄商いの中で一時逆転
日本銀行による大規模な国債買い入れとマイナス金利政策は、国債市場の機能悪化という副作用をもたらしている。市場では緊張の高まりや不安定さの兆しが増えつつある。
黒田東彦総裁が2%の物価目標を掲げ、潤沢な資金を供給する量的・質的緩和を始めてから約3年が経過。国債市場では日銀の巨額購入による需給の逼迫(ひっぱく)に、2月から始めたマイナス金利政策が拍車を掛けている。今や残存10年以下の国債利回りはゼロ%に届かず、超長期ゾーンでは売り手不在の中でプラス金利の争奪戦が激化している。こうした前例のない金利低下は、黒田総裁にとっては期待通りの展開のようだ。
富国生命保険の鈴木善之資金債券部長は「われわれは大量に持っているが、売っていない」と指摘。保有する国債から「金利収入が得られる。もし売ってしまったら、他に良い代替投資先が見当たらない」と言う。
長期金利の指標となる新発10年物国債利回りは先週、過去最低となるマイナス0.135%を記録。ブルームバーグのデータによると、金利の低下幅は、日銀がマイナス金利政策を導入する前日の2月15日から足元までで20ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)弱と、20年債の約48bp、30年債の約70bp、40年債の約82bpに比べると小さかった。今週の超長期債の取引では、薄商いながら、30年債と40年債の利回りが逆転する場面があった。
日本証券業界協会の統計によると、都市銀行と信託銀行、生損保の国債売買高は昨年11月に合計14.9兆円とデータでさかのぼれる2004年以降で最低を記録。異次元緩和が始まる直前の13年3月から55%減った。マイナス金利政策が始まった2月は15.9兆円と過去2番目の低さにとどまった。
日銀は1月末、金融機関の当座預金の一部に0.1%のマイナス金利を適用すると決定。イールドカーブの起点を押し下げ、巨額の国債購入とともに、金利全般により強い下押し圧力を加える方針だ。3月に発表した2月調査の債券市場サーベイでは、日銀オペに参加している金融機関のうち回答のあった41%が市場機能が低いと回答。「さほど高くない」を含めると、9割以上が市場の機能度低下を指摘した。3カ月前と比べた変化では、「低下した」が69%を占め、改善したとの見方は皆無だった。