今月16日発売の「週刊文春」が、経営コンサルタントのショーンKことショーン・マクドアール川上(47)の“学歴詐称”を報じた。彫りの深い顔立ちと美声を生かし、「報道ステーション」(テレビ朝日)や「とくダネ!」(フジテレビ)、ラジオ番組のパーソナリティー、コメンテーターとして活躍しているショーンK。今回の報道を受け、学歴や経歴に誤りがあったことを認めた上で、当面の活動自粛を発表。4月から放送予定の新ニュース番組「ユアタイム~あなたの時間~」(フジテレビ)で務める予定だったMCも取りやめとなった。
学歴や経歴は、しばしばその人の印象や能力と直結する。そのため、これらの詐称行為は、とりわけ詐欺師が好んで使う手口として知られている。まさかショーンKに限ってそのような人物であるはずはないと信じたいが、古今東西、学歴や経歴を詐称することで人生を変えてきた者は数多くいるのだ(犯罪性の有無にかかわらず)。そこで今回は、ショーンKをはるかに凌ぐ鮮烈な学歴・経歴詐称によって後世にその名を轟かせた人物を4名、厳選して紹介しよう。
■伝説の詐欺師になるため学歴詐称! フランク・アバグネイル
白髪と明るい笑顔が特徴的な、親しみやすそうな米国人フランク・アバグネイル。しかしこの男、過去に学歴や経歴の詐称によってパイロットや医師、弁護士、刑務所職員などになりすまし、人々から金を騙し取り続けた「伝説の詐欺師」である。その強烈すぎる半生を記した自伝的小説『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』は、レオナルド・ディカプリオ主演で2002年に映画化されているため、思い当たる人も多いだろう。
世界26カ国を股にかけて繰り返した小切手詐欺では、16~21歳までの5年間で約40億円を荒稼ぎしたものの、惚れた客室乗務員に正体を暴露したことがキッカケとなり逮捕。その後は投獄を経て更生し、現在はセキュリティ・コンサルタントとして活躍している。騙しの手口を知り尽くしている能力を買われ、FBIなどにも協力しながら、人々を詐欺から守り続ける立場についたというわけだ。
■万能の天才なのに学歴詐称! フェルディナンド・ウォルド・デマラ
まるで声が聞こえてきそうなほど豪快な笑顔を見せる恰幅の良い米国人、フェルディナンド・ウォルド・デマラ(1921~1982)。この男の別名は、ズバリ「世界一多忙な詐欺師」。それはなぜか? なんとこの男、医師の資格はおろか高校中退にもかかわらず、医師になりすまして医学書を片手に手術を行い、患者を次々と回復させてしまう天才だったのだ。名医としてあまりにも有名になり、記者たちに身元を調べられた結果すべてが白日の下に晒されたが、被害届は一件も提出されなかったと伝えられる。
しかも彼は、無免許の医者となる前にも学歴・経歴を詐称し、大学の心理学教授や動物学博士、軍人、さらには修道士や刑務所のカウンセラーにまでなりすまし、すべての職務を優秀にこなしていた。まさに万能の男である。ちなみに、IQは200以上あったといわれている。
そして、フェルディナンド・ウォルド・デマラが詐欺師になった理由がまたスゴい。なんと彼が人を騙す目的は、カネなどではなく「その職業になり切ること」そのものだったというのだ。そう、すべては彼の“ごっこ遊び”だったのだ――。
■米国社会を生き抜くために学歴詐称! 野口英世
現行千円札の肖像として、日本人なら誰もが知っている細菌学者の野口英世(1876~1928)。福島県出身の野口英世は、生涯をかけて黄熱病や梅毒の研究に心血を注ぎ、3度もノーベル生理学賞・医学賞の候補となりながら、自身も黄熱病に侵されて命を落とした。しかし、そんな日本を代表する「偉人」である野口英世も、自らの未来を切り拓くために学歴を詐称していたことが判明している。
東京で医学の基礎を学び、伝染病研究所(現・東京大学医科学研究所)や横浜港検疫所などで働いていた野口英世は1900年に渡米。病理学者のサイモン・フレクスナー博士に認められ、ペンシルベニア大学医学部で助手の職を得ている。後の国際的名声につながる第一歩を踏み出したこの時、彼も自身の学歴を詐称していたのだ。
なんと、野口英世がサイモン・フレクスナー博士に提出する履歴書に記した「1893年に東京医科大学に入学して3年で卒業」はまったくのウソ。さらに米国で発表する論文で用いていた「医学博士」の肩書もウソ。もっとも、東洋の小国からやって来た野口が当時の米国で生き残るためには、このようなハッタリをかます必要があったのかもしれないが、現代であれば大問題に発展することだろう。
■卒業じゃ格好つかないから学歴詐称! 野坂昭如
昨年12月9日、惜しまれつつこの世を去った直木賞作家の野坂昭如(享年85歳)。代表作『火垂るの墓』など作家としての活動のみならず、歌手活動や“元祖プレイボーイ”としても脚光を浴び、さらに「朝まで生テレビ」や「ビートたけしのTVタックル」(ともにテレビ朝日系)への出演など、さまざまな分野で活躍した人物だった。
そんな野坂昭如の最終学歴だが、プロフィール上では「早稲田大学第一文学部仏文科“中退”」。しかし実際のところ、これはウソであると生前のインタビューで自ら暴露している。なんと「本当は卒業しているのに、仲間たちがみんな中退なので、卒業じゃ恰好つかないと、ずっと中退で通してきてるんです」(『ヤスケンの海』、幻冬舎)というのだ。いかにも異才として名を馳せた野坂昭如らしい、洒落たダンディズムではないか。ショーンKとは真逆のパターンといえるかもしれない。
さて、ショーンKもびっくりの学歴・経歴詐称した人物たちを紹介してきた。しかしこの4名のいずれもが、(犯罪性の有無は別として)自分の人生を自分の思い通りにコントロールしたいがために学歴や経歴の詐称に及んでいることがわかる。ショーンKの心にも、何らかの負い目やコンプレックスの闇が潜んでいるのかもしれない。
(編集部)
参考:「スポニチ」、「WHALE OIL BEEF HOOKED」、ほか