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日本ロジテック破綻へ 負債71億円、電力代金払えず

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 自治体などと電力を売買している新電力大手の日本ロジテック協同組合(東京)が、東京地裁に破産を申請する準備に入ったことが分かった。ロジテックの財産を売却するなどして換金し、債権者に弁済する裁判手続きをとる見通し。自治体などがロジテックから回収できていない資金は少なくとも四十億円にのぼっており、どれだけ回収できるかは未知数だ。

 ロジテックの代理人弁護士の一人は、本紙の取材に「資金繰りが悪化して返済するめどが立っていないのは事実なので、破産の手続きをとることになるだろう」と話した。民間信用調査会社によると、負債総額は二〇一五年三月期時点で七十一億六千万円。さらに膨らんでいる可能性がある。

 ロジテックは自前の発電所を持たず、ごみ焼却場の廃熱による発電など自治体や広域事業組合が管理する発電所などから電力を調達して販売し、中部地方では自治体や企業など五百以上の顧客を抱えていた。しかし販売価格を抑える戦略が裏目に出て資金繰りが行き詰まり、自治体に電力の購入代を支払えない事態が相次いだ。ロジテックが破産しても電力は中電が代理で補給するので、停電する心配はない。

 各自治体は回収できていない額を公表しており、横浜市は六億九千七百万円、名古屋市は四億二千四百七十万円などとなっている。経済産業省のまとめでは、未回収額は自治体と広域事業組合の二十七団体で約四十億円にのぼる。国も再生可能エネルギーの促進費(賦課金)二億円超を徴収できておらず、東京電力など大手電力も送電網の利用料(託送料)を回収できていないという。

 名古屋市は回収への選択肢に訴訟を見据える一方、ロジテックから既に購入した電気料金(一カ月二千万円程度)を支払わないことで一部を相殺して穴埋めに充てる考え。

◆甘いチェック、国民にツケ

 日本ロジテック協同組合の破産がほぼ確実になった背景には、電力自由化による国の規制緩和で、新規参入の電力事業者の経営体質にチェックが行き届いていない実態がある。失敗のツケは、将来の電気料金に上乗せされ、国民が負担する可能性がある。

 電力自由化は工場など大口向けから二〇〇〇年に始まったが、参入に必要なのは経済産業省に提出するA4の申請用紙一枚だけ。法人登記簿も決算書も印鑑証明書も不要で、審査も無い。届け出は約八百社に上るが、小売りの実績があるのは百社強しかなく、事業実態がない業者が大半だ。

 四月以降は、一カ月以上の審査を伴う「登録制」に移行するが、財務体質は審査対象外となっているなど「許認可制」に比べてハードルは低い。経産省の担当者は「ベンチャーなども参入できるように間口を広くしている」というが、「行政の責任放棄ではないか」と指摘する識者もいる。

 ロジテックは、自治体や余剰電力が売買される日本卸電力取引所から調達した電力を、東京電力や中部電力に送配電線の使用料「託送料金」を支払って顧客に届けていた。

 しかし関係者によると、東電に対して二月下旬時点で託送料金など十八億円を滞納。中電にも同様の滞納金があった。ロジテックが破産すれば、東電や中電はいったん損失を負うが、国はこうした損失を託送料金の算出コストに転嫁することを認めている。託送料金が値上がりすれば大手電力と、送配電線を使う新電力それぞれの電気料金の値上がり要因となり、国民がロジテックの負債を肩代わりする形になる。

 (太田鉄弥)

 <日本ロジテック協同組合> 千葉県銚子市の漁業関係者らが外国人技能実習研修生受け入れのため2007年に設立した中小企業事業協同組合。銚子港の衰退を受けて09年、大口電力小売りに参入。11年度の売上高は4億円しかなかったが、東日本大震災による原発停止で大手電力の電気料金が上がり、新電力の注目が高まったことを受けて、沖縄県を除く全国の地方自治体や企業に契約を伸ばした。職員数は約70人で、14年度の売上高は555億円。現在出資している中小企業は約640社。

 

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