どの会社にも一定数存在する、使えない先輩。それを僕は「補欠の先輩」と呼んでいます。言葉の由来は、僕が尊敬する千田琢哉さんという元経営コンサルタントの方の著書にそう書いてあったからです。
あと3週間経って4月になれば、新入社員が続々と入社してきます。新人としてフレッシュな新生活を始める人や、先輩や上司の立場になる人もいるでしょう。
今回は、会社によくいる補欠の先輩について書いてみます。若手社員の立場になる人は、会社でそういう人がいた時に関わらないように、先輩社員のになる人は、自分自身を省みるために、考えてみましょう。
補欠の先輩の特徴
その1:やたら後輩に教えたがる
「教える」という行為自体は、とても大切なものです。どんな人でも、先輩の立場になれば後輩から教えを請われることはあるでしょう。
しかし、補欠の先輩は必要以上に後輩を追いかけ回して「教えてあげよう」とします。
なぜかと言うと、1つは補欠の先輩には仕事が回ってこなくてヒマを持て余しているから。そしてもう1つは、教えてあげることによって「俺はできる人間なんだぜ〜」というアピールをしているから。
新入社員も、入社当初は補欠の先輩にも色々教わろうとしてきます。が、1ヶ月もすれば「この人は他の人と何か違うな…」と感じとります。もちろん、悪い意味で。そして入社から3ヶ月も経てば、補欠の先輩に頼ることはなくなります。
やがて補欠の先輩はその後輩に追い抜かれてしまい、翌年入社してきた社員を追いかけ回す。その繰り返しになり、どんどん後輩に疎まれる先輩となってしまいます。
その2:大勢の前で説教する
補欠の先輩は、よく新入社員を説教します。できる先輩も、よく新入社員を説教します。しかし、そこには明らかな違いがあります。
まず、できる先輩は「人が少ない場所で、小さいけどよく通る声」で説教します。期待感の表れからの説教なので、互いの声がよく聞こえるところで話をします。また、新入社員といえどプライドがあるのを知っているので、わざわざ大勢の前で叱責する理由必要性もないのです。
逆に、補欠の先輩は「人が多い場所で、大きな声」で説教をします。補欠の先輩にとって最も重要なのは「ちゃんと後輩を指導している自分」を周囲の人に知ってもらうためであり、後輩のことは二の次だからです。
あとは、やたら「期待しているぞ」という言葉を投げかけるのも、補欠の先輩のお説教の特徴です。本当に期待している人には、わざわざ期待しているなんて言葉は連呼しません。親友にわざわざ「俺たちって友達だよな?」と聞かないのと同じことです。
その3:自分が何を伝えたか?を重視する
補欠の先輩がよく使う言葉に「俺が伝えた通りにやれよ!」というものがあります。部下が自分の指示どおりに仕事をしなかった時に言う台詞ですね。
逆に、できる先輩は「俺の伝え方が悪かったんだな」と言います。両者の決定的な違いというのが、補欠の先輩は「自分が何を伝えたか」を重視していて、できる先輩は「相手に何が伝わったか」を重視しているということ。
コミュニケーションは、受けてが主導権を握ります。明らかに物覚えが悪い後輩ももちろんいますが、先輩と後輩のコミュニケーションを見ていてどちらの言葉を多く使っているか?観察してみれば、自然と補欠の先輩とそうでない先輩の見分けがつくのではないでしょうか。
その4:年上であることをやたら主張する
補欠の先輩というぐらいですから、入社して何年も経っている人が多いです。そういう人はどんどん後輩に抜かれていき、周囲は自分より年下の上司ばかり。
基本的には卑屈にヘラヘラペコペコしながら仕事をしている補欠の先輩ですが、1つ自分の気に入らないことがあると、急に自己主張を始め、自分の要望を通そうとします。
しかし通らない。すると癇癪を起こし、「俺の方が年上やぞ!」という、全く関係ない部分でアドバンテージを取ろうとしてきます。昔の年功序列な会社なら通用する方法かもしれませんが、そういう会社はどんどん減ってきています。そして何よりダサい。
できる先輩は、自分より年下でも優秀な人や、逆に自分より年上でも使えない人がいることを知っています。仕事中に年齢について主張をしてくる人というのは、補欠の先輩と考えて間違いないでしょう。
その5:社内ゴシップが大好き
会社が大きければ大きいほど、そこで働く従業員の数は多くなります。となると、他人の社内政治、社内恋愛、昇降格情報などの話題が多く出てきます。
補欠の先輩は、こういう「社内ゴシップ」を追いかけるのが大好きです。ヒマさえあれば、あいつとあいつは仲が悪いだの、あいつとあいつが付き合っているだの、あいつが今度降格するらしいぜざまあみろだの、そんな話をずーっとしています。
そんな風に他人の動向を見るのは大好きですが、肝心の自分は?となると、入社何年も経つのにうだつのあがらない平社員…というのが、補欠の先輩の定番なわけです。
その6:口が軽い
その5に共通することですが、補欠の先輩はとにかく「噂」が大好きです。大好きなだけならまだ良いのですが、一番タチが悪いのが、それを周囲にペラペラ話す「口の軽さ」を持ち合わせていることです。
皆そうだと思いますが、口の軽い人はもうそれだけで信用できませんよね?逆を言えば、たとえ社内ゴシップが大好きでも口が堅く、誰かの噂話を聞いたとしても自分の心に留めるのみにしていれば、そんなに信用を落とすことはありません。
補欠の先輩がウザがられる最大の要素は、この口の軽さなどに端を発する「信用の低さ」です。自分の周囲に口が軽い人がいたら、その人には一切近寄らないようにするのが、最大の対策です。
その7:読書をしない
これはもはや周知の事実だと思いますが、補欠の先輩はとにかく本を読みません。
また、本に限らず「知識に投資する」という行為をしません。逆にできる先輩・できる後輩は、よく本を読みます。自分の頭で考えるだけでは限界があり、先人たちの知恵を借りないと超えられない壁があることを、よく知っているからです。
実は、僕がここまで書いてきた「補欠の先輩」には、あるモデルがいます。それは、過去に一緒に働いた職場にいた先輩。その人はとにかく読書を嫌い、家ではゲームやスマホをずっといじっているような人でした(社宅だったので、その先輩は僕の部屋の真上に住んでいました)。
その補欠の先輩のエピソードで、一番唖然とした経験を書きます。
ある日補欠の先輩の車を見ると、ダッシュボードに本が一冊置いてありました。若干色あせていたので、購入からある程度月日が経っていたのでしょう。彼は読書嫌いで有名だったので、僕は「お!ついに本を読むようになったんだ」と、感心しました。
後日、その先輩にダッシュボードの本のことを聞くと、彼は
「ああ、あれ?ああやって見える所に本を置いておけば、何かできる人っぽく見えるでしょ?www」
というような事を、平然と言ってのけました。ちなみに色あせていた原因は、車に常に置きっぱなしにしていたせいでの日焼けだったそうです。
僕はその瞬間、この先輩のことをリスペクトすることは未来永劫ないだろうな…と強く思ったのでした。
おわりに
僕が見てきた補欠の先輩には、大体こんな特徴がありました。特に最後のエピソードは本当にガッカリして、それまでその先輩とは結構仲が良かったのですが、それ以来どんどん疎遠になっていきました。
冒頭にも書きましたが、これから新生活・新社会人シーズンになります。僕も正社員時代は、大抵4月か10月に異動を命じられていました。懐かしいですね。
これから入社する人、これから部下を持つ人、部下でなくても後輩を持つ人、色々いるでしょう。どんな人でも、ここに書いた補欠の先輩にだけはならないように、気をつけていってほしいと思います!