これまでのテキスト
最初のテキストで、漫画・ゲーム・アニメ・特撮・映画等々、それらのオタク文化やサブカル文化をベースにした内容の作品。
そしてそのような内容の小説を書くために、独特の句読点の使い方を行ったり、擬音語を多用したり、口語表現を積極的に取り入れたり、…を多用したりさまざまな工夫を凝らした文体を活用した小説がライトノベルと定義しました。
独特の内容と文体、それを一言で「アニメのリアリティで書かれた小説」と定義することにしたのです。
これではあまりにも範囲が広すぎて定義として機能しないのでは?と思われるかもしれません。実際そのような意見もいただきました。
しかしです。このような範囲が広すぎる定義ですらふまえていない「最近のラノベ」語りをよく見るのです。
正直に言って雑で見当外れな「最近のラノベ」語りを一つ一つ取り上げていったらキリが無いので、代表的なモノを取り上げて僕の範囲が広すぎる定義にも当てはまらい状況を紹介したいと思います
●「最近のラノベはMMORPGをベースにしていているのでダメだ」
●「レベルやスキル等の単語が作中に出てきて、登場人物も平気で使うので萎える」
最近このような「最近のラノベ」語りを見るのです。
しかしです。たとえば初期の作品で現在でも続いている『フォーチュンクエスト』でもレベルの概念が作品に出てきますし、登場人物も「レベルアップおめでとう」と歌いますよ。
このように「レベルやスキル等の単語が作中に出てきて、登場人物も平気で使う」のは、別に「最近のラノベ」だからではありません。
またこの手の語りでよく良い方の例として挙げられる「スレイヤーズ」は確かに作中ではそのような単語は出てきません。しかしながら後書きで魔法の説明を行うとき「MP」や「最大MP」を利用していたおり、ベースの一つにコンピューターRPGがあることは明らかです。
そもそもラノベは大雑把に見ても「TRPG→CRPG→現代異能モノ→謎部活モノ→ギャルゲ」と、その時代時代によってそのときのラノベ内でのブームが移り変わってきましたし、影響を受けたジャンルも変わってきました。
そもそもラノベは「漫画・ゲーム・アニメ・特撮・映画等々、それらのオタク文化やサブカル文化をベースにした内容の作品」です。たとえば『スレイヤーズ』でのCRPGのように今まで影響を受けたジャンルをベースにするのは良いのに、MMORPGをベースにした作品はダメなのでしょうか。
むしろMMORPGが流行っているのなら、それをベースとした作品を書きたいという作者が出てくるのも、そのような作品を読みたいという読者が出てくるのも、当然の事でしょう。だってそれがラノベですから。
今回はMMORPGを例に挙げましたが、それ以外にも「最近のラノベ」語りであげられる、ハーレム・異世界転移・俺Tueee、等々その全てにおいて「最近のラノベだからなのか」「そもそもそれを何故ラノベでやったらいけないのか」をキチンとふまえて欲しいのです。
●「多重カギ括弧はありえない」
多重カギ括弧とは
「「「「「なんだってーーーー!!!」」」」」
見たいなものです。
それについてはすでにまとめられているのでそれを紹介します。
『多重カギ括弧は20年以上前から存在していた~友野詳氏の回想録~ Togetterまとめ』
ついでに言えば、ライトノベルという単語を発明した人が、「アニメノベルみたいな話も出ましたが、「字マンガ」と呼んで莫迦にする一派がいたので類似した印象の言葉を使いたくなかった」というふうに回想しているのを読んだことがあります。
またライトノベル作家の草分け的存在である新井素子からして、規範を大きく逸脱しており「第2の言文一致運動」と呼ばれていました。
このようにライトノベルの表現方法は昔から独特の文体やその他工夫を凝らして発展してきたわけして、別に「最近のラノベ」に限ったことではありません。
そもそも仮に多重カギ括弧が最近のラノベから使われていたとして、それのどこが悪いのでしょう。自分が何かを表したいためにそのために工夫を凝らす。それが今までの規範を逸脱していても、ラノベの歴史や価値観からしたら誉められる要素ではあっても貶される事ではないでしょう。
今回は多重カギ括弧を例に挙げましたが、その他にも独特の句読点の使い方を行ったり、擬音語を多用したり、口語表現を積極的に取り入れたり、…を多用したり等々その全てにおいて「最近のラノベだからなのか」「そもそもそれを何故ラノベでやったらいけないのか」をキチンとふまえて欲しいのです。
以上、ラノベの内容については「MMORPG」を例に、ラノベの文体については「多重カギ括弧」を例に、範囲の広すぎるラノベ定義からみても雑で見当外れな「最近のラノベ」語りを見てみました。
個人の趣味や嗜好はやはりあります。個人的に合った合わなかったという話なら、別にラノベの定義なんか気にせずに気楽に語り合って欲しいのです。
しかしながら個人の趣味や嗜好を超えて読者や著者や編集者やラノベ業界を批評したり批判するときには、せめて範囲の広すぎるラノベ定義ぐらいはクリアしてから、そして「最近のラノベだからなのか」「そもそもそれを何故ラノベでやったらいけないのか」をふまえて欲しいのです。
そうじゃなければ、貴方の感想(?)が「最近のラノベ」読者から叩かれるのは、「最近のラノベ」読者が貴方の真意を勘違いしているわけでもなければ、ラノベを狂信しているからでもなく、単に貴方の感想(?)が、雑で見当外れだからですよ。