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一時滞在施設、事前公表望まず7割 都集計

都庁の中で一夜を明かした帰宅困難者たち=東京都新宿区で2011年3月12日午前7時27分、須賀川理撮影

 首都直下地震に備え、帰宅困難者の一時滞在施設として東京都内で確保されている民間施設365カ所のうち、災害発生前の公表を希望していない施設が7割超の278カ所を占めていることが都の集計で分かった。都や区市町村は原則、希望しない民間施設を公表していない。避難者が殺到することなどへの懸念が理由だが、事前周知の必要性を指摘する意見も出ている。【川畑さおり】

 東日本大震災に伴う帰宅困難者は内閣府の推計で、東京都352万人▽神奈川県67万人▽千葉県52万人▽埼玉県33万人▽茨城県南部10万人−−に上った。2012年に都が公表した首都直下地震の被害想定によると、帰宅困難者は約517万人に及ぶ。うち観光客など行き場のない人は約92万人に上ると想定している。

 都は14年に公表した地域防災計画で、一時滞在施設の施設名や所在地を「原則として公表」と明記。その上で、民間施設については「非公表を希望した場合でも発災時は公表を前提」と記している。

 民間の場合、企業などが区市町村と一時滞在施設の協定を結ぶ。都が2月、区市町村を通じて民間施設の意向を調べたところ、「公表してもいい」は87カ所にとどまった。施設が被害を受けて帰宅困難者を受け入れられない状態になったり、人が殺到したりすることを懸念し、非公表を望んでいるという。

 こうした中、公表を促す意見も出ている。東京商工会議所が2月、都と防災に関する意見交換をした際、会員企業が「日ごろの備えとして、事前に周知しておくことが必要ではないか」と提案した。

 都の担当者は毎日新聞の取材に、必要とされる約92万人分の一時滞在施設の3割弱しか確保できていない現状を挙げ「ある程度の規模を達成できれば公表も視野に入れる。安易に公表すれば、企業との信頼関係が失われる」と説明した。

 都は13年、原則3日間過ごせる一時滞在施設の整備を進めるため、帰宅困難者対策条例を施行。民間事業者に対して備蓄費用の6分の5を補助する制度も導入した。約92万人分の確保を目指すが、1月1日現在、都や区市町村などの公共施設445カ所(約14万8000人分)、民間施設365カ所(約10万7000人分)の計約25万5000人分にとどまっている。

「発生時では混乱」

 「その時、どこに一時滞在施設があるか、事前に知っておきたい」。東京・日本橋のオフィスビルで9日、三井不動産が実施した防災訓練に参加した大学職員の女性(52)は訴えた。東日本大震災で帰宅困難者となり、茨城県土浦市の自宅に戻れたのは発生から4日目だった。

 民間施設の公表を巡っては、自治体間で温度差がある。渋谷区は公共施設だけでなく、民間施設もホームページなどで公表。民間20カ所と協定を結び、事前公表を希望しない3カ所を除いて周知している。区担当者は「事前公表しないと、実際に発生した時にどこに施設があるか分からず混乱してしまう」と説明する。

 一方、ターミナル駅・池袋を抱える豊島区は公共施設を含め広報していない。災害発生時に防災無線などで周知するという。

 帰宅困難者対策に積極的に取り組む企業もある。東京・丸の内エリアのオフィス街に多くのビルを所有する三菱地所は、09年に震災発生時の対応を示した行動手順書を作成。12年8月には千代田区と協定を結び、一時滞在施設として提供する14棟のビルをすべて公表している。都の防災計画によると、震災発生時に、施設の管理者が建物の安全性を確認し、受け入れられるか地元自治体に伝える手順になっている。同社の担当者は「建築士など専門的な知識を持つ社員が多く在籍し、適切に判断できる」と事前公表できる背景を説明している。【川畑さおり】

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