1審変更、人格権侵害1人だけ 仙台高裁
陸上自衛隊情報保全隊がイラク派遣反対集会を監視したのは違憲として、東北6県の住民が国に監視差し止めと損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が2日、仙台高裁であった。古久保正人裁判長は、1審が情報収集による人格権侵害を認めた原告5人のうち1人への違法性を認めて国に10万円の支払いを命じ、他の4人は「共産党地方議員で、職業などは公に近い情報」と請求を退けた。
違法性の判断が維持された1人はアマチュア歌手で、派遣反対ライブを行っていた。古久保裁判長は「自衛隊員に直接働きかけたわけでもなく、公表していない本名、勤務先を詮索するのはプライバシー侵害」と認定。議員4人の活動については「秘匿性に乏しく情報収集の必要性も否定できない」と賠償命令を取り消した。
保全隊の情報収集は、共産党が2007年に公表した内部文書で明らかになった。東北地方であったイラク派遣の反対集会やデモの参加者について氏名や肩書、所属政党などが記載され、住民側は憲法が保障する言論・表現の自由や、プライバシー権を侵害するとして提訴した。
12年3月の1審判決は「正当な目的がなければ(行政機関に国民は)個人情報を収集・保有されない」と、違法な情報収集と判断。原告107人中5人について支払いを命じる一方、差し止め請求は退け双方が控訴していた。【本橋敦子】
厳しい判決
判決を受け、防衛省は「裁判所の理解が得られなかった部分があり、厳しい判決であると受け止めている。判決内容を慎重に検討し、関係機関と調整の上、適切に対処していきたい」とのコメントを出した。