あのスティーブ・ジョブズ(Steve Jobs)がガラス扉の向こうに閉め出されて入ってこられない光景を思い浮かべたら。。あなたはいったいどんな感想を抱くだろうか?
Cult of Macによると、アメリカのメディアMediumで、Adobeの幹部のArno Gourdolが、ジョブズの生前の面白いエピソードを暴露している。それは、ジョブズは自らの会社、Appleの社員証を持ち歩いたり身に付けたりすることを拒否していたというのだ。
もちろん、ジョブズはテクノロジー業界に止まらず多くの世界中の人から知られているため、本人を認識できない人などいないため、Apple社内で社員証を持っていなくても問題ないのではないか、むしろ全然おかしくないだろうと感じる人もいるだろう。しかし問題はそこにある。Appleの社員証はただのカードではなく、通行証になっているのだ。Apple社内の自動ドアはその社員証によって開くことができる。そしてApple社内には厳重に秘密を守るため、Appleの従業員の通行証はそれぞれの社員が違う権限を持っていて、開けられるドアの種類が決まっており、1枚のカードでAppleの社内の隅々までアクセスできるわけではない。Appleの中では、限られたごく少数の人の社員証だけが、Appleの社内の全ての自動ドアを開けることができるのだ。
ジョブズはAppleのCEOとして、会社にいる間は様々な部門間を移動していた。しかし社員証を持たないジョブズはちょくちょく「門外に閉め出される」という状況に陥っていたという。Gourdol氏によれば、Appleのキャンパス内には常にジョブズの後ろには誰かが付いていたという。それはジョブズが社員証を持つことを拒絶したからだった。ジョブズ用のカードは全ての自動ドアを開けることができるのに、ジョブズはそれを持ち歩きたいと思わなかったのだ。誰もその理由を知らない。しかし彼によればそのような選択も、彼なりの何らかのロジックに従ったものだったのだろう。
実はそれ以前にもAppleの従業員がこのジョブズの社員証を持たないことに関するエピソードを暴露している。その従業員によれば、ジョブズが自動ドアの前に来ても誰も開けてくれないときには、彼はドアの前で何らかの言葉を発するだけで(正に開けゴマ!?)、誰かが飛んできてドアを開けたという。「ジョブズは唯一そのようなやり方でAppleのドアを開けられた人でした。彼は自分のことなど気にしていなかったのです。彼はApple内の様々な決まりは、彼にとっては何の役にも立たないと考えていたのです」と従業員は語っている。
確かに、そういった”決まり”は彼にとっては何の役にも立たないものに映っていたのかもしれない。
ジョブズはそのような様々な規定を設けて何かを制限するようなことが嫌いだったことは、これまでの各種の伝記やエピソードで明らかになっている。例えば彼はベンツを運転していたが、ナンバーをつけたことがなかったり(カリフォルニア州では6ヶ月間はナンバーをつけなくてもいいため、それを逆手にとって6ヶ月に一回ジョブズはレンタカー会社に同じベンツの車を換えることを要求していた)、障碍者用の駐車スペースに平気で自分の車を停めたりしていたのだ(入り口に近くて便利だから)。
画蛇添足 One more thing…
ようは、ジョブズは他人が決めた決まりに縛られるのが嫌だったのだ。しかし他人が決めた決まりを「おかしい」と疑い、「どうにかして変えよう」という改革や革新の気概があったからこそ、世の中をがらっと変えるイノベーティブな製品や、世界最高の市場価値を持つ会社を作ることができたのだろう。
ただ、彼自身は他人に縛られるのが嫌いだった割には、ずいぶんと自分が作ったプロダクトで人を縛るのは好きだったようだ。「俺は人が決めたルールは守らないけど、お前らは俺が決めたルールを守れ」と言っているようだ。まるで中国の三国志(三国志演義)に登場する魏の曹操の「私が他人に背いても、他人が私に背くことは許されない」という言葉を地で行っているような感じがする(だからかっこいいという見方もあるが)。AppleのソフトウェアはSwiftを除けば基本はオープンソースではないし、特にiOSは非常に堅固にできていて、公式App Store外ではサードパーティ製のアプリは入れることができず、ライバルのAndroidとは大違いだ。
そんなわけで当ブログで提供しているサービスや、一部の記事の話題も、Appleがしかけている「規制」を外すことをテーマにしているところがある。それは私自身も誰かが(それがAppleや敬愛するスティーブ・ジョブズであろうとも)決めたルールに従うだけというのがつまらないと感じたからだ。
iOS脱獄しかり、SIMロック解除(ファクトリーアンロックサービス)しかりだ。後者のSIMロックはキャリアがかけるものだが、Appleもそれに協力しているも同然だ。遠隔アクティベーションロック解除サービスも同様の理由でサービス提供している。海外で見られる日本のテレビサービスも、海外では日本のテレビを見られないと相場が決まっているところをなんとかするという精神で提供している。私はAppleのように最初は海賊だったが、最後は自分自身が帝国になってしまったというのは好きではない。できれば永遠の海賊でいたいものだ(もちろん、合法の範囲内で)。
記事は以上。
(記事情報元:Cult of Mac)
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