「命綱」あれば…シートベルト非着用多く
長野県軽井沢町の国道18号「碓氷(うすい)バイパス」入山(いりやま)峠付近でスキーツアーバスが道路脇に転落し14人が死亡、26人が重軽傷を負った事故で、遺体やけが人の事故直後の状況などから、多くの乗客がシートベルトを着用していなかったと県警軽井沢署捜査本部はみている。シートベルト着用は道路交通法で義務づけられているが、バスの場合、一般道では非着用に対する罰則がない。事故が15日未明の就寝時間帯に起きたことも非着用の要因とみられ、被害拡大につながった。【尾崎修二、川辺和将】
現場で救助にあたった佐久広域連合消防本部によると、現場到着時、少なくとも2人が車外に投げ出されており、地面とバスの窓枠に挟まれた犠牲者も多かった。また、犠牲者を含む大半の乗客が、横転して下側になった車体右側に折り重なるように倒れていた。シートベルト非着用をうかがわせる状況だが、同本部は「着用していたが、事故の衝撃で抜けてしまった可能性もあるので、精査が必要」と話す。
腰などを打つ軽傷を負った男子大学生(23)はシートベルトを着用していたが、「ベルトを締めていた人は少なかったと思う」と話した。別の男子大学生(19)は「乗車時などにシートベルト着用を促すアナウンスはなかった」と証言した。自身も着用していなかったという。
2008年6月施行の改正道交法で、後部座席のシートベルト着用が義務化され、タクシーやバスの乗客にもベルト着用が求められるようになった。法律上は一般道でも着用しなければならないが、取り締まりの対象になるのは高速道路上での違反に限られる。
だが、群馬県藤岡市の関越自動車道で12年4月に乗客7人が死亡したバス事故では、バス会社が壊れたシートベルトを放置して運行していたなど、着用意識の低さがたびたび問題としてクローズアップされてきた。長野県警関係者は「今回の着用状況を調べる必要はあるが、自身を守る手段として一般道でも着用を心掛けてほしい」と呼びかけている。