とりあえず南蛮渡来バテレン汁粉どうですか。美味しい物しか入っていないから美味しいよ。
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知っている人には有名な伊豆の施設「まぼろし博覧会」で正月祭りが開催された。館長も来館するという事を知り、1月3日に慌ててかけつけた。
この施設が別の場所にあったときを含めると6度目の訪問なのだがどんな人物がこの施設をつくったのか以前から興味があったのである。
クリハラタカシ(くりはらたかし)
1977年東京生まれ。漫画、イラストレーション、アニメーションなどを制作。
著書に「冬のUFO・夏の怪獣」「ツノ病」「ラッキーボギー」など。> 個人サイト クリハラタカシのホームページ 様々なものが圧縮陳列されている混沌施設「まぼろし博覧会」
富戸の駅前でタクシーを呼ぶ
伊東駅からバスもあるのだが本数が少ないので伊豆急行線富戸駅からタクシーで行った。「まぼろし博覧会へ」と行き先を告げると「ああ…あそこね…」となぜか運転手の声が曇る。
施設が見えてきた
正月祭り中なのでいつもは無い飾りつけもある。
派手な傘を振って呼び込みをする派手な人
どうやらこの方が館長のようだ
急に変な緊張をしてきた。
心の整理をするため、インタビューは後回しにしてまずは施設を見て回ることにする。 入口はこっち
階段をのぼっていく
豚
桃太郎と鬼
宇宙人?
ゴリラ
三角関係
天狗
恐竜
河童
秘宝おじさん(改)
やっと受付に到着
ここでチケットを購入。これまでも色々あったがここがようやく入口なのだ。
展示は複数のエリア、部屋に分かれている
後から付け足した看板から展示部屋が今も増殖を続けている事が分かる。まずは受付裏にある大温室の展示が順路だ。さっそく入ってみる。
怖いのがいる
お坊さんと石像
そして見えてくる巨大な聖徳太子像
まぼろし博覧会の象徴的存在だ。お気づきかもしれないがこの施設は閉鎖した植物園を居抜きして作られたものなのだ。なんだか以前来たときよりも草木が自由奔放な気がする。
でかい
他にも脈略なくモノが並ぶ
モアイ像
安土城
自然に飲み込まれつつある展示品
これはなんだろう
エジプトの人
聖徳太子の頭のテッペン
聖徳太子を温室に入れた際に大きすぎて入りきらず頭頂部を少し削ったらしいのだがそれも無造作に置かれている。別の展示物のガラスケースの上だ。
外に出た
…ざっと第1の部屋を紹介してみた。続けて第2、第3の部屋だがここからが更に密度が濃くなる。
展示品が膨大すぎるのでここからは走馬灯式にご紹介しよう。長いので注意。 しかしこれでも展示の全てではない。毎度の事だが消化しきれないほどの満腹感と満足感。だからこそ中毒的に何度も来てしまう。行った事無いけれどラーメン二郎もこんな感じなのだろうか。 精神的に満腹になったところで意を決して館長との接触を試みる
名刺を2枚いただいた
「館長セーラちゃん」の名刺と「データハウス代表取締役」の名刺。館長のセーラちゃんはデータハウスという出版を行う会社の代表取締役なのだ。
セーラちゃん
え、はい…いただきます…。
南蛮渡来バテレン汁粉
セーラちゃんが今回の正月祭りの為に甘い食べ物を煮込んで作った特製汁粉らしい。写真の右が材料。
セーラちゃん着物バージョン
酷い甘さと舌触りの汁をすすりながら施設のお話を伺った。精神的な膨満感に物理的な胃もたれが追い打ちをかける。自分の内蔵の場所が分かる気がする。
この施設はどのような経緯で作られたのですか?
もともと出版をやっていて「野生ネコの百科」っていう本を作ったんだけどそれをやるなかで「現物の図鑑」を作りたくなり、まずは「猫の博物館」を作ったんですよ。これが20年くらい前。
それから出版業と観光業の二足のわらじ。 色々展示物を集めてネコ科だったら上野の博物館よりいいものありますよ。あと「ペンギン博物館」ていうのも作ったんだけれどこっちはあまり面白くないから閉めちゃった。
あ!「猫の博物館」も「ペンギン博物館」もセーラちゃんの施設だったのですね!
これ全部セーラちゃんの施設
で、色々なものを集めちゃって、ネコ以外のモノを入れる場所が欲しくなり熱海で土地を借りて3年限定の「ふしぎな町1丁目」という施設を始めたんです。
その期間が終わったあと展示物を「ペンギン博物館」の跡地に移動して作ったのが「怪しい少年少女博物館」ですね。 でもそこは狭くて展示物が入りきらなかったから更にこの広い場所(植物園が撤退した跡地)を買ったわけです。それが「まぼろし博覧会」。こっちは使ってない土地も奥にまだまだあるから展示を拡張しながらこれから10年〜20年は遊べるかなと思っています。 展示物の修理はしないけれど上乗せはする
姉妹館の「怪しい少年少女博物館」の方も面白いですけれどこっちの「まぼろし博覧会」の方が更にカオスですよね。
実物のコラージュをやっているんですよ。
でも壊れても直したりはしないですよ。そのまま。腐ったら味が出るし。ここではホコリも展示物なんですよ。 伊勢の秘宝おじさん
展示物はどのように集めているのですか?
骨董屋とかネットオークションとか…いらなくなったモノをもらったりとかですね。
閉鎖した「鎌倉シネマワールド」とか伊勢の「元祖国際秘宝館」なんかからも大量に持って来たりして。 現地の農家の協力を得て運び出したり。「元祖国際秘宝館」には運び出しで7回通いましたよ。 温室の聖徳太子
そういえばあの巨大な聖徳太子はどこから手に入れてどうやって温室に入れたのかが大きな謎でした。
あれは某イベントで使われた実物大の某大仏の美術をもらってきて聖徳太子に改造したんですよ。温室には12個に小さく分割して運び入れたんです。
衛生博覧会(from元祖国際秘宝館)
一番のお気に入りの展示品はありますか?
これといってひとつは選べないですね。
1個で数百万円するものも無くはないけれど…ここではそれが価値じゃない。いっぱいある事が大事。 南蛮紅毛式千手観音
来るたびに展示が増えたり手が加えられたりしていますが今後の展望を教えてください。
ここをいろんな面白い人やモノの梁山泊にしたいですね。
去年の夏祭りではエスパー伊東さんをはじめ、一般の人も参加していろんな事をしましたよ。面白い人、いい人で一緒に遊ぼうという人だったら大歓迎。とにかく底抜けに楽しく気持ちの明るくなる場所にしたいですね。 今年はGWと夏にイベントを予定しています。 (後日公式HPにて発表予定) 正月祭りのセーラちゃん
ところでセーラちゃんはイベントの時だけ女装されているんですか?
あっこれは女装じゃなくてコスプレなんですよ。
あっそうなんですね!(どういうことだろう?)
今の状態を見られるのは今しかない
「かわいい」「かっこいい」「変」などと一言で片付けられないモノを前にし、どう表現していいの分からなくなった時、「大好き!」という感情が発生することはないだろうか?
自分にとってはこの施設がそうだった。 セーラちゃん曰く何度も通うリピーターが多いらしい。訪れるたびに増殖、荒廃、再生…と様々な表情を見せてくれる「まぼろし博覧会」から今後も目が離せない。 最後に、取材から帰った晩は悪夢を見てうなされたことを記しておく。きっと汁粉のせいだ。 これが初夢でなくて良かった。 遊びに来てセーラちゃんを撮影するセーラー服おじさん
まぼろし博覧会
http://maboroshi.pandora.nu
〒413-0231 伊東市富戸字梅木平1310-1
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