中国は新興大国として世界戦略を練り、日本は積極的に「普通の国」化を目指し、米国は世界の覇権の維持に頭を悩ませている。これに対し韓国は、まるで「井の中のかわず」のごとく内輪もめばかりやっている感がある。世界市場で生きていく戦いが激しく繰り広げられているというのに、国の中でのんびり縄張り争いだ。どうしても閉塞(へいそく)感と挫折感を抱いてしまう。その中心に政界が存在する。そのことを、韓国国民は全て理解しているのに、政治家だけが分かっていない。
韓国の周辺国は夢を持っている。習近平国家主席は「中国の夢」を語る。中国は、共産党創立100周年に当たる2021年までに、食べていけるだけの経済成長を実現する「小康社会」を達成し、中華人民共和国建国100周年に当たる2049年までに、大国として浮上するという夢を見ている。世界を戦略空間と見なし、中央アジアを通じて欧州と接する新たな「陸のシルクロード」と、東南アジア・インド洋をつなぐ新たな「海のシルクロード」をつくる「一帯一路」構想を現実化しつつある。国内的には反腐敗と改革を強力に推し進めながら、国際社会に自国の立場を積極的に表明する「主動作為」路線を指向している。長期的には東アジアにおいて米国を排除した新秩序をつくろうという、戦略的な歩みに拍車を掛けている。
安倍晋三首相の夢は、日本を「強い普通の国」にすることだ。「失われた20年」の中で消えた日本の成長潜在力、低下した外交的影響力、社会的閉塞感を克服しようと、安倍首相は「強く、積極的で、誇らしい日本」をつくると誓った。アベノミクスを通して経済的に活力ある日本をつくるという安倍首相の公約は、半分は成功を収めた。安倍首相は「地球儀を俯瞰(ふかん)する外交」を行って国際空間に目を向け、「積極的平和主義」を掲げて世界秩序の形成に加わっている。集団的自衛権を容認して中国の台頭をけん制し、米国による秩序を助ける国際的先兵となっている。誇らしい日本をつくるとして自虐史観を捨て、代わりに自負ある歴史観を植え付けようとしている。また「主張する外交」を通して、領土と主権に関する声を強めている。安倍首相の夢には、東アジアの盟主の座を明け渡すことはできない、という切迫感がある。