【社説】高齢化社会・韓国、民法改正で親不孝を防げ

 韓国大法院(最高裁判所に相当)が昨年末、「親孝行契約書」に背いた息子に対し、親から譲られた財産を返還するよう命じて以降、家族が集まる場で子どもから同様の契約書を受け取る親がにわかに増えているという。この訴訟は、息子に「一緒の家に住み、親を忠実に扶養する」という内容の覚書を書かせた上で自宅を贈与した70代の父親が、約束を破ったとして息子を訴えたものだった。

 現行の民法に基づくと、子どもに無条件で贈与した財産を返してもらうことは難しいが、この父親は「条件付きの贈与」を明記した覚書のおかげで勝訴することができた。この判決は「財産を譲ってしまえば見捨てられるのでは」と心配する親たちの目を親孝行契約書に向けさせた。親の扶養義務さえも契約で縛ることには苦々しさを覚えるが、高齢化社会における一つの社会現象になっている現実は否定できない。

 こうした事態を生んでいるのは、親を敬うという美徳が消えたことと、高齢化に伴う高齢者の貧困が重なったことが大きな原因だが、不適切な民法規定も一因となっている。民法第556条は、贈与を契約した状態で「(子どもが親に対して)犯罪行為をしたり扶養義務を果たさなかったりした場合、契約を解除できる」と定めている。ところが、第558条には「すでに贈与を履行したときは、これを取り消すことができない」と明記されている。この558条のせいで、これまで孝行契約書がなければ親が訴訟を起こしても子どもから財産を取り戻すことができなかった。この条項がなければ、あえて契約書まで作らなくても556条にのっとり贈与を取り消すことができるのだ。

 子どもによる親の扶養は民法で定められた義務だが、扶養問題で親子が対立する家庭は増え続けている。親に対する虐待の報告も絶えない。親孝行契約書はこうした事態に備える一種の保険にはなり得るが、根本的な解決策ではない。現実には親孝行契約書を作成するケースは依然として少ない。ならば、現実に見合わない法律を改正するのがベストだ。現在、扶養の義務を果たさない子どもから贈与した財産を取り戻せるようにする、いわゆる「親不孝防止法」(民法改正案)が国会に提出されている。同法の核心も、民法第558条をなくすことだ。

 親孝行は法以前に倫理の問題だ。法がなぜ、親子の問題に介入するのかという声もあるかもしれない。だが財産を全て譲り、子どもに見捨てられた親にとって、それはむなしく聞こえるだけだ。今こそ親不孝防止法を本格的に議論するときだ。

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