岡山大学における研究不正の告発(時系列)

薬学部の森山、榎本教授による研究不正の告発および大学側の対応について、時系列に沿って以下の通り整理する。

平成24年1月
薬学部の研究室において博士論文の剽窃問題が発覚。薬学部教授会により調査、医歯薬学総合研究科長に報告される。榎本教授が大学法人監査室に学位論文に係る不正について告発する。研究科長および数名の研究科教授による不正調査が実施される。
平成24年3月
研究科長主導の上記の調査委員会が森田潔学長に報告書を提出する。

既に不正が発覚して以来3年以上が経過しているが、本件は未だ正式な取り扱いが行われていない。これは、研究の実態がない博士院生(社会人)が、研究室に所属している修士の研究成果をとりまとめて、自らの博士論文として申請し、不正に学位を得ていたというものである。複数の修士論文のほぼ全体が剽窃されていたこと、両者には研究室内における指導関係などもないことから、早々に学位の取消処分と、指導教員への懲戒処分が下されることが予想されていた。当該研究室には実験ノートが存在しないことも同時に明らかにされている。

平成25年12月
森山教授(学部長)が医学部の研究不正論文を告発する。
平成26年3月
森山、榎本両教授が医学部の研究不正論文を告発する(2回目)。
平成26年6月頃?
(予備調査委員会による調査が実施される)
平成26年9月16日
森山、榎本両教授に自宅待機命令が出される。
平成26年9月25日
森山、榎本教授に懲戒処分が下される(9月とされるが、後に修正され5月26日が復職日と指定される)。
平成26年9月26日
臨時薬学部教員会議が招集される。ハラスメント疑義についての説明は殆ど行われず、森田潔学長より、大学や学長に対する敵対的な行為は許されるものではないこと、次期の薬学部長は学長と一致した考えをもつものが指名されることを期待するという演説が行われる。
平成26年10月1日
停職処分者を学内で見かけた場合は事務長に通告することを求めるメールが薬学部教職員に送信される。
平成26年10月9日
森山教授との協議がないまま森山教授室が解錠され、資料の捜索が行われる。
平成26年10月10日
医歯薬学総合研究科研究科長より薬学部教職員に向け、同日薬学部学生、研究科(薬学系)大学院生に対して「重要:薬学部長・副学部長のハラスメント行為に係る懲戒処分について」というメールが送信されたことが通告される。

学生へのメールの終わりの部分:「私は、今回の両氏の懲戒処分に伴い森田潔学長から、薬学部長事務取扱を任命されましたが、その際に学生諸君の修学、研究環境に支障が生じないことを最優先で考え、学部全体で、迅速かつ確実に学生の修学環境の整備について対処するように命ぜられました。また、そのために大学全体として全面的なバックアップをしてくださるとの確約をいただいております。どうか、学生諸君は、動揺することのないよう冷静に修学、研究に取り組んでいただきたい。そして、様々な情報に惑わされ、混乱することのないよう正常な判断をしていただきたい。私は、責任をもって、皆さんの卒業・修了までの間、適正な教育、研究環境を確保することを、ここに約束します。」
研究科長によるこの約束は現在(平成27年5月26日)まで全く果たされておらず、その後を引き継いだ檜垣学部長は当該研究室の学生からの訴えを無視、教授会にも隠蔽している。

平成26年10月中旬
総務担当理事、副学長、医歯薬学総合研究科長の3名により、薬学部教授が1名ずつ喚問を受ける。事務職員による音声録音が行われる中、停職処分についてのコメントを求められる。
平成26年10月27日
薬学部長が檜垣教授に交代。
平成26年10月29日
守秘義務の励行を求めるメールが岡山大学代理人森脇正弁護士の名前で薬学部教職員に一斉送信される。このメールは情報漏洩を行った教職員が懲戒処分を受ける可能性について警告するものであるが、「岡山大学教職員各位」という宛名にも関わらず、他部局には送信されないなど、不審な点が目立った。
平成26年12月
1)檜垣学部長より森山、榎本両教授の不在は研究、教育に影響を与えていないこと、両教授の復帰は学部運営に混乱をきたすことから、復帰は望ましくないという内容の意見書が大学に送られる。この意見書は教授会での審議を経ない独断であることが後ほど発覚した。
2)情報漏洩を理由に、薬学部教授3名に厳重注意処分が下される。
3)森山研の研究成果についてのプレスリリース資料が誤って解禁日前に薬学部教授全員に送信される。その後、内容を漏洩した場合は懲戒処分に相当することが総務担当理事よりメールで通告され、情報漏洩をしないことを宣誓する誓約書への署名が薬学部各教授に強制される。
平成27年1月21日
岡山地方裁判所より仮処分について判断が下される。停職処分の違法性には言及されるが、停職自体は継続。森山教授については停職期間終了までの給与の支給が保証される。
平成27年1月下旬
当該研究室学生により学部長への研究環境改善の訴えが行われるが、教授会には報告されず、その後も放置される。
平成27年3月4日
森山教授への給与支給の一部を拒否、地裁により強制執行が実施され、絵画が差し押さえられる。
平成27年3月27日
調査委員会による研究不正告発を受けた調査に関する報告が行われる(岡山大学webサイト)。調査報告書は公開されず。
平成27年5月20日
森山、榎本両教授に26日以降の自宅待機命令。懲戒処分(事由は不明)があることが示される。

研究不正問題、あるいは森山、榎本両教授の懲戒処分について、何故岡山大学で抗議の動きがないのかという指摘があるが、上記の通り大学からの圧力は苛烈であり(よほどこちらの方がパワーハラスメントに相当するのではないか)、良識のある薬学部教員が団結して事に当たることは残念ながら不可能な状況である。

両研究室に所属する学生、院生の取り扱いは教育機関としては最も重視すべき要素であるが、檜垣学部長をはじめ学部運営側、あるいは大学はこれまで一切物質的、精神的援助を行っていない。むしろ、秘書や研究員の解雇等の問題もあり、学修環境は悪化の一途を辿っている。平成26年10月10日のメールにおける研究科長の約束は実質的に反故にされている。予算の取り扱い等を通じて、大学側は研究室の実質的な解体も視野に入れている可能性があるが、こうした係争により大学生、大学院生が極めて大きな不利益を被ることについてはもっと注目されなければいけない。学年によっては就職活動が始まっている状況であるが、こちらをご覧いただく企業の皆様には是非適切なご判断を示していただきたい。

平成27年5月26日
企画・総務担当理事より薬学部教職員に対して、本日より森山、榎本両教授に自宅待機命令が下されたことが通告される。

「パワーハラスメント等とは別の非違行為の疑いがあることから、現在、当該事案の調査を行っているところです。このような状況につき、両教授に対しては、国立大学法人岡山大学職員就業規則第68条の2の規定に基づき、学長が本日から『自宅待機』を命じましたので、お知らせいたします。」非違行為かどうか確定しない事案の調査に対して、出勤停止という懲罰的な措置をとることができる根拠は就業規則にはない。これは極めて恣意的な懲戒権の濫用ではないだろうか。両研究室の学生の動揺は大きい。

第68条の2:学長は,職員が懲戒処分に該当する行為を行った場合は,当該懲戒処分が決定するまでの間,当該職員に自宅待機を命ずることができる。

平成28年1月4日
薬学部長を通じて薬学部教職員に対して森山、榎本両教授が平成27年12月28日付で解雇となったことが報告される。同日、薬学部の全学生に対して、岡山大学の決定により両教授が退職した旨がメールで通知される。
コメント