病院ではクーリングには欠かせないアイテムですが、家庭では保冷剤利用のものが主流で、殆ど見られなくなった氷枕。若い看護学生も、実習で初めて目にすることも多くなりました。
氷枕の良さを知ってもらい、家庭での発熱時や、熱帯夜のクーリングなどに活用して頂きたい。看護学生や新人ナースに教える、氷枕の作り方と理想的なケアの方法をお伝えします。
ご家族の急な発熱には、ぜひ氷枕を活用して楽にしてあげてください。
理想的な氷枕の作り方3つのポイント
単に氷と水を入れただけですが、氷枕はなかなか奥が深いアイテムです。氷枕を作る時のポイントとなるのは
1.氷
2.水
3.空気
の3つの量。
氷の量は容量の半分か3分の2まで、空気が発生したら抜くことです
理想的な作り方
氷は氷枕の容量の半分から三分の二
水はコップ1~2杯
空気を抜く
*四角い製氷皿などで作った氷は、角が当たると痛いですから、水をかけて角をとっておきます。
この作り方をすれば、程よい冷たさを持続させ、使い心地も良い氷枕の出来上がり!
それぞれのポイントの詳細もどうぞ。なぜその量なのか、「なるほどと!」とガテンがいくので、作り方がきっちり覚えられます。
1.氷の量: たくさん入れたほうが長持ちするのでは?
氷が少ないとすぐ溶けてしまう
何度も作りなおすのが大変だから、つい多めにいれてしまう
と言った理由で容量いっぱいに氷を入れてしまいがちですが、氷が溶けた時に、空気が発生して冷却効果が低下するし、冷却効果が低下して安定性もよくありません。
氷の角を取るのは、ゴツゴツしていて使い心地がよくないのと、器具を傷つける可能性があるからです。
2.水の量: そんなに少しでいいの?
氷枕に水をいれる理由は、氷と氷のすき間を埋めるため。氷の間に熱伝導が低い空気があると、十分な冷却効果を得ることが出来ません。
氷で水を冷やすのではないので、水の量は氷のすき間を埋めるだけ有れば足ります。なのでコップ1~2杯で十分です。
3.空気を抜く: 空気が有ったほうが痛くなくていいのでは?
口を留め金で締める前に空気を抜くのは、安定性を良くするためでもありますが、熱伝導が低い空気を抜くことで、冷却効果を高めるためでもあります。
氷の量が決められているのにはわけがある
氷の中には、圧縮された空気の泡、気泡がふくまれています。氷が溶けて水になると空気が発生するので、氷の量が多ければ空気の発生量も多くなる。
つまり、氷の量が多いほど、氷枕の中に溜まる空気も多くなり、空気は熱伝導が低いので、冷却効果が低下して安定性も悪くなるのです。
実際に氷の量を変えて比較してみた結果
①氷を容量の半分と500mlの水
②氷を容量いっぱいと500mlの水
作成直後、1時間後、2時間後に「使用感」「冷たさ」「氷の溶け方と空気の量」を比較
氷の溶け方: ①は2時間後にはすべて溶けていましたが、②は4時間後でも残っていました。
空気の量: ②のほうが①より明らかに多く発生
冷たさ: ②のほうが氷が多く残っているにもかかわらず、冷たさを感じない
使用感: ②は空気が多くフワフワシエ安定感がない
新人ナースは、一度は失敗する?
実は、病棟ナースになったばかりのころ、氷枕で失敗したことが有ります。あまり頻繁に変えるのも、患者さんにとって落ち着かないのでは、と氷を容量いっぱい入れた氷枕を差し上げたのです。
氷が解けて、空気でパンパンになるなんて、知らなかった。
膨れた氷枕(すでに冷たくさえない…)で頭が安定せず、だんだん頭痛がしてきて船酔い状態になられた患者さんから、「気分が悪い」とナースコール。
病状が悪化したのかと、大慌てのわたしに、先輩ナースの一言。「氷、いっぱい入れたでしょ」
その時に、正しい氷枕の作り方を、上記の実際に比較したデータも合わせて教えていただき、理想的なケアの方法を知ったのでした。
氷の量が多い氷枕はめまいや頭痛に繋がることもある
空気の発生が多く、フワフワして安定性の無い氷枕で寝ると、頭痛がしたり、船酔いのような、めまいを感じることがあります。
それでなくとも、頭の安定が悪くて安眠出来ません。
氷を容量いっぱい入れた氷枕は、氷が溶けにくくても、使い心地やよくないし、効果的でも無いということです。
ちなみに、氷が溶けて発生した空気を途中で抜くことで、表面温度が5度ほど低下しました。
まとめ
氷の量は容量の半分か3分の2まで、空気が発生したら抜く
正しい作り方を知らないと、頭痛やめまいをおこしたり、不快で安眠できなかったりもしますが、それは正しい作り方をしらないから。
理想的な氷枕は、冷蔵庫で冷やして使うタイプのものに比べても使用感もよく、一度使ったら手放せなくなります。
病棟では、何度も作りなおすのが「大変」ではなく、ひんぱんに患者さんのところに行くことで、発熱などで苦しんでいても、看護師に「見守られている」とう安心感を与えられると考えられますね。
画像出典: 東京 YMCA 医療福祉専門学校「介護福祉科」の日記
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