通販事業者のようにプロモーション効果などを測定しています
加藤貞顕(以下、加藤) 「日経電子版」は記事をYahoo!ニュースやSmartNewsなどの外部メディアに配信しているのですか?
渡辺洋之(以下、渡辺) いいえ、原則していません。有料の記事は配信されても読めませんからね。無料の記事は配信できますが、それは他社と同じようなニュースですし。Yahoo!さんからお金をもらっていることも一切ありません。
加藤 そうなんですね。
渡辺 キュレーションメディアのみなさんは「自分たちでお客さんを開拓するより、我々のところに記事を流した方がいいですよ」とおっしゃいます。それはそうかもしれないのですが、我々としては自分たちで直接お客さんとつながりたいわけです。
加藤 なるほど。結局、他のメディアは拡散する力や集客力が足りないからYahoo!ニュースやキュレーションメディアに頼るのだと思いますが、日経はそれらを使わないで済むのはなぜでしょう?
渡辺 自分たちでがんばってプロモーションをやっているからでしょうか。今は玉山鉄二さんを使って「田中電子版」というテレビCMを流しています。これが意外と効果があるんですよ。「田中電子版」で検索している数がすごく多いんです。
加藤 へぇ~。
渡辺 世の中に関心を持ってもらうため、プロモーションにはいろいろ知恵を絞っています。ここで人に頼ってしまうと、一生頼りっぱなしになってしまう。そこが一番怖いので、自分たちのブランドをしっかり作るためにも自力でがんばっています。新聞社ではありますが、一種の通販事業者のような感じでプロモーション効果などを測定しています。
加藤 なるほど。渡辺さんの古巣の日経BPのウェブサイトでは、お客さんのIDから得られる情報を活用して、イベントを行うなどのマネタイズをしています。あれは、「日経電子版」でも行っているのでしょうか?
渡辺 それはこれからですね。今はCRM (Customer Relationship Management/顧客管理)のシステムに投資して、顧客分析の強化を図っています。来年ぐらいから本格化していくでしょう。また、イベント運営サービスのEventRegistさんに出資することで、イベントに関する情報も取り込めるようになりました。
どのような記事を読んだのかという平板な情報だけでなく、どのようなイベントに来てくれたのかという情報も取り込んで、だんだん情報が立体的になるような仕組みをこれからしっかり考えていきます。
加藤 着実にコンテンツを中心とした情報プラットフォームができつつありますね。
渡辺 はい。そのためにも、新聞社にはデータサイエンティストがいませんから、それに類する人たちを育てたり、データに対するリテラシーを現業の部門の人たちに身につけてもらったりして、全体としてのレベルアップと集客力と企画力のアップにつなげられればいいと思っています。
加藤 なるほど。これから具体的にどのようなことをしていく予定ですか?
渡辺 まずは本腰をいれてデータの分析ですね。そのうち、マーケティングオートメーションもやろうかと考えています。この人はこんな記事を見たときにこういう案内をすれば申し込みが多くなるとか、そのようなことをオートマチックに行う仕組み作りにチャレンジしているチームもあります。
「電子版」は“読む”だけじゃなく“使う”というコンセプトがある
加藤 ほかにはマネタイズのために、どのような取り組みをされていますか?
cakesに登録すると、多彩なジャンルのコンテンツをお楽しみいただけます。 cakesには他にも以下のような記事があります。