寺崎省子
2015年11月8日00時37分
認知症と診断されても、初期段階では職場の配慮によって働く期間を少しでものばせる。滋賀県内では地域の診療所から支援を受けながら、若年認知症の人が働いている企業もある。
昨年秋、県内の物流会社に勤める男性(57)は、社長(58)から「もの忘れ外来に行ってみては」と勧められた。大手精密機器会社から出向し、子会社の部長として外部との窓口業務を担っていた。しかし、取引先からの依頼を担当者に伝え忘れ、数カ月前から苦情が相次いでいた。
社長は何度注意しても、男性がきょとんとした表情で、しかられているのに心当たりがない様子が気になった。認知症の母親と重なり、母親を診てもらっている同県守山市の藤本クリニックを男性に紹介した。
今年2月、男性はアルツハイマー病と診断された。妻(57)は「忘れっぽくなったと思っていたが、日常生活にはまったく問題ないのに」と驚いた。娘が2人。次女は大学生で、住宅ローンは75歳まである。
親会社の産業医と子会社の社長と3人で面談した。産業医は「通勤中に何かあると会社も困ります。休んでも手当は出ます」と休職を勧めた。男性は「働きたい」と拒んだ。「休んだら、もう戻れない。社会から隔絶され、認知症が一気に進んでしまうのではないか」と怖かった。
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朝日新聞社会部
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