テレビ探偵
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深夜に眺めるニートな6つ子たち
2015年11月15日号
泉麻人のテレビ探偵 連載79
先日Eテレの「ニッポン戦後サブカルチャー史2」という番組に出演した。いわゆるサブカルの歴史を大学のゼミのような体(てい)で解説していくというもので、僕は"深夜テレビ"の回の講師を受け持った。80年代の深夜テレビ隆盛期の僕自身の映像なんかも流れて、懐かし恥ずかしい内容ではあったが、この収録のとき、聴講生の若い女性タレント(西田藍)の一言が印象深い。昔、夜更けにこっそりエッチな番組を観るのが楽しみだった......なんてことを語ったとき、彼女は意外そうな顔をして「深夜はアニメの時間だと思ってました」みたいな発言をした。
へーっと思って、改めて番組表をチェックしてみると、タイトル上よくわからないものも含めて本当にアニメが多い。そんななか、僕がピンと引っかかったのが「おそ松さん」(テレビ東京ほか・月曜深夜1時台)だ。赤塚不二夫の生誕80年を記念して作られたという、ご存じ「おそ松くん」のリメーク版。『シェーの時代』(文春新書)という研究本まで書いた、赤塚作品のなかでもとりわけおそ松ファンの者として、これは見逃すわけにはいかない。
1回目から観ているが、冒頭は旧作の6つ子たちのもとに、リメーク版の話が持ちこまれ、どういう内容にしようか......ドタバタするという"楽屋ネタ"で始まる。イケメン6人組アイドルが活躍する王子様系アニメのパロディーやらでもたせた後、結局20代くらいの青年になった6つ子を描いたストーリーにおちつくわけだが、思っていたほどイヤミやチビ太がメインに出てこない。原作はタイトルこそ「おそ松くん」とはいえ、やがて看板はイヤミやチビ太に奪われて、おそ松ら6つ子はたまにしか顔を出さない端役に追いやられた。このリメークアニメは、顔が同じ6つ子主体でがんばっているのがすごい。そして、昔はなかった兄弟の順位づけがなされている。
おそ松以下、カラ松、チョロ松、一松、十四松、トド松の順に生まれたという設定なのだ。オリジナルはおそ松こそ長男に位置づけられていたけれど、次のサブボス的な役割をしていたのはチョロ松で、他4人の性格づけはハッキリしなかった。ちなみに「おそ松さん」公式ホームページのキャラクター解説に「チョロ松 6つ子の中では唯一の常識人なのでツッコミ役になることが多い」と書かれているが、チョロ松は初期の漫画の話で、トト子にモテたいがために一人だけ少女漫画の美男顔に整形してしまう、という暴挙に出る。オールドファンとしては、チョロ松をトンガらせたいところだが、まぁこの辺のキャラづけは今後多少いじられていくのかもしれない。
ところで、6つ子の親・松造と松代は今回配役落ちしたのかな?と思っていたら4回目にして登場、ニート生活を送る6人に活を入れるべく、扶養する子を選ぶドラフトを決行していた。
松造オヤジ、昔は毎年ボーナスをどこかになくして大騒ぎしていたものだが、ああいう往年の持ちネタ、オールドファンは期待する。