言葉のデザイン

WIREDの記事は、表記に特徴がある。
たとえば「イノベーション」は「イノヴェイション」、「イベント」は「イヴェント」、「デバイス」は「デヴァイス」といった具合だ。
Web版も紙版も徹底してこの調子で、そのため記事に対する反応の中には、内容ではなく「ヴェ」をからかうようなものも見かける。

発音によほどこだわりがあるんだろう、くらいに僕は捉えていたのだけれど、それだけじゃないと思い当たった。
この表記のおかげでソーシャルメディアで拡散された記事を見ても、キュレーションメディアで見かけても、「ああこれはWIREDの記事だな」と気がつく。

どんどん細切れに記事が消費され、そのパブリッシュ元がどこか気にされにくくなった状況で「WIRED」というパッケージを言葉で意識させるのはすごいことだな、と思った。

ビジュアルだけによるブランディングには限界がある。ソーシャルメディアで画像や動画がシェアされるといっても、テキストに接する量はそれなりにある。

モバイル、ソーシャルの時代に、WIREDのように言葉からブランドを感じさせられるのは、なんと強いのだろう。村上春樹さんの文体にも言えるけど、言葉のデザインは見過ごせない。