【感想】『数学ガール』物語付きの数学の教科書!?数学への愛が深まる一冊!

【感想】『数学ガール』物語付きの数学の教科書!?数学への愛が深まる一冊!

2007年に発売された、結城浩作『数学ガール』の感想やストーリーをご紹介します。一般的な右開きの小説とは違い、左開きの仕上がり。開いてみたら理由がわかります。学生の時手に取った数学の教科書に物語が加えられたような、新しい感覚の本です。数学を愛するキャラクター達による、紙とペン必須の物語。読めばもっと数学が好きになる!?

結城浩作『数学ガール』とは?

数学の公式が題材となった本

今回ご紹介する『数学ガール』は、プログラマーで技術ライター・結城浩による数学の公式を題材とした本です。2007年にソフトバンククリエイティブより発行され、2010年にシリーズ累計10万部を突破、2014年3月に日本数学会より日本数学会賞出版賞が贈られました。大変話題になった小説で、文系理系問わず幅広い年齢層に読まれています。

漫画化もされており、KADOKAWA・メディアファクトリーが発行している月刊漫画雑誌『月刊コミックフラッパー』にて2008年4月号から2009年6月号まで全14回、漫画家・日坂水柯によって連載されました。単行本は上下巻に分かれ2冊が発売されています。

数学ガール 上 (MFコミックス フラッパーシリーズ)

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数学ガール 上 (MFコミックス フラッパーシリーズ)

漫画化もされた作品

続編や別シリーズも!

以前から気になっていたゲーデルの不完全性定理が続編にあるみたいなので、その本も読んでみたいです。

出典: bookmeter.com

数学ガールはシリーズものになっていて、今回ご紹介する『数学ガール』の続編が発売されています。同じくソフトバンククリエイティブより、2008年『数学ガール フェルマーの最終定理』 、2009年『数学ガール ゲーデルの不完全性定理』、2011年『数学ガール 乱択アルゴリズム』 、2012年『数学ガール ガロア理論』 の4冊が発行されています。

内2.3巻目にあたる『数学ガール フェルマーの最終定理』『数学ガール ゲーデルの不完全性定理』も漫画化されています。『数学ガール フェルマーの最終定理』は表題作と同じ月間漫画雑誌『月間コミックフラッパー』にて2010年10月号から春日旬により連載、単行本は全3巻発売されています。『数学ガール ゲーデルの不完全性定理』は同社の別漫画雑誌である『月刊コミックアライブ』にて、2010年12月号から茉崎ミユキにより連載され、単行本は全2巻が発売されています。

数学ガール フェルマーの最終定理 (数学ガールシリーズ 2)

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数学ガール フェルマーの最終定理 (数学ガールシリーズ 2)

そしてなんと別シリーズもあるのです。

秘密ノートシリーズは易しめで言っている内容も結構わかったので面白かった。

出典: bookmeter.com

ソフトバンククリエイティブにより、2013年7月『数学ガールの秘密ノート/式とグラフ』、2013年9月『数学ガールの誕生 理想の数学対話を求めて』 、2013年12月『数学ガールの秘密ノート/整数で遊ぼう』 、2014年4月『数学ガールの秘密ノート/丸い三角関数』 、2015年4月『数学ガールの秘密ノート/微分を追いかけて』の全5冊が発行されています。

タイトルから察した方もいらっしゃるかもしれません。『数学ガール』シリーズではフェルマーやアルゴリズムなど難しめの単語が並びますが、こちらの『数学ガールの秘密ノート』シリーズでは問題は優しくなっており、より手に取りやすくなっています。

数学ガールの秘密ノート/式とグラフ

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数学ガールの秘密ノート/式とグラフ

作者公式サイト 『数学ガール』シリーズ情報まとめページ

読み終わった人たちの感想は?

さて、漫画化され、シリーズ化もされた話題作の『数学ガール』シリーズですが、まずは読み終わった人たちの感想からご紹介します。

想像していたよりも「数学」だった

思ってたより数式尽くしだった!

出典: bookmeter.com

思ったよりがっつり数学やった。難しい。

出典: bookmeter.com

数学の公式がテーマの小説…と説明しましたが、この本の9.5割は数学の話をしています。さらに言うと本の半分は数式が書いてあります。因数分解や階乗などよく見たものから、テイラー展開などの難しいものまで幅広いです。小説というよりは、数学の教科書または参考書に、ストーリーがついたもの、と言った方が近いかもしれません。

紙とペンが必要な本

読むには鉛筆とノートを用意した方がいいかもしれません。理解しながら読むのですごく時間がかかった。

出典: bookmeter.com

読み込む時は数式をメモりながら進めていくのがオススメ

出典: bookmeter.com

ただの小説ではない、という点は少しご理解いただけたと思います。そんな『数学ガール』、そのまま読んでももちろん良いのですが、は紙とペンも一緒に用意し読み進めると、より楽しめるでしょう。あいまいに覚えていた数学単語の詳細をメモしたり、問題を書き写して実際に解きながら読むと理解が深まり、物語をより楽しむことができます。

高校が舞台

数学好きな主人公と2人の女子高校生の物語

数学が好きな主人公と2人の女性との物語。面白かったです。

出典: bookmeter.com

高校に入学した主人公は入学式の日、式典が終わった後校舎を抜け出して、これからの高校三年間を予想していました。過ごしてきた中学時代と同じように、静かに授業を受け、図書室で数学に浸る三年間になるだろう、と、その時はそう思っていたのです。

すると桜の木の下に、一人の少女が立っていました。主人公に気付いた彼女は、4つの数字を言い、主人公を指さします。主人公は数字について考え、解き、解答します。数学ゲームを終えた主人公は、ミルカと名乗った少女と握手を交わすのです。

高校二年生になったある日、再び出会いがあります。白い封筒を手に持って主人公に向かい、読んでくださいと突き出している少女。手紙を見ると、その少女の名前がテトラということ、同じ中学校の出身ということ、数学に興味があるが苦手意識をなくしたということが書いてありました。そして主人公はテトラに数学を教えることになります。

ミルカ、テトラ、そして主人公の3人は数学の公式を使って遊びながら、高校生活を送るのです。

数学を楽しむ登場人物達

登場人物たちが数学を楽しんでいる様子が伝わってきて、羨ましくなるようなご本でした。

出典: bookmeter.com

主な登場人物は、主人公、同級生のミルカ、1つ年下のテトラの3人です。彼らは数学を面白いものだと認識し、自分たちの中で楽しみながら問題を解いていくのです。

主人公

「僕」の名前は何だろう?

出典: bookmeter.com

名前が表記されていない主人公です。数学が大好きで、授業で学んだ数学の公式を再構成し、そこから公式を作り出す、という数式の展開が一番好きだそうです。スポーツは苦手だという絵に描いたような優等生。数学以外にも少しだけ恋愛要素があるのですが…。彼はミルカとテトラという女子高生2人挟まれていますが、どちらを選ぶのでしょうか?

ミルカ

ミルカさんは可愛い.

出典: bookmeter.com

すらり、という擬音語がつくような身長に、長い黒髪、真面目な顔にメタルフレームの眼鏡をかけている少女と描写されています。おしとやかで勉強ができそうな印象です。主人公とは入学式の日桜の木の下で出会うというなんともロマンチックなシチュエーションの中出会ったにも関わらず、数学ゲームをふっかけるという行動に出ます。時間がたってから主人公がミルカになぜ問題を出したのかと問うと、理由はなく思いついただけと答えます。少し不思議な少女なのかもしれません。

彼女の数学力は素晴らしく、数学大好きな主人公でさえ、僕よりすごいと認める程の頭脳を持っています。ミルカと主人公の間で繰り広げられる数学トークは難易度は高めになっています。

テトラ

とりあえずミルカさんの出てくる章の緊張感が凄すぎてテトラちゃんの雰囲気に癒された。

出典: bookmeter.com

数学の不安を取り除きたくて、主人公に数学を教えてもらうことになった高校1年生のテトラ。主人公と同じ中学校の出身で、一方的に主人公が数学が得意なことを知っていました。かわいらしい動作が描写されていますが、図書館で大声を発してしまうなど多少思うところもあります。しかし数学に面と向かって取り組む努力家な一面が主人公に評価されています。

テトラとの会話では、比較的優しい問題が取り上げられています。

ストーリー付き数学教科書

わかる人・わからない人両方に共感ポイントが用意されている

ミルカの話にはついていけず、テトラの話にようやく追いつく。

出典: bookmeter.com

完全にテトラちゃんに共感で読みました。

出典: bookmeter.com

同級生のミルカの物語の中では高レベルな問題、そしてテトラの方では比較すると優しい問題が扱われています。数学脳な方にはミルカの問題や、公式の美しさが理解できるでしょう。一方テトラは、中高生が抱くような疑問を口にする場面もあり、数学と仲よくなれなかった…という方が共感できるポイントがいくつもあるのです。

テトラの場合を例にご紹介すると、テトラは問題を解く際、方程式などで使用するα・bと、xとyはどういう違いがあるのかと気になってしまうようです。α・bはアルファベットの先頭なのでわかりますが、なんでいきなり飛んでxとyなんだ、と実際に学生時代に思われた方もいらっしゃるのではないでしょうか。それに対し主人公は、基本的には何を使ってもいいが、一般的に定数のときはα・b・cを使い、変数のときはx・y・zを使用するという事を教え、テトラは長年の疑問がスッキリ晴れて、次の問題に集中することができるのです。

わかりやすい解説

これだけ読み手に理解させる道筋を示す書籍は教科書以外では初めて目にした気がする。

出典: bookmeter.com

例にあげたα・bと、xとyの使い分けの他にも、いろんな式の違い、公式の解き方など、主人公やミルカの解説が多々登場します。どれを取っても、実際に丁寧な授業を受けているような、とてもわかりやすい解説がされているのです。

作者の解説力が素晴らしいというポイントもありますが、会話形式になっていることもわかりやすいポイントの1つなのではないかなと思います。参考書などでは説明口調で一方的に解説されていることが一般的ですが、『数学ガール』ではヒントを与える側と問題を解く側との間での会話が解説となっている為、一方的ではなく受け止めやすいのです。

学生時代に読みたかった本

高校時代にこの本を読んでいたら、等比数列の和の公式で悩まずに済んだのに、、、

出典: bookmeter.com

今回の『数学ガール』は方程式から微分積分など、高校生で学習するものが多く登場します。教員の解説についていけず、参考書でも理解できなかったあの時、『数学ガール』があったら苦労しなかったのに…という、学生時代に読んでおきたかった!という感想が多く見られました。小説だけれども学習の手助けになる不思議な本です。

もう一度数学をしっかり勉強したくなる

正直、私は数学が苦手だ おそらく中学レベルから進んでいない。 本に書かれている数式は、ほぼ理解出来なかったけど、数学ってこんなに楽しく話ができる物なんだと素直に感じた。 楽しみながら、数学をもう一度学んでみるのも有りだと感じさせてくれる本だった

出典: bookmeter.com

魅力はまだあります。数学心をくすぐってくるのです。数学を心から楽しみながら問題に向き合っていく登場人物たちや、解説されている数式を見るうちに、数学をまた勉強したいという思いが湧いてきます。学生時代数学が得意だった方も苦手だった方も、またちゃんと勉強したい、勉強しようという決意や思いの溢れる感想がいくつもありました。ライターの数学心もしっかりくすぐられ、まだ覚えている解き方、忘れてしまった公式や、学生時代放り出してしまった微積分など、近いうちに勉強しなおそうと思っています。

実際に復習を始めた人多数

数学おもしろい。 で、久々に微分とか復習してみました。

出典: bookmeter.com

「~しようと思いました。」「今度~やってみようと思います。」と宣言しても、なかなか実行に移せない方も多いかと思います。しかし今作の感想の中では、「久しぶりに勉強し直した」という感想を書かれた方が何人もいらっしゃいました。この決意をされた方々の行動力も素晴らしいですが、すぐ勉強をしたくなる程数学心をくすぐってくる『数学ガール』もスゴイです。

台詞に励まされる

「僕たちは好きで学んでいる。先生を待つ必要はない。授業を待つ必要はない。本を探せばいい。本を読めばいい。広く、深く、ずっと先まで勉強すればいい」こういう言葉をみると勉強意欲が湧いてくる。

出典: bookmeter.com

丁寧な解説、登場人物達の行動などから数学を再び勉強したい!と思った方々へ、登場人物達から励ましのメッセージがあります。強い言葉は勉強したいという欲求を持った読者に、行動に移す勇気をくれるのです。そんなセリフをいくつかご紹介したいと思います。

きみは数式をなんとかして読もうとする。それはとてもすごいことだよ。数式が出てきたとたん思考停止する人はとても多い。数式の意味を考える以前に、そもそも読もうとしないんだ。もちろん。難しい数式の意味はわからないことが多いだろう。でも、全部はわからないとしても《ここまではわかった。ここからわからない》と筋道立てて考えるべきなんだ。《だめだ》と言ってたら読まなくなる。考えなくなる。数学なんて役に立たないさって嘯くことはできる。でもそのうちきっと《役に立たないから読まない》ではなく《役に立てたくても読めない》になってしまう。数学を酸っぱいブドウにしてはだめだ。チャレンジするテトラちゃんはとてもえらいよ。

出典:結城浩 小説『数学ガール』 197〜198ページ

主人公やミルカは村木先生という数学教師に、公式や式が書かれたカードを貰い問題を解く研究課題をしていました。そんな先輩を見て、テトラも研究課題に興味を持ちます。自分でやりたい!と言ったにも関わらず自分一人で解けず、主人公に助けてもらいながら解いたのです。教えてもらうばかりで自分は数学ができないと落ち込むテトラに、主人公がかけた言葉です。

問題をパッと見て、できないとあきらめた経験のある方は、痛い程に理解できる話ではないでしょうか。問題がわからないと判断してしまって、考えることすら放棄してしまいがちですが、テトラはわからないなりに自分でわかるところを見つけ出し、自分でチャレンジしていくのです。わからないをそのままにしておくのは何故だめなのかを教えてくれる台詞です。

学校で先生から習うことは、学ぶきっかけとして大事。でも1から10までガッコーでセンセーが教えてくれるのを口を開けて待っているのは受け身すぎるよ。もしも、興味があるっていうならね。

出典:結城浩 小説『数学ガール』 220ページ

数学の問題を解いていくうちに、微分積分に当たりました。主人公の1つ年下、高校1年生のテトラは授業の内容がその範囲まで及んでおらず、耳にしたことも興味もあるけれど習っていないと言います。それに対してかけた主人公の言葉の引用です。

先生に教えてもらうのはきっかけとして大事ではあるけれども、図書館や本屋などには山ほど参考書などの専門的な本があり、興味があるのであれば自分一人で学ぶことだって可能だと言っています。テトラは授業で習っていない範囲は勝手に進んではいけないというような気持ちを抱いていた様で、先ほどの発言に繋がっていたようです。勉強を勝手に進めてはいけないと思ってしまう生徒、そう指導する教師は現代でもよく聞く話です。しかし主人公は好きで学んでいるのだから、先生が与えてくれるきっかけを待つ必要はなく、本を読んで先まで勉強してしまえば良いと背中を押してくれるのです。

数学、という教科に思いを抱いている方は多いと思います。良い印象も悪い印象も含めて。数学好きな方も、苦手だった方も、ぜひこの本を読んで、役に立つ・立たないではなく、純粋に学びたい!という思いで数学の勉強を再び始めてみませんか?

数学ガール (数学ガールシリーズ 1)

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数学ガール (数学ガールシリーズ 1)

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