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【本の森図書館】「知の共有」進むか(10月27日)

 「ふくしま本の森図書館」は会津坂下町に開設して1カ月が過ぎた。貸し出しカードは不要、返却期限はなし。借りた本を第三者に又貸ししてもよいなど常識を覆す取り組みが注目を浴びている。
 本(知)は独占するものでなく、分け与え、共有するもの-という考え方が根っこにある。図書館が少なく、書店が減るなど本に触れる機会が奪われつつある地方にこそふさわしい発想と言えよう。定着、発展させるには共鳴・協力者の拡大が欠かせない。
 東日本大震災の復興支援で全国から岩手県に寄せられた約30万冊のうち約4万冊を活用した。被災学校に本を贈る同県の活動を主導した赤坂憲雄福島県立博物館長が仲立ちした。読書環境を身近につくろうとの趣旨に賛同したボランティアが、ふくしま本の森プロジェクト実行委員会を組織。5月、旧八幡幼稚園を会津坂下町から借りて、本を搬入した。
 実行委員会の蔵書印を押し、日本十進分類法に基づいて本棚に収納して、9月26日の本格開所にこぎ着けた。館内清掃、喫茶カウンターの改装など全て実行委員の手作業だ。約10人が交代で来館者に対応する。会津地方の住民が連日訪れ、お気に入りを借りていく。遊戯室で読み聞かせをする親子の姿はほほ笑ましい。市町村教委、学校関係者らの視察も多い。
 実行委員会は貸し出しに加え、「街かど図書館」の開設を呼び掛けている。希望する本を店などに届け、お客に貸し出してもらう。分館のように各地に配置し、借りやすい環境を整える取り組みだ。道の駅「あいづ 湯川・会津坂下」、会津地方の小中学校、商店など11カ所に既に設けられた。「各館への貸し出しは2千冊に達した。中通りや浜通りにも広めたい」と遠藤由美子実行委員長は話す。
 読書環境は厳しい。会津地方の公立図書館は会津若松、喜多方、猪苗代、南会津の4市町にとどまり、他は公民館図書室と学校図書室に頼る。図書購入費は十分と言えない。県書店商業組合加盟の県内書店は昭和60(1985)年の197から64と、30年間で3分の1以下に減った。プロジェクトは児童生徒の読書意欲とお寒い現状の隙間を埋める役割を担う。
 年間100万円が見込まれる本の森図書館の運営経費確保、不足する児童書、絵本、会津の郷土資料の収集など課題は山積する。家に眠る本を届ける、店の一角を開放する-。「知」の土壌を耕し、次世代に引き継ぐ支援の仕方はいろいろある。(鞍田 炎)

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