ソウルをはじめとする韓国の主要都市の大気中に含まれるオゾンの量が増加の一途をたどっている。オゾンは呼吸困難や頭痛、気管支炎など、人体にさまざまな病気を引き起こす「光化学スモッグ」の主な成分で、主にディーゼル自動車の排気ガスに含まれる窒素酸化物(NOx)が紫外線と反応することにより発生する有害物質だ。韓国政府が10年前から莫大(ばくだい)な予算をつぎ込み「首都圏大気質改善事業」を実施してきたが、オゾンの濃度が低下することはなく、むしろ毎年増加するという奇異な事態になっている。
環境部(省に相当)が最近発行した「2015環境白書」などによると、ソウル市のオゾンの濃度は、政府が「第1次首都圏大気環境改善事業(2005-14年)」に着手した2005年に17ppb(10億分の1を表す単位)から、昨年には23ppbと、35%も上昇したことが、5日までに分かった。ソウル市が「オゾン注意報」を発令した回数も、同じ期間に3回から23回にまで増加した。通常、オゾンの濃度が10ppb増加すれば、呼吸器疾患や心血管疾患の発生率が高まり、死亡率も0.9%ほど上昇することが知られている。
専門家たちはこれについて「自動車、特にディーゼル車の排気ガスを減らせなかったことが根本的な要因だ。大部分のディーゼル車が走行時に大量の排気ガスを出し、オゾンの濃度を上昇させているという事実を政府が把握しながら、十分な措置を講じることができなかった」と指摘した。